『本物をまなぶ学校 自由学園』

「本物をまなぶ」 自由学園100年記念書籍に反響

投稿者: カテゴリー: 子育て・教育 オン 2021年6月28日

 東久留米市にキャンパスを置く「自由学園」(高橋和也学園長)が今年創立100周年を迎えた。これを記念して、創立者を同じくする婦人之友社が企画編集し、学園の姿を紹介する『本物をまなぶ学校 自由学園』(1650円)を刊行。1世紀続けてきた本物を伝える学びと実践の数々が紹介されている。地元の書店でフェアが開催されるなど応援する動きも出ており、学園では「この本が自由学園を広く知っていただくきっかけになれば」と話している。(写真は、地元書店店頭に置かれた『本物をまなぶ学校 自由学園』。売れ行き好調だ)

 

 キリスト教を土台に、「思想しつつ、生活しつつ、祈りつつ」をモットーとする同学園は、1921(大正10)年4月、ジャーナリストの羽仁吉一、もと子夫妻が東京・雑司ヶ谷に創立し、生徒数26人の女学校からスタートした。その後、初等部(小学校)、男子部(中等科・高等科)、幼児生活団(現・幼児生活団幼稚園)、最高学部(大学部)を設立。この間の34(昭和9)年に南沢(現・東久留米市)に移転し、10万平方メートルの広大なキャンパスのなか、生徒たちが学校や寮での「自治」生活を通じ、学びを重ねてきた。

 

女子部食堂

女子部の食堂。執筆者の島村菜津さんは『学園を見守る聖母のように威風堂々とそびえている』と評した

 

 本書では、ノンフィクション作家の島村菜津さんが本文の多くを取材・執筆。何度も学園に足を運び、生徒や教職員、各界で活躍する卒業生らへの取材を通じて浮き彫りになった“自由学園イズム“を伝えている。

 

 たとえば、第2章「自分で考える、生活に学ぶ」では、「よい社会とは何かと自分の頭で考え、これをつくっていく人が育つことを願っています」という高橋学園長の言葉や、入学時に「あなた方は学園をよくするために入学した」と言われたことが心に残った女子高等科生徒が学園生活の基本である「自治」を模索し、「社会をよくしようと思って、その社会の中で生活することが自治」と考える姿を紹介。

 

 第3章「食堂が真ん中にある学校」では、各部の校舎の中心に食堂があることの意味を探る。学園は、創立者の「自主独立の人として生きていくことが大事」という思いから「自分たちの手で作って食べるということを学びの中心」にしている。現在も女子部では毎日、男子部は週に一度、それぞれ中学・高等科全員(約240人)の昼食を約20人で作っており、その様子や、キャンパスにある畑で年間約20種の野菜を栽培したり、豚などの飼育を手掛けたりして食の原点を学ぶ意義などにもふれている。

 

自由学園正門

4000本の樹木をはじめ自然があふれるキャンパスの正門

 

 ほかに「自分が使う机と椅子を作る」「描くものは生活の中に」「社会に働きかける」などの章でも、同学園の取り組みや思いにふれる。一般的な修学旅行の代わりに続けている「遠足」と称した本格的な登山、「社会を輝かせながら、幸福に生きる技」という美術、音楽、体操の教育、東日本大震災での被災地支援やホームレスの人たちにおにぎりを配る活動…。独特だが、「教育の根底には、本物を伝えたいという想いがある」「「人の役にも立ち、人も自分との関係の中でいきいきとしていく。それが生きること」「互いを大切にし合う文化」「成果ではなく、過程が大切」「他者のために動く」といった自由学園のDNAが伝わってくる。

 

 本文のほか、関係者の寄稿や対談、インタビュー、「自由学園と私」のコメント、初版限定の特別付録としてキャンパスのイラストマップも。「自由学園と私」では、学園の教育方針に沿った世田谷の幼児生活団に通っていた作曲家、坂本龍一さんや、家族が自由学園出身だった生物学者、福岡伸一さんらが学園の魅力をコメントしている。

 

 婦人之友社では「実学の大切さと、人とともに生き、人を育てる自由学園の教育のすばらしさを伝えたかった。お子さんにどんな教育を受けさせたいか迷い、考えるとき、読んでほしい」と話す。実際、今年4月末に発売後、出荷数は約1万部に達し、同社にはびっしりと書き込まれた読者カードが多く届いているという。

 

 「食堂が真ん中にある学校、驚きました」「『SDGs(持続可能な開発目標)』『多様性』といった、いま追求されていることを創立当初から考えている学校が、素晴らしい」「実学とはこういう教育のことかと魅力を感じました。中学受験を視野に入れて娘たちと見学に伺います」などだ。

 

 自由学園広報本部の椚田(くぬぎだ)結子さんは「100年前の創立の理念は今も根底に息づいています。過去を振り返るだけでなく、この本を通して今の自由学園の姿、生徒・学生の活動の様子、また2024年の男女共学化を含む共生社会への願いなど、次の100年に向けて歩み始めている今の自由学園について知っていただきたい」と話す。そして、もうひとつ期待するのが地域との交流。

 

 本でも、キャンパスの近くにあり、地域の交流の場として利用できるカフェ「自由学園しののめ茶寮」が紹介されているが、カフェが入る施設には乳幼児向けのコミュニティースペースや、パン工房、名物クッキーの店などもある。また、キャンパスで長年実施してきた南沢フェスティバル(昨年から休止)では、4000人超の来場者を記録したことも。それでも、地域の人でも学内に入ったことがないという人は多く、「もっと交流を深めて地元が応援してくれるような学校でありたい。そのためにもこの本を読んでいただけたらうれしい」と椚田さん。

 

100周年記念フェア

リブロひばりが丘店の100周年記念フェアは9月まで実施予定

 

 実際に、100周年を祝い、本書を応援する動きもある。学園最寄りの西武池袋線ひばりヶ丘駅前にあるパルコ内の書店「リブロひばりが丘店」では、5月中旬から本書を中心に婦人之友社の学園関係の本を集めた「自由学園 創立100周年記念フェア」を実施中。松本剛店長は「自分も子供のころに行けたらよかったなと思うような学校。地元にあり、100年というタイミングなので、ぜひ応援したい。この本も非常に売れ行きが良く、リブロ全店のランキングでも一時人文書部門のトップテンに入りました」と語っており、まだまだ反響は広がりそうだ。
(倉野武)(写真は筆者提供)

 

【関連情報】
・書籍『本物をまなぶ学校 自由学園』(婦人之友社) 自由学園創立100周年に際し刊行(自由学園

 

 

 

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