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藤井聡著『超インフラ論』

By in 書評 on 2015年9月21日

超インフラ論【書評】

災害大国、デフレ大国への対策
師岡武男(評論家)

 今の日本は、大小の震災、水害のひっきりなしの襲来、あちこちで火山の噴火、最大の人災である原発事故の生々しい被害、いまだに先の見えないデフレ経済続きなどで、国中に不安な空気がただよっている。それらをそっちのけにして、政府は武力行使拡大立法にのめり込んできたが、自民党の谷垣幹事長は「安保立法の後は経済対策だ」と語っていた。

 この本は冒頭に「わが国のあらゆる問題の根幹には、≪インフラ不足≫がある」と訴えて、アベノミクスの現状を痛烈に批判するのだが、著者は、京都大学教授で公共政策の専門家であるだけでなく、内閣府参与という安倍政権内の要職にある。「超インフラ論」という表題は、分かりにくい表現だが、インフラ投資無用論を「超越」して「超重要視」すべきだという意味のようである。

 インフラというカタカナ語はもうかなり普及しているが、およその意味は、経済や社会の基盤となる公共施設のことで、主として公共投資(予算では「公共事業」)で造られる。近年の行財政改革政策では、公共事業は「無駄遣い」「利権政治の温床」「景気対策には役立たない」などと槍玉にあげられて削減が続いていた。象徴的なのが、民主党政権の「コンクリートから人へ」の公共投資転換論だった。安倍政権は、経済成長回復を目指すアベノミクスで、三本の柱の一つとして「機動的な財政政策」を唱えたが、公共事業拡大には向かっていない。マスコミなどの世論もその姿勢に同調している。

 藤井氏はかねてからこのような政策と世論を強く批判していて、民主党政権時代に書いた『公共事業が日本を救う』(文春新書)では「空港や港湾、道路をもっと増強しなければ、日本の国力はガタガタとなり、早晩、日本の経済も社会も文化も、今以上に衰退の一途をたどり、二度と立ち直れない国になってしまう」と主張した。そしてこの公共事業縮小路線は、小泉政権で徹底的に推進されたものだと指摘した。

 藤井氏が安倍政権の参与に招かれたのは、民主党政権批判が評価されたためだと思われるが、当初支持したアベノミクスも、現実には小泉路線の継承でしかないことが明らかになったので、新しくこの本を書いたのだろう。それだけでなく、大阪での「大阪都構想」をめぐる政争で、さらに触発されたと言う。橋下市長の大阪都構想には「インフラ論」が全くなくて、これでは大阪は衰退するばかりだ、と批判した。この論争は橋下構想が住民投票で敗北する一因になったと思われる。

 藤井氏は対案として「アベノミクス投資プラン」という具体策を提唱している。政権内の参与としての助言である。具体策については異論がいくらもあるだろうが、災害大国の現実をみれば、それだけでもインフラ投資の重要性、緊急性は認めるべきだろう。藤井氏は、災害対策だけでなく「あらゆる『地方』を『再生』『創生』するためには、抜本的なインフラ投資を進めることが必要不可欠である」と締めくくっている。

 

【書籍情報】
書名 『超インフラ論-地方が甦る「四大交流圏」構想』
著者 藤井聡
出版社  PHP研究所(PHP新書)
定価 780円+税
出版年  2015年7月
ISBN 978-4569826349
新書 251ページ

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