移動支援でタクシー会社と協定 西東京市が公共交通空白地域で実証実験
公共交通空白・不便地域となっている西東京市の南部地区で、今年6月から借り上げタクシーを活用する移動支援策の実証実験が始まることになり、市と運行に協力する地元のタクシー会社2社が4月2日、それぞれ協定書に調印した。市と住民、交通・福祉関係者、学識経験者らが勉強会を重ね、話し合いから生まれた独自の「西東京方式」がいよいよ動き出す。
実証実験が始まるのは、西東京市の西武新宿線から南側の向台町1丁目、南町2丁目、柳沢2丁目などの地域。走行ルートは3本あり、柳沢第3市民集会所から西武柳沢駅南口のルートのほか、柳沢地域からと、南町・向台町から田無駅へ向かう2本のルートも用意される。各ルートとも週2日運行。午前10時から正午、午後2時から4時までの利用出来る。
利用出来るのは対象地域に住む65歳以上の高齢者、妊娠中の女性、3歳未満の子どもがいる家庭。事前申請して利用者カードを取得する。介助や付き添いも利用可能としている。
西東京方式は定時運行でなく、利用時間内にタクシーが乗車場所を行き来するやり方を採用した。しかも地域内でも駅付近でも、あらかじめ設定した降車可能エリアなら、利用者の申し出で自由に降りられる。
利用カードがあれば、予約は不要。運行時間内なら、各ルートで決まっている乗車場所に行き、やって来たタクシーに乗って出掛けられる。市は「待っても最長15分ぐらい」と説明している。
市は運行に関して、他の事例と違って、タクシーを「時間借り」する独自方式を取り入れ、借り上げ料から利用者が払う料金を差し引いた額を、タクシー会社に補助することにした。
西武柳沢駅ルートを走るタクシーは1台で、利用料金は150円。柳沢地域ルート、南町・向台町ルートはともに2台ずつ運行し、田無駅がやや離れているため料金は300円となる。
田無駅方面の2ルートを担当する三幸自動車の町田栄一郎社長は協定書を取り交わしたあと、「交通空白地域の移動手段は多くの自治体で課題になっている。西東京市のやり方はほかに例がないと思う。多摩地域でぜひ、スタンダードになって欲しい」と述べた。
西東京市の松本貞雄まちづくり担当部長は「今回は実証実験なので、どんなニーズがあるかなど課題を洗いだし、本格運用につなげたい」と話した。
西武新宿線南側の住民からは長らく、コミュニティーバス「はなバス」運行の要望が出ていた。特に高齢世帯などから買い物が不自由など日常生活の影響を訴える声があった。しかし道路幅が狭く、運行は難しかった。
このため市は2017年夏の住民アンケート調査や翌18年2月の住民説明会を経て、住民らを中心とした「移動支援のあり方を考える勉強会」を同年4月から年末まで7回にわたって開催するなど具体策を検討してきた。
公共交通空白地域は西東京市の場合、バス停から 300m圏外、駅から 1km 圏外を「公共交通が利用できない」と判断。不便地域は鉄道駅、バス停からともに 300m圏外の地域を指している。
(北嶋孝)
【関連リンク】
・移動支援のあり方を考える勉強会(西東京市Web)