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ケヤキ、クスノキいまいずこ 田無庁舎市民広場の仮庁舎建設始まる

仮庁舎建設が始まる田無庁舎の市民広場跡地(2019年4月9日)

 西東京市田無庁舎市民広場の解体工事が3月末で終わり、仮庁舎建設工事は4月に入って間もなく始まる。イベントや憩いの場に利用されてきた市民広場はいま更地になってしまった。緑の枝葉を伸ばしていた樹木はどこへ消えたのか-。その行方と曲折を辿った。

 

樹木の行方

 

 市民広場は1983年(昭和58年)11月、旧田無市役所庁舎の竣工とともにお目見えした。現在の西東京市役所田無庁舎だ。広場は約1000平方メートル。昨年10月までは、ケヤキの大木2本が東西に生い茂り、クスノキも2列に計6本、枝葉を伸ばしていた。ツツジやサツキもあった。

 

解体工事前の市民広場(2017年5月17日)

解体工事前の市民広場(2018年3月26日)

手前のケヤキは伐採。奥が移植された(2018‎年‎9‎月‎9‎日)

 

 市民広場解体は2016年12月、庁舎統合方針の一環として決まった。保谷庁舎解体後、再配置先となる5階建ての仮庁舎が建つことになり、工事は昨年2018年10月に始まった。

 工事用フェンスが広場を囲い、レンガ色の磁器タイルが剥がされた。2本のケヤキのうち、移植は1本だけ。広場東側、庁舎寄りにあった大きなケヤキは伐採されてしまった。台座もばらばら。庁舎に近いケヤキを見上げていたブロンズの女性立像も庁舎敷地に移動、保管された。

 

移植された手前のケヤキ(2017年3月29日)

移植中のケヤキ。クレーンに「尾林造園」とある(2018年11月30日)

移植後のケヤキ。左隣はクスノキ(2018年12月18日)

 広場西側にあったケヤキは生き残り、隣接する南町スポーツ・文化交流センター「きらっと」に通じる階段付近に移植された。枝葉が刈り取られ、布がぐるぐる巻き。満身創痍の立ち姿になっている。付近にあったイチョウは、幹に空洞が出来て倒れる危険があるとして伐採された。

 6本のクスノキのうち、4本は伐採された。残る2本のうち1本はケヤキの奥に。もう1本は、駐車場に通じる1階東側出口付近に移植された。ひっそりと冬を越し、再生を賭けて春に臨む。

 

 

駐輪場隣りに移植されたクスノキ(2019年1月15日)

手前から移植されたクスノキとケヤキ(2019年1月5日)

 

ケヤキの寄贈者は

 

 当初、市民広場の主な樹木は伐採予定だった。その後、寄贈者が分かり、昨年11月に議会の質疑で「可能な樹木は移植」との市側の方針が明らかになった。

 寄贈者の名前は、中央図書館所蔵の「地域・行政資料」の中に眠っていた。職員が探してくれた地域紙「東興通信」(1983年11月23日付け)の紙面に「▽ケヤキ株立九本立の一本=尾林長正▽ケヤキ株立七本立の一本=並木清…」とある。当時の木部正雄市長が11月18日の新庁舎落成式で感謝状を贈っていた。

 尾林さんの住所は向台町四丁目だった。もしやと思った。電話した先は、尾林造園。1965年の創業以来、造園工事・庭園の維持管理・樹木の生産販売などを関東一円で手掛けている。電話口に出た尾林長一社長は「そう、大きい方のケヤキは父が寄付しました」。父の尾林長正さんは、尾林造園の先代社長だった。

 尾林長一さんによると、先代の父、長正さんは農業委員会委員長を務めるなど市政とのつながりが深く、市庁舎建設審議会の委員でもあった。

 「市から連絡がありました。市には、ウチのケヤキは処分していいから、もう1本を生かしてほしいと伝えました。父が寄付した木は大きいでしょう。移植するには、場所も費用も大変です。市に負担掛けても申し訳ないから」と話した。大木の移植、運搬には最近、交通規制が厳しくて「警察の運搬許可もなかなか出ない」状況も判断のひとつだった。

 

伐採直前のケヤキ(2018年11月27日)

台座は砕かれ、枝も切り落とされたケヤキ(2018年11月30日)

 

 田無庁舎建設当時、尾林造園は広場の外構緑化工事を請け負った。「クスノキも、造園工事の一環でウチが植えました」。尾林造園はその広場の解体工事の一部を手掛けていた。ケヤキは、旧田無市の「市の木」。父が寄贈したそのケヤキを、ちょうど35年後に息子が伐採する。父子の不思議な巡り合わせだった。

 

「集い、語り合える市民広場」

 

 当時の「たなし市報」第549号(1983年11月1日付け)は一面トップに「市民の自治センター 新庁舎が完成」の見出しを掲げた。「集い、語り合える市民広場」の中見出しとともに「市役所や公民館、図書館に特に用事のない人でも語り合いの場所として、あるいは待ち合わせの場所として親しまれる一角になるでしょう。また近くの子どもたちの遊び場として活用される」と期待している。

 

新庁舎完成を伝える「たなし市報」

 

 広場には「クス、ケヤキ、オオムラサキツツジ、サツキなど高木、低木、常緑樹、落葉樹の組み合わせに十分気を配り、四季の変化が楽しめる。季節によって日だまりや木陰が出来るようにしています」と記し、「旧一中時代に植えられたイチョウ、プラタナスなどの樹木も可能な限り保存に努めました」と書かれていた。

 

庁舎落成当時の市民広場(カラー冊子「田無庁舎」[田無市、昭和58年11月18日発行]から)

解体工事が終わった市民広場跡(2019年3月18日)

 いまは一面の更地。間もなく重機が地面を掘り返し、基礎を打って5階建ての仮庁舎が出来上がる。工事前から広場は変貌した。これからも様変わりするだろう。人にも木にも広場にも、謂われと因縁、歴史とドラマが宿っている。目前の風景は変わっても、その記憶と記録は変わらない。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・田無庁舎市民広場内における樹木の移植について(西東京市Web
・仮庁舎賃貸借に伴う整備工事に関するお知らせ(西東京市Web
・庁舎統合に向けた取組(仮庁舎の整備)~暫定的な対応方策に基づく保谷庁舎機能の再配置~(記者会見資 料平成31年2月19日、PDF)(西東京市Web

 

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2 thoughts on “ケヤキ、クスノキいまいずこ 田無庁舎市民広場の仮庁舎建設始まる

  1. 1

    良記事を書いてくださってありがとうございます。2009年から西東京市に引っ越してきたものですから、昔のことは知りませんでした。
    木は環境のため、ひいては健康のために必要です。それを切って日もささない、しかも10年しか使わない仮庁舎・・・残念なことです。

    • 2

      仮庁舎は、統合庁舎が完成する2033年まで使用される予定です。リース方式で建設されることもあり、契約満了で取り壊すか、継続使用のため払い下げを受けるかなどは、統合庁舎の位置やまちづくりの方針とも絡んで、今後の議論、判断になると思います。(北嶋)

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