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子どもと弁護士がつくる芝居「素数とくるみ」 SNSのいじめがテーマ

By in 子育て・教育 on 2019年10月2日

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 東京弁護士会の「もがれた翼」シリーズをご存じだろうか。弁護士さんが子どもたちと一緒に芝居をつくって25年。今年8月末、東京・赤坂で26回目の公演「素数とくるみ」が上演されました。不思議なタイトル、切実なテーマ、出演者の思い…。友人とこの舞台を見た石田裕子さんの報告です。(編集部)

 

 

担当した事案を基に

 

 毎年8月の終わりに都内で行われる「もがれた翼」は、東京弁護士会が主催するお芝居だ。「子どもを取り巻く現実とその現代的課題を広く皆さんに知っていただくことを目的として、1994年の子どもの権利条約の批准を機に子どもたちと弁護士で作ってきたお芝居です」とチラシにある。

 毎回、お芝居のテーマは多岐に渡る。「少年事件やいじめ、虐待など子どもの人権を巡る様々な問題」だ。「弁護士が担当した実際の事案等を基に作られている」という。今年は、パート26「素数とくるみ」。同行したリケジョの友人は「題名も興味深いなぁ」と呟いた。SNSのいじめがテーマである。

 今年は、8月24日と25日の2日間、東京・港区の赤坂区民センター 区民ホールで行われた。東京弁護士会会長の篠塚力さんは、「今年は、子どもの権利条約採択30周年です。子どもたちが真に、自由に意見表明できる学校や社会とはどのようなものなのでしょうか。皆様と一緒に考えます」と挨拶した。

 共催は港区(いじめ・児童虐待防止講演会企画)、後援は港区教育委員会。協力は、社会福祉法人カリヨン子どもセンターである。この子どもセンターは、「もがれた翼」がキッカケとなってできた、ハイティーンのための「子どもシェルター(緊急避難場所)」で2004年に立ち上がった。

 

違う自分と、同じ生きる権利

 

 

お芝居が無事に終わって、ハイ、ポーズ。横道幸生役の関根賢次朗君(左)と、花井ノア役の関りおんさん(右)

「素数とくるみ」は、中学二年の子ども達が、SNSでのやり取りですれ違い、親や学校、弁護士などと関わりを持ちながら、真の解決に向かう物語だ。題名に出てくる「素数」はその定義を「一人ひとり違う自分と、一人ひとりに同じくある生きる権利」に例え、「くるみ」の中に共にいたようなグループの子ども達を描いていた。

 お芝居の終わった後、弁護士の吉川由里(キッカワユリ)さんにお話しを伺った。吉川さんは弁護士になって2年目の「パート18」から出演している。「準備は1年前から。どういう話題を取り上げるのか、ストーリーをどうするかを弁護士が議論したうえで脚本家にお願いをしています」

 今年のテーマ、いじめについては「どなたでも身近な存在だと思います。加害者が悪い、いじめ、ダメ、ゼッタイ、みたいな風潮ですが、加害(者)の子どもの背景もあり、排除して終わりって言うことではないんだよ、と伝えたいです」。

 

まずは子どもの話しを聞く

 

岡林先生役の弁護士、吉川由里さん

では、どうしたら良いのか。吉川さんは「とにかく、子どもの話しを聞くしかない。大人がしてあげられることは、そんなに無くて、まずは子どもの話しを聞くことからだと思います」と続けた。

 参加した子ども達にも触れて「子役さん達、最初は、あんな切実な演技ではなかったんです。どんどん、心の声が出てきました」。意思の強い瞳で見つめ、微笑んで、そう締めくくった。

 回によっては、少年事件や、性虐待などの、重いテーマも取り上げられる。
 今回のテーマ「いじめ」も決して軽いことではなく、身近に蔓延しているテーマだ。

 子ども達のSOSにどう寄り添い、どう取り組んでいくのか。いじめを受けた子を守ると同時に、いじめをする子の背景にも向き合い、真の解決に向かう姿に、お芝居を見ながら手が痛くなるほど拍手を送っていた。

 

子どもが相談する相手は

 

 わたしは2010年のパート17「雨の記憶」から鑑賞している。性虐待を扱う内容に衝撃を受けて、友人と肩を落としながら帰り道で話しあったのがもう10年前のことだ。

 次の年には、偶然、尊敬する先輩の娘さんが弁護士となり、お芝居に参加するようになっていた。育てたように、子は育つ。人権意識が高く温かい仕事をする先輩が、家庭人としても、我が子を聡明で優しい女性に育てあげたことを知り、感激したのを覚えている。その娘さんが今回インタビューに協力してくれた吉川由里さんだ。

 わたしが関わる地域の子ども達に、SNSでのトラブルを聞くと、「自分はないけど、友達はある」と答えた子が何人かいた。そして「困った時に親に相談する?」の問いには、小学生は「する」と答えた子が多かったが、中学生は、首を傾げたり、はっきり「しない」と答えた子もいた。

 SNSなどのトラブルは、子どもが相談する相手として、親や教師、地域の大人だけでなく、専門家の支援も必要になる。今年の8月1日からオープンした「子ども相談室(ほっとルーム)」の出番もあるだろう。

 失敗を恐れる子ども達に、間違えてもやり直せるよ、と伝えたい。いじめやトラブルがあっても、「加害」「被害」の子、両者が成長の過程として、乗り越えていけるように、丁寧に関わり続けていきたい。子どもが困った時に思い出してもらえる大人になりたい。
 今年の夏の終わりも「もがれた翼」に出会えて良かった。
(石田裕子)(写真は筆者提供)

 

【関連リンク】
・もがれた翼(東京弁護士会 子どもの人権と少年法に関する特別委員会

 

【筆者略歴】
石田裕子(いしだ・ひろこ)
 夫と長男と、猫2匹が現在の同居家族。PTAが大好きで、谷戸小学校では2回、田無二中でも2回のPTA会長を歴任。人生のテーマが「子ども支援」。育成会や遊び場開放で、子どもとふれあいなから、市内2カ所の子ども食堂に関わる。谷戸小学校施設開放運営協議会管理者、青少年育成会メタセコイア 副会長、西東京わいわいネット 事務局長、放課後キッチン・ごろごろ代表など。

 

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