子ども相談室「ほっとルーム」の1年 西東京市子どもの権利擁護委員が活動報告会

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙子育て・教育 オン 2020年8月17日

あいさつする子どもの権利擁護委員代表の野村武司さん

 西東京市の子ども相談室「ほっとルーム」が開設して1周年になる8月1日、市内の住吉会館ルピナスで、子どもの権利擁護委員2019年度活動報告会が開かれた。権利擁護委員や相談・調査に携わる専門員が相談活動の内容を説明し、座談会では子どもに寄り添う現場の活動を語り合った。

 最初にあいさつした子どもの権利擁護委員代表で東京経済大学教授・弁護士の野村武司さんは「相談室は子ども条例を通じて子どもの権利保障を進め動かしていく仕組みであり、子どもの置かれた状況に生で触れる場でもあります。子どもの悩みや問題に触れ、子どもの声を聞いていただいて、相談室がこんなことをしてくれる所だと知ってほしい」と述べた。

 

コロナ感染で状況変わる

 

 開設した昨年8月から今年3月までの8ヵ月間に受け付けた相談は34件。実際に会ったり電話やメールで遣り取りしたりした対応回数は295回に上った。「ほっとルーム」を知ってもらうために、電話番号や相談受け付け内容を書いた「相談PRカード」や機関紙「ほっとルーム通信」を配布した翌月は、相談が目立って増えた。

 相談のうち「子ども110番ピーポくんの家」に関係する1件は「申し立て」として一般の相談とは別に取り上げたが、コロナ禍で調査が中断し、今年度に持ち越しとなった。

 申し立てを除く相談33件のうち、最初に相談してきたのは子どもが13件、大人が20件。子どもの内訳は小学生10件、中学生と高校生各1件などだった。

 

「子どもの権利擁護委員活動報告書」から

 内容では、「自分や自分の家族」に関する相談が26件とほぼ8割を占め、「他人や他人の家族」は少なかった。相談内容では「交友関係」が最も多く9件で、すべて子どもからだった。続く「子育て」8件は親からだった。「いじめ」は子どもから1件、大人から2件の計3件だった。

 相談室を知った媒体や経路について複数回答を求めた。上位は「友達」22%、「機関紙」16%、「インターネット」14%だった。相談方法では、子どもは「面談」が多く9件、「電話」3件、「メール」は1件だった。

 ところが新型コロナウイルス感染が拡大して状況が一変した。市内の小中学校の臨時休業が始まった3月の新規相談はゼロ。4月は子どもから1件だけ、5月もゼロだった。

 

コロナの影響が相談にも現れた(当日発表のスライドから)

 

 4月以降7月末までの相談件数は18件。そのうち子ども72%(13人)、大人28%(5人)となり、子どもと大人の割合が逆転。以前は少なかった中学生が17%(3人)、高校生も11%(2人)に増えた。相談方法も面談が激減し、電話とメールがほとんどを占めた。報告した専門員の江柄喜美子さんさんは「昨年度にとらわれず、今後は柔軟な対応が必要かもしれません」と話した。

 

気付く力、使い分ける「キャラ」

 

 事例報告はいくつかの相談を取り込んだ架空ケースだと前置きした上で、権利擁護委員で社会福祉士の谷川由起子さんがまず報告。「(小学5年のわが子が)児童館で何となく仲間はずれにされていると感じて、児童館に行けなくなってきた」と父親が相談したケースを取り上げた。

 専門員が親子と面談を重ね、子どもが「仲間はずれでないかも」「楽しく遊べているからそれでいい」などと話して自ら状況に気付き、成長していく様子を見守った。「大人が先回りして意見を言ったりせず、子どもの気持ちや解決イメージを確認しながら信頼関係を築くように心掛けた。子どもが自分と周囲をよく考え、力を付けていったケース」だったという。

 権利擁護委員で臨床心理士、公認心理師の井利由利さんは高校1年女子のケースを報告した。相談では「みんなと違っていて自分は変なのか」という不安を口にした。忙しい親を気遣い、家族には頼り切れない。同年代とはSNSなども含めて「相手が望む反応を『キャラ』として使い分ける」。このため思春期の子どもたちにとって「自分の存在を定位しにくくなっている」状況が広がり、「意見表明の土壌が危うくなっていると感じます」と指摘した。

 

SNS検討は道半ば-相談の現場から

 

 後半は権利擁護委員、専門員が座談会形式で、1年間の相談活動を振り返った。
 司会の野村さんが「当初の予想と実際はどうでしたか」と問いかけると、「保護者からの相談が殺到するかもしれないと覚悟していましたが、そんなことはなかった。子どもの相談にじっくり取り組めた」と谷川さん。井利さんは「親が電話してきて、子どもが相談したいと言っているけどいいか、ということもあった。学校も対応してくれる。子どもにやさしい西東京市、いい感じだなあと思いました」と話した。

 

座談会に参加した人たち。左から野村武司さん、谷川由起子さん、井利由利さん、関根亮介さん

 

 専門員の関根亮介さんは「関係機関や子どもと親の調整などは思ったより多くなかった」と言う。むしろ「悩みを限定しない、信頼関係を深めて寄り添っていく、子どもの力を引き出すという相談活動は多かった」と話した。野村さんも「何が問題か分からないけど困っている人を受け入れる。そういう姿勢が大切だと思う」と言い添えた。

 コロナ禍で学校が3月から臨時休業し、6月から再開した。しかし3密を避け、距離をとり、会話も控えめ。井利さんは「子どもはじゃれ合ったり言葉を交わしたり、身体化を伴うことで信頼関係が深まると言われます。休校も再開も、子どもたちにとって大きな変化だったのではないでしょうか」と話した。

 相談のあり方では、LINEなどSNSの活用が話題になった。いま相談は電話、メール、面談となっている。しかし子どもたちはいま、SNSを多用して仲間と遣り取りしている現状がある。井利さんは臨床心理士会でもSNS相談をどうとらえるか課題になっていると述べ、「道半ばのテーマ」だと話した。「電話なら声の調子で相手の状況が伝わり、話が本当か真剣かが分かってくる。メールも、相談の入口としてはいいと思います。しかしツイッターやLINEなどのSNSは言葉だけの世界です。しかも即反応しないと回答なしと受け取られてしまう。それでもあいさつ抜き、件名なし、名前を名乗らなくても相談できるメリットもあり、今後の検討課題です」と話した。

 

愛称決定は子ども主体

 

 相談室が出来ても、すぐに電話が鳴り、メールが届くわけではない。市側の周到な準備があった。子育て支援部副参与の岡田光子さんによる報告、特に相談室や権利擁護委員の愛称募集と決定のプロセスは、子ども主体の考え方を丁寧にたどる内容だった。

 まず中学校全9校の生徒会に愛称募集を依頼する傍ら、子ども条例の趣旨や内容を権利擁護委員らが学校に出向いて説明した。集まった候補名を小学生のワークショップで絞り込み、最後は市立小学校全18校の325クラスで投票にかけた。その結果、相談室は「ほっとルーム」、権利擁護委員は「Children Protect Team」(CPT)に決まった。

 

子ども相談室「ほっとルーム」は住吉会館ルピナスの2階

 

 投票に合わせて発行した創刊準備号を含め、機関紙「ほっとルーム通信」を3回発行。三つ折りリーフレットを作成し、愛称や相談電話の番号を載せたクリアファイルや相談PRカードも配布した。CPT代表野村さんの東京経済大学現代法学部ゼミ生が、小学6年生向けの副読本「みんなで学ぼう西東京市子ども条例」を制作した。

 会の終わりに子育て支援部の古厩忠嗣部長は「子どもからの相談が増え、子どもの意見を尊重する相談室と評価されていることは心強い。これからも子どもの笑顔を守る活動を願っています」と述べた。

 今回の報告会は新型コロナウイルス感染の拡大防止を考慮し、市民の参加は見合わせることになった。報告会の模様を記録した動画を公開予定という。
(北嶋孝)

 

【関連情報】
・子どもの相談・救済(機関紙の発行、活動報告)(西東京市Web
・西東京市子どもの権利擁護委員 令和元(2019)年活動報告(西東京市Web、PDF:4,365KB
・西東京市子どもの権利擁護委員活動報告会を開催します(西東京市Web

 

北嶋孝
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子ども相談室「ほっとルーム」の1年 西東京市子どもの権利擁護委員が活動報告会」への1件のフィードバック

  1. 1

    子どもの権利擁護委員谷川由起子さんのお名前を間違えていました。もうひとつ、子ども支援部岡田光子さんの肩書きも違っていました。ご迷惑をおかけいたしました。お詫びして訂正しました。確認が不十分でした。告知も遅れました。併せて記します。(北嶋孝)

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