地域の ”リアル井戸端会議”をめざして 古井戸再生プロジェクトのクラウドファンディング始まる

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2020年8月25日

古井戸再生でみんな楽しく(イラスト=指田ふみ)

 ご近所と楽しく付き合いたい。地域のお役に立ちたい。そう思っていたとき、自宅の古井戸を再生するアイデアが生まれた。思いを同じくする人が集い、プロジェクトが動き出した。ポンプ購入など必要な資金は、クラウドファンディングで賄う-。西東京市東町にお住まいの古井戸再生プロジェクト“SHARE WELL Hironta”代表、菊池ゆかりさんの報告です。(編集部)

 

 

自宅の古井戸を再生して地域でシェアする

 

「お母さん、クラウドファンディングをやりたいならFacebookとかで宣伝して、みんなに見てもらわなきゃね」
「そうなの? でも、Facebookってどうやったら投稿できるの?」

 こんな会話を娘とするほどSNSに疎かった私が、なぜクラウドファンディングを始めるに至ったのでしょうか。まずは、現在進行中のクラウドファンディングの概容からご説明します。

 

古井戸をのぞく筆者(卯野右子さん撮影)

 

 2020年8月19日から自宅の古井戸を再生させるための費用を、クラウドファンディングで募っています。 9月17日までに39万円を集めることが目標です。内訳は、(1)手押しポンプの設置費用(2)井戸水をろ過する浄水器購入費(3)支援してくださった方々へのお礼状の郵送費です。

 

ご近所と楽くつながるお付き合い

 

 なぜ古井戸を再生したいと考えたのか、どうしてクラウドファンディングを始めようと思ったかという理由のひとつに、「ご近所と楽しくつながるお付き合い」が出来ないかという気持ちがありました。

 

筆者(左)と母(筆者提供)

 

 3年前に夫に先立たれて出戻った実家の周りは、私の知らないご近所さんばかりになっていました。新しい住宅が並び子どもたちの声もするけれど、なかなかお近づきになる機会はありません。87歳の母と57歳の私の健康面や、退職後の収入減、もし母が徘徊するようになったらどうするのかなどなど、社会福祉士として”地域づくり”の仕事をしているのに自分の身の回りのことは手つかずな状態になっていました。地域の役に立ちたい気持ちもありつつ、何をどうすればよいのか踏み出せずに暮らしていました。

 

 そんな時にふと「そういえば、ウチに井戸があったな」と思い出したのです。家の裏に見に行ったところ、小さな木の小屋の中に古いポンプが収まっていました。そばに蛇口もありますが、当然ひねってもポンプは動かないし、水も出ません。そこで井戸が使えるのかどうかを専門業者の瀧島商事株式会社さんに見ていただきました。土をどけていくと四角いコンクリートが現れ、持ち上げると深い穴の下の方にキラキラした水を確認することができました。そのとき、この井戸を再生すればいろんなことができる、やるっきゃないと決めました。

 

古井戸再生でコミュニティ活性化をめざす

 

 井戸を再生させようと考えたときに、災害時のライフラインとしての活用はもちろんですが、一番に思ったことはみんなが地域で楽しく暮らすために使えないか、ということでした。というのも、この以前からご近所さんや地域の方々に向けて、私が面白いな、いいなと思うことを少しずつ発信していたからです。

 

自宅ガレージで始めた「0円均一市」(筆者提供)

 

 ”0円均一”という活動を参考にして不用品を並べてみたり、「ご自由にお持ちください」と書いた箱にオススメのチラシを入れて置いておくと、1枚2枚とちらしがなくなるなど小さな反応を感じていました。昨年の12月に、庭で採れたゆずで手作りした、”ゆずはちみつ”が完売した時はとても嬉しかったです。それまで感じていた小さな反応が、その頃から発信すれば見てくれる人がいるのだという手ごたえに変わっていきました。

 

 そして今年の3月から大きなイベントとして、自宅のガレージで出張パン屋を始めたのです。「くらしにツナガルHātWork」の友人が焼いたこだわりのパンを販売したところ、たくさんのご近所の方に来ていただき毎回大好評です。母もレジ係をつとめ、楽しそうに店員役をこなしてくれています。千円札を握りしめた小さな兄弟や犬の散歩途中の方などが続けて来て下さることで、手ごたえとともにやりがいも感じるようになりました。今後も毎月1回で続けていく予定です。

 

「出張パン屋」さんの店開き(卯野右子さん撮影)

おいしそうなパンが揃う(卯野右子さん撮影)

 

 パン販売を続けるうち、おいしいとか面白いことをきっかけにしてできるつながりで、もとからあるコミュニティを再生できるのではないかと思うようになりました。そのためにウチの井戸を地域でシェアして、もっと楽しいことをやりたいと考えたのです。

 

 例えば、井戸水で淹れたコーヒーを出張パン屋で提供する、庭の柿の木と井戸水で草木染めをする、井戸の歴史の勉強会をするなどです。子どもだけでなく大人も手押しポンプを経験できたら楽しいだろうなと想像しています。楽しく暮らせるということは、安心安全につながっています。地域にいるひとりひとりに暮らしがあり、いろんなことが起こるけれど、やっぱりここで暮らし続けたいという思いをみんなが持っています。やりたいことを持ち寄って、みなさんと井戸を囲んでいろんなことを話したい、”リアル井戸端会議”ができるようになりたい! これが古井戸再生プロジェクトの原動力であり、クラウドファンディングのきっかけです。せっかくの井戸なので、再生した後は震災用井戸として西東京市に登録します。

 

クラウドファンディングに挑戦

 

 いざクラウドファンディングの準備を始めたらこれがまた大変でした。Facebookに投稿するという慣れない作業にてんやわんやの日々。でもがんばったかいあって、クラウドファンディングが始まった途端にこの原稿依頼を受けたことや、懐かしい友人たちと会えたこと、貴重な井戸の話が聞けたり新しい出会いにつながりました。仲間と母の強力なサポートがあってここまで来られました。特に地元の方のご支援はとてもありがたく励みになります。リターンには、出張パン屋で使えるお買い物券などを用意しております。井戸完成の折りにはお披露目の会をしたいと思っていますので、どうぞおいしい井戸水コーヒーを飲みにいらしてください! 応援よろしくお願いいたします。

 

【関連情報】
・SHARE WELL Hironta(Facebook
・めざせリアル井戸端会議、古井戸再生プロジェクト始動!(クラウドファンディング READYFOR

 

【筆者略歴】
 菊池ゆかり(きくち・ゆかり)
 1963年7月 西東京市東町生まれ。市内の地域包括支援センター勤務(社会福祉士)。保谷高校出身で生まれてからずっと市内在住。

 

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地域の ”リアル井戸端会議”をめざして 古井戸再生プロジェクトのクラウドファンディング始まる」への2件のフィードバック

  1. 富沢木実
    1

    とても良い活動ですね。ちょつとしたこたから繋がりが生まれるのを発見というのも、とても素敵!

    • 菊池ゆかり
      2

      コメントありがとうございます。
      富沢さんのようにはなかなかいきませんが、
      少しずつすすめていきます。
      南部圏域サポート連絡会もがんばりましょう!

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