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ネット上の資金募集始まる 地域作業所「カプカプ」が本づくり

By in 交流・共生 on 2016年2月18日
作業所「カプカプ」の店内

作業所「カプカプ」の店内(筆者提供)

 障害者の作業所「カプカプ」が出来てから20年近く。その活動をまとめようと、本づくりのプロジェクトが始まった。資金はインターネットで呼び掛ける「クラウドファンディング」方式。2月初めに、記念トークイベントが開かれた。「カプカプ」は横浜市にあるけれど、この企画の課題はどの地域にも共通するのかもしれない。当日のイベントに参加した大泉尚子さんに寄稿してもらった。(編集部)

 一体ここは何屋さんなのだろう? はじめて訪れた人はそう思うかもしれない。店先のハンガーラックにはびっしりと古着が吊り下がり、店内には陶器や手描きの絵のほかにも実に種々様々な雑貨類が所狭しと並ぶ。奥からかぐわしいコーヒーの香りも漂ってくる。

 JR横浜線の中山駅からバスで十数分。昭和40年代に建てられたという西ひかりが丘団地のこぢんまりした商店街の中に、障害者の地域作業所「カプカプ」はある。ここには工房と喫茶店があり、障害のある人たちがお菓子や手芸品を作って売ったりリサイクルバザーを開くなどさまざまな形で働いている。

 所長の鈴木励滋さんのトークイベントがあると聞いて足を運んだ2月5日(金)は、私にとっては二度目の訪問だった。夕刻三々五々集まってきた十数人が、手作りのパンやスープをいただきながら鈴木さんの話に耳を傾ける。

 「うちのメンバーをカプカプーズと呼ぶのですが、例えば喫茶店で接客中、いきなりお客さんに年齢や未婚か既婚かを聞いたりして驚かれることもあります。時には怒られたりもしながら、周りの住民や商店の方たちと少しずつかかわりができてくる。リサイクルバザーでは10円のものを値切ってくる人もいて、カプカプーズとの押したり引いたりのやりとりが面白い」

 効率だけを考えると、部屋を締め切って作業に専念させる方がいいわけだが、かかわりを作ることの方を大事にしている。そして、メンバーがやりたいという仕事につけるよう、できるだけ多くの選択肢を用意するように工夫しているのだという。

 ここでは「障害」というものを、姿かたちや能力の違いということだけではなく、それらによって不利益を被ることと捉え、ひいては障害は人にではなく、関係にあるのではないかと考えている。

 

「カプカプ」について語る所長の鈴木励滋さん

「カプカプ」を語る鈴木励滋さん(筆者提供)

 

 

 さて、カプカプが地域作業所として開所したのは1997年。その後の18年間に喫茶店や工房を設け、緑区の竹山と都筑区の川和の2か所にも地域作業所を増やしてきた。運営するのはNPO法人カプカプ。

 以前は近くにコンビニがなかったこともあって、コピーやFAXサービスも行う。また夏休みの子ども向けクッキー教室、ハロウィンパーティー、ひかり福祉フェスタなどのイベントにも積極的に取り組んでいる。高齢化の進む団地の商店街の中にあって、訪れる人たちの交流スペースともなっているらしい。

 そしてこのたび、活動の基本的な考え方やこれまでのプロセス・今後の展望などを綴った本づくりを計画。横浜のNPOが進める「LOCAL GOOD YOKOHAMA」プロジェクトのひとつに取り上げられ、インターネット上で趣旨に賛同する人に呼びかける “クラウドファンディング”でその資金を募ることとなった()。

 この日はそのスタートを記念したイベントだった。

「今の社会で“生きづらい”のは障害のある人ばかりではなく、この団地でも3人に1人といわれる高齢者、そのほか外国人や生活保護を受けている人などなど。そういう人たちとも繋がっていきたいんです」

 常連には高齢のお客さんも多く、コピーも操作がわからないからと預けていく人もいる。そのうちに名前がわかって、あちらもメンバーの名前を覚えてくれる。名前を呼び合えば、対障害者というより個人と個人の関係になっていく。

 東京電力宛の書類を持ってきた人がいて、この地区が福島から避難している人を100人受け入れているそのうちの1人だったが、そこから話が始まってまた来てくれたそうだ。

「スタッフは自治会や町内会の会合にも出ます。ここで、近隣の福祉と名のつくところの団体の寄り合いなども定期的に開いています。いろんなところとかかわりを持っておけば、困ったことがあったとき、それはあの人に、あそこに相談してみたらと繋げていくこともできます。やはり地元に愛されないと、どんなに崇高な理念を持っていても駄目なんですよね」

 そうした多様な人々が駆け込めるところ、あそこに行けば何とかなるという場を目指し、さらにそれを区域、市域、県域…と拡げていきたいのだという。本づくりも、資金集めのクラウドファンディングも、それを通してカプカプの活動を少しでも多くの人に知ってもらおうという試みだ。

 違いがある人同士が互を肯定し合えるような、誰もが居心地のよい場所作りとは、ほかの多くの地域に共通する課題でもあり、今後の進展に注目したい。
(大泉尚子)

「障害福祉」から世界を変える『カプカプの作り方』出版プロジェクト
 クラウドファンディングに応募する場合はこちらから >>
 期間は1stラウンドが2月5日-3月15日、2ndラウンドが3月16日-4月24日の計80日間。
 出版したい本は、B5版、全64ページ、フルカラー。内容は、まず「価値観の転換」を図る作戦「空間をつくる」「カネをつくる」から「関係をつくる」「つながりをつくる」までの6つのプロセスを具体的に説明。絵本作家・ミロコマチコさん、体奏家・新井英夫さんの寄稿、2014年9月に開催された座談会「生きづらさ、からはじまる未来」(伊藤英樹さん=井戸端げんき設立者、菅原直樹さん=OiBokkeShi主宰、藤原ちからさん=批評家が参加)やカプカプーズのプロフィール、ひかりが丘団地の「ご近所さん」の声のほか、写真家・齋藤陽道(さいとう・はるみち)さんの写真など。

 

【関連リンク】
カプカプひかりが丘
LOCAL GOOD YOKOHAMA

 

【筆者略歴】
 大泉尚子(おおいずみ・なおこ)
 京都生まれ、東京・世田谷区在住。2009年から劇評サイト「ワンダーランド」編集部に、2012年から短歌結社「未来」に所属。趣味はダンスとリコーダー合奏。

 

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