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本音を言ってもらえる関わりに 「居場所のちから」講演を開いて

By in 子育て・教育, 交流・共生 on 2018年2月22日

チラシ(クリックで拡大)

 子どもの居場所づくりに取り組んでいる川崎市子ども夢パーク所長、西野博之さんの講演会「居場所のちから~生きてるだけですごいんだ~」が2月18日、西東京市の柳沢公民館で開かれた。西野さんは不登校や高校を中退した子ども・若者と付き合い、「既成の制度や仕組みに子どもを無理やり合わせるのではなく、子どもの『いのち』のほうへ制度や仕組みを引き寄せたい」と願ってきた長年の活動を語った。主催した西東京わいわいネット事務局長、石田裕子さんの報告です。(編集部)

 

それは愚痴から始まった

 

 公民館市民企画事業の講演会は、子ども夢パークの西野博之所長を迎えて2月18日に行われました。それは子ども食堂をしている時の、私の愚痴から始まったのです。

 子ども達に食事を提供したくてしたくて、「西東京わいわいクッキング」と「放課後キッチン・ごろごろ」を始めました。「わいわいクッキング」は3年経ち、「ごろごろ」は丸2年が経過しました。子ども達が来始めると、子ども達の心がつかめないことも出て来て、「もー、どうすんのぉ」といろんな人に泣きつくことになりました。

 そんな様子を冷静に見ていた「わいわいネット」の代表が「今年は市民企画事業に参加して、子どもとの関わり方を学ぼうよ」と提案。多くの人たちの助言から、西野さんを講師に招くことができました。

 講演会準備のため、「わいわい」のメンバー3人で8月の終わりに川崎市の「子ども夢パーク」へ出かけました。夏の終わりというのに、ドロ遊びに夢中な子ども達を発見。ドッロドロの全身から喜びが溢れ出てる、そんな印象を受けました。

 西野さんは、その日、取材の嵐で、カメラとマイクを突きつけられながら、ニコニコと話していました。子どもが参加して工夫を凝らした夢パークは、まさに夢の居場所。「居場所のちから」を垣間見たひと時でした。

 

チラシにマップを入れようよ

 

チラシ裏(クリックで拡大)

 私達が、講演会の準備を始める少し前から、市では仮称「子ども条例」の検討が始まったこと、教育施策では「居場所」を重点項目にしていることがわかりました。市内7箇所の子ども食堂が認知され、昨年から子育て支援課が連絡会を開催していました。そんなこともあり、講演会のチラシの裏面に、せっかくならその7箇所の詳細を入れようよ、とマップを作成しました。

 チラシのタイトルは「居場所のちから〜生きてるだけですごいんだ〜」でした。出来て配布すると「この題が良いよね!」とめっちゃ褒められました…。「それって、西野さんの本の題名なんです」と答えることが多く、次に裏面の地図を見せると「これ欲しかったんだぁ、西東京の子ども食堂ってどこにあるの? って聞かれるんだよ」と、多くの人に言われました。居場所への関心と、子ども食堂への興味がたくさんの方々にあることを知りました。
 講演会の資料から抜粋して概要を報告します。

 

語りかける川崎市子ども夢パーク所長の西野博之さん(写真=西東京わいわいネット提供)

 

 子どもを取り巻く環境
・2極化する家庭環境 。ネグレクト(貧困)VS過干渉
・広がる格差。この10年で「貧困」が一気に加速した。子どもの貧困率13.9% 7人に1人が貧困。一方で過干渉の親が増加。「正しい親」を頑張ろうと、子どもを追い詰める

 子どもの問題行動を生みだす背景
・どこでも本音が出せない子どもたち
・親や友達に気を使って生きている
・自分の本当の気持ちがわからない 快・不快、何をしたいのかわからない

 川崎市子ども権利条例」づくりに関わる(98年〜)
・この条例は、子どもを一人の人間として尊重し、子どもの権利を守り、子どもが自分らしく生きていくことを支えていくためにつくられた。「子どもは大人のパートナー」と位置づけ

 子ども夢パークづくりに関わる(2001年〜)
・「川崎市子ども権利条例」の具現化を目指した青少年教育施設をつくろう

 川崎市子ども夢パークの開設(2003年)
・冒険遊び場(プレーパーク)づくり
・「ケガと弁当、自分持ち」(自分の責任で自由に遊ぶ)
・たき火ができる。穴を掘ったり、思いっきり泥や水で遊べる
・ノコギリややナタ・カナヅチなど工具が使える
・公設民営型「フリースペースえん」
・社会とゆるやかにつながる「えんがわ」機能
・「出会い」と「つながり」と「自己肯定感」を育む「居場所」
・「川崎市子どもの権利条例」をもとに、子ども夢パーク開設時にできたフリースペース

 子どものSOSをキャッチするために
 〜子どもの思いを受け止められる、感度がいいアンテナがたった大人になるために〜
・子どもはなかなか言葉にして助けを求めることはできない
・発見する相談(子どもたちは、待っていても相談に来ない)

 地域の中に「子どもの居場所」を増やすことがとても重要
・監視カメラの増設よりも、遊び場(プレーパークを)を

 「川崎市子ども夢パーク」で取り組んでいること
・プレーパーク(冒険遊び場)の開設…遊びながら、たき火をしながら、ふと漏れてくる SOS。お腹をすかせた子ども、何日も同じ服を着ている子ども

 子どもの異変をキャッチできるアンテナが立っている
・(感度のいい)おとなの存在が必要
・フリースペースの開設…どうしても学校に来られない子のために、学校外での学び・育つ場をつくる
・「学び」を成立させる前提には、安心して寝られる・食べられる「暮らし」が保障されていることが大切

 暮らしを取り戻す 子ども食堂のちから
・「問題行動」を繰り返す子どもの多くが、空腹を抱えている。
 暮らしが壊れてしまっている子どもたち。
・フリースペースを開いて27年。毎日お昼ごはんを作って食べるだけで、子どもたちが元気になっていった。
・空き家の有効活用。空き家を使って学習支援とマッチング。学びたい人と教えたい人が出会う機会をつくる。

 学校の中に子どもの居場所をつくる
・教師に求められる福祉的視点。福祉に関する知識やスキルを手に入れる必要
・たいへんな環境の中で、けなげに生きてきた子どもたち
・「問題行動」の背景にあるものに想いをめぐらす
・「問題」を個人やその家族のこととして責任を押し付けるのではなく、社会問題としてとらえる視点。子どもの試し行動と向き合う。「僕を見て、私に気づいて」のシグナル
・「かまってほしい」思いを、不器用な形でしか表現できない子どもたち
・「めんどうくさい」を手放さない。関わり続ける覚悟をもつ

 子どもの話を聴く
・まずは「自分のものさし」を疑おう
・自分の問題?相手(子ども)の問題?を整理する
・目の前の子どもを否定的にとらえそうになったときは、「まずは自分が使ったものさしを疑う練習をしよう

 子ども・若者とコミュニケーションをとるため
・「正しいこと」を伝える時に特に気をつけること
・正論・正義を背負うと語気が強くなる。
・言わなくていいことまで、勢いで言ってしまう。「文句があるなら、言ってみろ」
・おびえるだけで、本音を語らなくなる

 発達障害の理解について
 〜「困った」子なのではなく、「困っている」子である〜
・「文化が異なる人たち」という考え方を手に入れる
・子どもを変えようとするよりも周囲にこの子のありのままをわかってくれる理解者を増やすことが大事

 不登校・引きこもりの理解について
・昼夜逆転が持っている意味
 〜こころが壊れていくのを守るためのからだの反応という考え方もある
・「不登校はダメ」ではない
・すべては生きていくためのプロセス
 〜マイナスにしか思えない体験は、実は生きていくために必要なプロセスだった〜

 体験者との出会いから学んだこと
・「ひきこもりは生きるために必要な時間だった。自分の言葉を獲得するために必要な時間だった」と語った青年
・「過食(摂食障害)があったから、生きられた」と語った女性

 生きてるだけですごいんだ
・「doing」より「being」(イギリスの児童精神科医 ドナルド・ウィニコット)
 「ある」(being)は、「する・させる」(doing)に先行しなければならない
 「ある」が崩れると、「する」が成り立たない
 今の社会は「する」が圧倒的に優先の社会。「ある」がないがしろになっている
 「生まれてくれて、ありがとう」
 「あなたがいてくれて幸せだよ」を届ける

 困難を抱える子ども・若者を支えるネットワークづくり
・自立とは一人でなんでもできることではない
・「助けて」が言える。適度に依存できる力が「自立」に必要
・自ら「助けて」を発しにくい子ども・若者とその家族の SOSをキャッチできる仕組みをつくる
・子どもの貧困は、ヒトゴトではなくジブンゴト

 

ケガと本音は自分持ち

 

 西野さんは1時間40分ほど、盛りだくさんの内容を話しました。

 当日のアンケートには、
「子どもの居場所づくり、地域のつながりを作る人、子育て中の親、どちらの立場で聴いても泣きそうになりました」
「フリースペースえんに行かせてたいです。西東京市にも、ぜひこのような場所があればと思います」
「西東京市での子ども条例づくりと、その具体化の中で、子どもが生産者、生活者としてイキイキする姿が見られたらいいなと切に思いました」
など、たくさんの意見が寄せられました。

 

熱心に講演を聴く参加者 (写真=西東京わいわいネット提供)

 

 昨年、評判になったドラマの中で「(僕を)詮索するのも、分析するのもやめてください」というセリフを聞いた時、子ども食堂に来ている子どもたちの声に思えていましたが、今回の西野さんの講演で、いろいろなことを整理することができました。
 「めんどうくさい」を手放さず、覚悟を持って子どもたちに寄り添いたいと思います。

 川崎のプレーパークで「「ケガと弁当は自分持ち」という言葉を聞き、私もそう言い続けてきました。最近は「弁当」部分に代わる言葉を探していましたが、子ども食堂では「ケガと本音は自分持ち」でどうかしら、などと考え始めています。「本音」を言ってもらえるまで、しっかり関わり続けないといけませんね。

 西東京市での子ども食堂の取り組み、子ども条例の制定、居場所の充実。どれも欠かせないことを再確認した講演会でした。「今日は一市民としてきました」「個人的に参加します」などと言って、市内で子どもに関わる方々が何人も来ました。
 西東京で、子ども支援がますます充実することを願っています。
(石田裕子)

 

【筆者略歴】
 石田裕子(いしだ・ひろこ)
 夫と3人の子どもの5人家族の主婦。PTAが大好きで、谷戸小学校では2回、田無二中でも2回のPTA会長を歴任。人生のテーマが「子ども支援」。育成会や遊び場開放で、子どもとふれあいなから、市内2箇所の子ども食堂に関わる。谷戸小学校施設開放運営協議会管理者、青少年育成会メタセコイア 副会長、西東京わいわいネット 事務局長、放課後キッチン・ごろごろ代表など。

 

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