まち思い帖 第47回 買い物の楽しさを誰にでも

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2022年11月3日

 

買い物に出かけることは「楽しみ」

 

 「高齢者にとって買い物が不自由だ」と言った場合、重い物を運ぶのが大変、あるいは、家から小売店に出かけるのが大変というように考える。その解決策として、ネットで購入・宅配するとか、あるいは、巡回小売店や買い物代行サービスの導入などを考えることが多い。

 ところが、ある会議で「買い物に出かけたり、買い物したりすることは楽しみの一つ」なのだという話を聞いて、目から鱗というか、衝撃を受けた。そう、確かに買い物は、楽しい。たとえ買わなかったとしても、華やかに並んだ商品を見比べたり、試食や試着したり、店員さんとおしゃべりしたりすることは、楽しい。買い物を口実に、友達と出かけるのもウキウキする。たとえば、孫のお気に入りの縫いぐるみを買う、ケーキセットで一服しちょっと贅沢な気分を味わうなどなど、買い物に出かけるという意味には、多面的な楽しみがある。

 

 ネットでの購入や買い物代行サービスは、下手をすると、高齢者からこういうウキウキした楽しみを奪うことになる可能性がある。もちろん、毎日買い物に行くのは億劫、重い物を持ち運びするのは辛いというニーズには、適している。しかし、「買い物の楽しみ」という面では、別な取り組みが必要であることを知った。

 これまで意識していなかったのだが、高齢者、あるいは、さまざまな障害のある人でも、買い物を楽しめるようにする取り組みは、実は、既にさまざまに実施されている。私が気付かなかっただけなのだ。そこで、小売店の取り組みについて、私の生活圏にある大型店を回りながら、主に写真を撮って紹介してみたい。

 

バリアフリー新法

 

 「バリアフリー新法」は、2006年12月20日に施行された。正式には、「高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」と言い、それまでの「ハートビル法」(1994年、建物のバリアフリーを促進)と「交通バリアフリー法」(2000年、公共交通機関のバリアフリーを促進)を統合・拡充した法律。

 この法律からイメージするのは、建物の段差を無くす、さまざまな誘導のための表示を見やすくする、点字の表示をする、障害者が利用する駐車場を入口近くに設ける、車椅子の貸し出し、誰でもトイレの設置、授乳やおむつ替えの部屋の用意、エレベーター/エスカレーター/手すりの設置など、建物や設備の充実を思い浮かべる。

 これを実感しやすいのが、私の生活圏では、イオンモール東久留米だ。イオン株式会社は、全社的に「人にやさしいお店づくり」を目指しており、バリアフリー新法認定数は、2021年2月末現在で760以上にのぼる。認定された店舗には、図1のマークが記されている。なお、私の生活圏では、西友ひばりヶ丘店にもこのマークがある。

 

バリアフリーのマーク

(図1)バリアフリー新法認定店に貼られているマーク(イオンモール東久留米にて)

 

 イオンモール東久留米の場合には、駐車場でも、バリアフリーが徹底している。福祉車両乗降スペースや電動車椅子(シニアカー)優先の置き場が用意されている。妊婦や障害者専用の駐車場は、店の入り口近くにある。ただ、専用駐車場を使うには、「許可証が必要」とあり、いちいち貰いに行くのか気になった。

 当日限りの許可を得る場合には、一階のサービスカウンターで発行されるが、恒常的に使う場合、2階のモールインフォーメーションに行く必要がある。電話で問い合わせたところ、実は、4階にも障害者用の駐車場があり、そこにはポールが設置されているため、利用にはポールを上げるリモコンが必要で、許可証とリモコンも両方貸し出すからとのことであった。手間をかけさせて恐縮だが、1度手続きすれば、その後は、不要とのことであった。

 

専用駐車場

(図2)障害者、妊婦、怪我をしている人等専用駐車場(イオンモール東久留米にて)

(図3)シニアカー優先駐車場と福祉車両乗降スペース(イオンモール東久留米にて)

 

 大概のスーパーでは、入口付近に車椅子の貸し出しもされている。最近では、スーパーの通路が広くなったように感じる。イオンモールは、当初からそのように設計して作られたのであろうが、以前からの店舗である西友ひばりヶ丘店も、リニューアル後、通路がとても広く、車椅子や電動車椅子でも安心して買い物することができる。田無駅前のLIVINの食品売り場も、改装してから、通路が広くなったような気がする。

 

車椅子の貸し出し

(図4)車椅子の貸し出し(西友ひばりヶ丘店にて)

 

補助犬の入店

 

 多くの小売店では、ペットは禁止されているが、盲導犬などの補助犬は、入店を認めている。補助犬には、良く知られる盲導犬のほかに、介助犬、聴導犬がいることを今回調べて初めて知った。盲導犬が最も多いが、補助犬全体で約1000頭が働いている。

 

(表1)身体障害者補助犬実働頭数
(出所)厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部

 

 盲導犬は、日本では、1939年にドイツから輸入されたことに始まり。1970年代には、道路交通法の改正に伴って、公共交通機関などへの乗車が認められるなど早くから認知されてきた。2002年に身体障害者の自立及び社会参加の促進に寄与することを目的に「身体障害者補助犬法」が成立し、盲導犬だけでなく、介助犬、聴導犬が補助犬として認められた。

 介助犬というのは、手や足に障害のある人の日常生活動作を手助けする。落とした物を拾う、指示した物を持ってくる、ドアの開閉、衣服の脱衣補助、車いすの牽引、起立・歩行介助、スイッチ操作などを行う。一番重要なのは、障害者が転んだり、倒れたりしたときに、携帯電話などを探して持ってきて、助けを求めるのを手伝うことであるという。

 聴導犬は、タッチをするなど色々な動作を使って耳の不自由人に音を知らせて生活をサポートする。赤ちゃんの泣き声、FAXの呼出音、ドアのチャイム、目覚まし時計の音等々、生活をしていく上で必要な様々な音を覚えて知らせる。警報機の音を知らせて安全を守る仕事もする。

 スーパーなどの入口には、図5のようなステッカーが張られていて、ペットは入店禁止だが、補助犬は良いとされている。気になったのは、食品館あおば田無店では、同じ犬のマークなのだが、わざわざ「盲導犬」と記されている。問い合わせたところ、意識して掲示した記憶はなく、おそらく前にこの建物を使っていたスーパーのままなのではないかとのこと。このように、店としては、補助犬の受け入れ表示をしていても、店員が理解していないことも多く、補助犬の入店が断られることもあるようだ。

 

ステッカー

(図5)ペットは、入店禁止だが、補助犬は、同伴可としたステッカー

ステッカー

(図6)「食品館あおば田無店」の入口に掲示してある「盲導犬」と記したステッカー

 

従業員の対応

 

 以上見てきたように、施設や設備がバリアフリー化され、補助犬の入店許可など環境が整っても、実際には、従業員がどれだけ理解し、対応してくれるかが大切だ。

 イオンでは、高齢者や身体の不自由な客が安心して楽しく買物できるよう、建物や設備などハード面のバリアフリー対策に加え、従業員に適切な介護技術を身に付けさせるとともに、心のバリアフリーを目指し、2006年から、従業員に「サービス介助士」(注2)資格を取得させている。2021年4月現在、資格取得者は1万1,067人とのこと。また、2021年2月末現在、8万0,813人が認知症サポーター(注3)の資格を得ている。イオンの場合には、お手伝いが必要な場合には、従業員を呼び出す仕組みがなされている。新しいイオンモール東久留米だけでなく、昔からあるイオングループのMaxValu田無芝久保店にもあった。

(注1)NPO法人「日本ケアフィットサービス協会」が主催認定する資格。
(注2)認知症について理解し、認知症の人やその家族を温かく見まもり、できる範囲での手助けをする人のことで、自治体などが実施する所定の講座を受講することで認定される。

 

(図7)介添え等を希望する場合の呼び出し(右上のプレートの上半分は点字)(MaxValu田無芝久保店にて)

 

 こうした取り組みは、他の小売店でも実施している。セブン‐イレブンやイトーヨーカ堂を経営する株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、認知症サポーターは、2022年4月末現在、グループ全体で4万1,284人とのこと。イトーヨーカ堂武蔵境店では、インターフォンで係員を呼び出す同様の表示に加え、困った当人が押すだけでなく、困っている人がいたら、他のお客さんが店員に知らせるための「ふれあい灯」まで用意されていた。昨今は、小売店でも売り場に店員が少なく、目が行き届かないことを踏まえてなのかもしれない。

 

(図8)買い物で困っている人を支援する仕組み(イトーヨーカ堂武蔵境店にて)

 

 私の生活圏では、一番身近なLIVIN田無店では、ペデストリアンデッキから入る2階の入り口に、「介添えが必要な方は、サービスカウンターへ」というステッカーが貼ってある。サービスカウンターは、一階にある。イオンやセブン&アイに比べるとちょっと不親切かもしれない。もっとも、イオンやイトーヨーカ堂でも、入口は、複数あっても、従業員を呼び出す仕組みがあるのは、一カ所であることが多い。

 

(図9)2階入り口にステッカー(LIVIN田無店にて)

 

 買い物だけでなく、飲食することも、外出の楽しみの一つである。一般社団法人フードサービス協会と公益財団法人日本補助犬協会が『外食産業における障がい者接遇マニュアル』を2018年3月に刊行している。さまざまな障害ごとに、お客にどのように対応したらよいかが丁寧に書かれている。

 このように、小売店や飲食店では、どのような障害の客にも、安心して楽しんでもらえるよう、さまざまな努力をしている。

 

自治体等による高齢者等への見守り支援

 

 自治体によっては、特に高齢者が安心して買い物を楽しめるように、積極的にこうした対応をしている店を顕彰している例もある。たとえば、板橋区では、事業所向け認知症サポーター養成講座を終了したサポーターがいる事業所を「高齢者あんしん協力店」として、HPで公開している。2022年9月28日現在 登録事業所数 428とのこと。大手スーパーだけでなく、地元の中小企業が多い。

 

(図10)板橋区の「高齢者あんしん協力店ステッカー(見本)」

 

 また、認知症の高齢者などが外出先で困っていたら声を掛けるなどの見守りサービスを提供している自治体も多い。

 たとえば、西東京市では、個人に「ささえあい協力員」(注3)、市内に営業拠点のある事業所及び自治会・町内会等に「ささえあい協力団体」として登録してもらっている。ささえあい協力員および協力団体は、特別な活動をするという訳ではなく、日頃の生活や業務の中で見守り活動を行う。近隣の高齢者の異変に気付いた場合や、心配な高齢者を見かけた場合に、地域サポート「りんく」や地域包括支援センター、高齢者支援課に連絡すると、その情報をもとに状況を確認し、必要な対応を行う。

 2022年3月末現在、ささえあい協力員1,474人、ささえあい協力団体279団体が登録している図11のような「ささえあい協力団体」のステッカーが用意されているという。しかし、私の生活圏では、このステッカーは、見つけられなかった。武蔵野市でも、似たような事業があり、イトーヨーカ堂武蔵境店には、図11のようなステッカーが張られていた。

(注3)このほか、個人で登録する「ささえあい訪問協力員」(現在338人)もある。これは、ささえあい訪問サービスの利用者宅を訪問して玄関先で近況を聞いたり、新聞受けや郵便受け、照明の点灯等を定期的に見回り、安否の確認を行う。

 また、西東京市のささえあい協力団体になっているコンビニでは、全国のコンビニに貼られている「エスゾウくん」のマークが貼られている。これは、2000年に警察庁から、「まちの安全・安心の拠点」としての活動要請を受けて始まった、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会に加盟するコンビニエンスストアによるセーフティステーション(SS)活動で、現在、約57,000店舗まで拡大している。青少年の健全な育成、防犯・防災対策に加え、安全対策として、女性や子供の駆け込みへの対応、高齢者・傷害者などへの買い物の手伝いや連絡、認知症が疑われる方への保護と連絡など、地域のインフラとしての役割を担っている。

 どこのコンビニも、販促のための貼り紙、コロナ対応への貼り紙など、いろいろな貼り紙が貼ってある。おそらく、西東京市の「ささえあいネットワーク協力団体」のステッカーをさらに加えては、却ってごちゃごちゃして分かりにくくなってしまうだろう。コンビニでは、「エスゾウくん」のステッカーだけで十分なのではないだろうか。それよりも、身近にあるコンビニが、こうした役割を担ってくれるということを周知させることの方が大事だと思う。

 

(図11)西東京市の「ささいあいネットワーク協力団体」、武蔵野市の「見守り・孤立防止ネットワーク協力事業者証」、コンビニの「セーフティステーション活動実施店」のステッカー

 

買い物などへの付き添いサービス

 

 介護保険内では、買い物などへの付き添いサービスは、難しいが、保険外でこのようなサービスを提供している企業もある。ネット検索により、いくつか紹介しておこう。

 たとえば、東急グループでは、ホームコンビニエンスサービス「東急ベル」というサービスを実施している。東急線沿線の人たちに暮らしやすさを提供するというコンセプトで、ハウスクリーニング、家事代行、リフォーム、修理などのほか、「シニアライフサービス」を提供している。シニアライフサービスには、家事代行、介護用品の販売、福祉タクシー、健康管理食の宅配、エンディングサポートなどのほか、「シニア付き添い」があり、買い物や観劇、通院などの外出の付き添いをしてくれる。

 年会費が1万1,000円、1回あたりのサービス提供時間は3時間以上とし、その後は15分単位で利用できる。7営業日前までに予約しておいた場合、1時間3,300円なので、3時間であった場合、9.900円かかる。このほか、訪問交通費920円に加え、実際に外出に掛かった実費が別途請求される。年会費1万円以上、一回の利用に1万円以上かかるので、高いと言えば高いが、気兼ねなくお出かけという楽しみを満喫できる。残念ながら、サービス対象エリアは、東京では、23区、武蔵野市、三鷹市、調布市、府中市、町田市(一部)となっていて、西東京市はエリア外。

 

(図12)東急ベルのシニア付き添いサービスの利用例

 

 便利屋お助けサービスでは、多摩地域に住んでいる人の外出を助けるとしている。料金は、自宅(又は、指定した場所)から開始時間とし、自宅(又は、指定した場所)に戻った時間で請求され、基本料金(最初の1時間)が2,500円+出張交通費1,000円~となっている。2時間以降の延長の場合20分につき1,000円加算されるとある。これは、東急ベルに比べ割安感がある。ただ、こちらも、対象エリアは、多摩市、日野市、八王子市、府中市、稲城市、国立市、立川市となっていて、エリア外は、要相談となっている。

 クラウドケアは、保険外の自費訪問介護サービスを提供しており、通院付き添い・院内介助や外出・余暇付き添いサービスも提供している。利用料金は、定期依頼(週1回)の場合、1回当たり2時間で5,500円のほか、交通費が880円で、これも比較的割安に利用できる。こちらは、西東京市も対象エリアとなっている。

 また、日常的な付き添いだけでなく、旅行まで付き添ってくれるサービスを提供しているのが、日本介護トラベルサービスだ。介護レベルにより、料金が異なるが、短時間プラン(2時間半まで)では、自立~要介護3までだと1万1,000円、要介護4以上だと1万6,500円。このほか、30分当たり事前面談料金2,200円がかかる。こちらは、全国展開している。

 

周知されているのだろうか

 

 今回は、「高齢者にとって買い物という楽しみ」の機会を奪わないために、小売店がどのような活動をしているかについて、一消費者として各店を訪れ、外側からチェックした調査に留まっている。個々の店や本社に出向いて、実態を確認したり、体験した方にヒヤリングしたりしていない。

 ステッカーに貼ってあっても、実際の対応があまりよくないのか、逆にステッカーに貼ってなくても、良い対応をしてくれているのか。この辺りまで調べられていない。ただ、ホームページなどで、全社的にこうした対応に力を入れているところとそうでないところがあるのは、確かだ。また、私が気が付かなかったように、小売店がこんな配慮をしてくれているということを知らない人も多いのではないだろうか。

 小売店のこうした試みを市民に周知し、西東京市が高齢者や障害者に、「買い物という楽しみ」を満喫させるまちナンバーワンになってもらいたいものだ。

 

 

 

05FBこのみ【筆者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。退職、母の介護を経て、まちづくりに関わる。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2019年より、多世代交流・地域の居場所「どんぐり」オーナー。2020年にフェイスブック仲間と「西東京市カルタ」完成。2020年より下宿コミュニティセンター管理運営協議会代表。2021年度より下宿自治会会長。

 

 

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