がんサバイバーの体力づくりと仲間づくり ゆるい運動プログラムで5月に高尾山を目指す
動画で配信される軽度の運動プログラムで体力をつけて、5月に医療従事者やボランティアと一緒に高尾山への登頂を目指すがんサバイバー向けの取り組み「ゆる2(ゆるゆる)トレプロジェクト」の申し込みが1月初旬から始まり、参加者を募集している。がん治療後の体力づくりと仲間づくりが一緒にできるのが特徴だ。
まずは自分のペースでやってみる
このプロジェクトは医師の監修のもと、がん専門運動指導士とともに開発した軽度の運動プログラムに、ウォーキングイベントや高尾山ハイクを組み合わせた。ゆる2トレのホームぺージから申し込むと参加者用の専用サイトが利用できるようになる。このサイトで他の参加者と交流しながらマイペースで自主トレーニングを行う。プロジェクトの期間中、無料で動画の視聴とオンラインレッスンに参加できる。
3月に開催するウォーキングイベントでは、がん専門運動指導士から直接運動のアドバイスがもらえる。このイベントと5月の高尾山ハイクは、それぞれ参加費が必要。参加費には保険料と記念品が含まれ、ウォーキングイベントは1,000円、高尾山ハイクは3,000円(往復ケーブルカー料金込含む)。登録申し込みの際、オンライントレーニングだけにするか、ほかのプログラムに参加するかは自由に選べる。
ゆる2トレ実行委員会の石野田 神さんは「まずはゆるく動画を見るだけでもいいと思います。数回見て、やってみたいと思ってもらえたら」と語る。集合型レッスンも用意されているので、同じ時間に仲間と一緒に指導を受けながら運動することもできる。
イベント参加で仲間づくりや心理面も支援
トレーニングだけでなく高尾山ハイクを最終目標としたことについて、プログラムを共催し、イベント運営を担当する相澤 美穂子さんは、石野田さんらと実際に下見に行き、「高尾山は登山道も整備されているので、介助があれば階段を登れる人なら安心して挑戦できると思った」と高尾山の魅力を話してくれた。
旅行・観光研究者でもある相澤さんはまた「旅行や山歩きなどで外に出かけることが、がんサバイバーの心理面においてもよい効果があることを実証していきたい」と語る。
職場や社会に復帰するきっかけに
このプログラムを就労支援の立場からサポートする一般社団法人がんと働く応援団代表理事でキャリアコンサルタントの吉田ゆりさんは、職場復帰後の体力不足は深刻な問題で、就労面からもこの取り組みを評価している。
吉田さんは「がんになったことを新たな転機ととらえ、前向きに考えることも大切だと思います」といい、治療後のリハビリとして運動したり人と会ったりすることは社会や職場へ復帰する際のよいきっかけにもなるのではないかと考える。
欧米ではがん治療後の運動プログラムが多く実践されているが、日本では医療保険制度の違いもあり、がんサバイバー向けのリハビリや運動プログラムはほとんどない。これをきっかけに日本でもがんサバイバーが運動指導を受けやすい環境が整うことを石野田さんら関係者は期待している。
(髙倉理恵)
【関連情報】
・ゆる2トレ(HP)
【筆者略歴】
髙倉理恵(たかくら・りえ)
西東京市在住。がんを経験した女性のコミュニティ Colorful Ribbons 代表。西東京市を拠点にがんサバイバー向けのイベントや情報発信を行っている。ひばりが丘団地内ひばりテラス118で定期的に「がんママのためのカフェ」を主催。