「稲門寺子屋西東京」が14年目へ 塾通いしない子らに無料で学習手助け

投稿者: カテゴリー: 子育て・教育 オン 2023年2月18日

 早稲田大学の卒業生の親睦組織、西東京稲門会がボランティアで取り組んでいる小中学生向けの無料の学習塾はユニークだ。経済的な理由などで、学習塾に通ったり家庭教師を頼んだりしていない公立学校に通う小学5年生から中学3年生の子どもたちに会社員やリタイアした人、主婦、大学教授経験者などが無報酬で授業を行っている。進学塾ではないので受験対策ではなく、学校の授業の補習が主な目的で、学習の遅れを補い、家庭学習、自ら問題解決する力を育成している。週に2科目受講でき、教師1人に生徒2人。対話しながら90分の授業を進める。学校の授業とはひと味違う、丁寧でゆったりした手づくりの学びの場である。

 

西東京稲門会寺子屋

コロナ禍で「3密」を避けた寺子屋授業風景

 

■ 地域貢献を目指してスタート

 

 正式名称はNPО法人(特定非営利活動法人)稲門寺子屋西東京。開講は2009年12月だ。01年に田無市と保谷市が合併して西東京市が誕生、稲門会も両市の組織が合併して西東京稲門会になった。その際、「新しい市の発足に合わせて地域に役立つ活動ができないか」との声が挙がり、子どもたちの教育の拡充に貢献しようという案が持ち上がった。08年11月に西東京稲門会の有志が当時の西東京市長と懇談して賛意を得た。準備を重ねて東京都からNPО法人の認証を受け、講師と生徒を募って1年余りで開講した。

 市の施設2カ所を借り、生徒数や教師の数に増減はあるが、23年2月現在、講師が19人、生徒は27人。13年余りにわたって地道に活動を続けている。少人数の授業なので感染対策をしたうえでコロナ禍でも授業をしてきた。

 生徒たちには「先生方の教える熱意を感じてうれしい」「自分のレベルに合わせて教えてもらえるので勉強に興味がわいてくる」などの声が多いという。教える側にも効用がある。ほとんどの講師が60歳以上。無報酬で時間を割くのは大変なことだが、「やりがいがある」「楽しいので、ずっと続けたい」という人たちが多い。

 事務局長の竹森英次さん(72)の担当は数学。教壇に立った経験はない。「算数や数学は覚えるのではなく、公理・定理を自分で考えることが大事。考えるコツを教えて学ぶ楽しさを身に付けてほしい」「算数や数学は苦手と思い込んでいる子どもたちの意識を変えるきっかけにしたい」と話す。

 

■ 手づくりの学びを実践

 

 西東京市田無町5丁目の田無総合福祉センター1階の公共スペースでの授業を見学させてもらった。木曜日の午後5時から国語、英語、数学の授業だった。この日の先生は4人。「挨拶が基本」がモットーで、先生も生徒もそろって挨拶をしてスタート。同じスペースで別々の授業が始まった。

 

田無総合福祉センター

授業会場の西東京市田無総合福祉センター

 

 のんびりとした雰囲気で、それぞれの授業が進む。竹森さんは中学生の女子生徒に図形の授業。対話しながら疑問に答え、分かりにくいところを優しく教えていた。英語の授業では女性の講師が英語の録音を流しながらヒアリングを中心に授業をしていた。

 国語では教材を読みながら言葉の意味や使い方を教え、予備知識や蘊蓄も織り交ぜる。やはり手づくりの授業という印象で、数学が大の苦手だった私は「こういう授業を受けられたら苦手が克服できたかもしれない」と思った。英語と国語の授業も面白そうだった。

 知識や受験のテクニックも大事だが、学びの基礎をゆっくりと伝える授業は生徒のやる気を伸ばすだろう。もちろん基礎学力はきちんと教える。教材は学校で使う教科書や参考書、ドリル、プリントが主役。先生が生徒に合った問題集を支給することもある。

 西東京稲門会の緒方章会長は「大学の地域の校友会を中心に子どもたちに教育支援をするのは稀であると自負している。10年以上続いているのは講師のみなさんの熱意と努力のおかげ。これからも意義ある活動を続けていきたい」と話している。

 NPO法人稲門寺子屋西東京の公式WEBサイトは https://www.terakoya-nt.org/
(中沢義則)

 

中沢 義則
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