グミが実った【Photo歳時記】

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2023年5月31日

 わが家のグミの木が今年もたわわに実をつけた。5年前に鉢植えを買って庭の片隅に植えていたのが、2階の屋根の高さまで育った。

 

グミの木

赤い実が色鮮やかなグミの木

 

 去年はグミ酒を作ろうと思っていた矢先、ヒヨドリが大挙してやって来て、あっという間に一粒残らず食い尽くしてしまった。今年は早めにもいでグミ酒を作ったので、残りはすべてヒヨドリたちに献ずるつもり。

 地方の出身で、市街地でないところで生まれ育った人たちにとって、グミの木はごく身近な存在だった。梅雨時の雨に濡れた赤い実は風情があった。グミの実を見るたびに、学校から帰るとおやつ代わりにグミの実を食べた記憶がよみがえる。食べ過ぎてひどい便秘になったこともある。

 会津の実家の裏に、小川に沿って6本のグミの木があった。1本は渋みのない甘いグミで、「甘グミ」と呼んで好んで食べた。1959年(昭和34年)9月の伊勢湾台風でグミの木がすべて流されてしまい悲しかった。

 人とグミの話をすると、団塊の世代より一世代若い人たちまでは子供のころにグミを食べた経験のある人が多いように感じられる。試みに孫にグミを食べさせたら「まずい。こんなものを食べていたの」と笑われた。

 東京のど真ん中にグミにちなむ地名がある。千代田区永田町1丁目にある茱萸(ぐみ)坂がそれ。首相官邸を背に国会議事堂南側(衆議院側)の塀と国会記者会館、衆議院第2別館に挟まれた道路の緩やかな坂で、潮見坂と霞が関につながっている。地下鉄丸ノ内線・千代田線の国会議事堂前駅の地上出口の前に「茱萸坂」の標柱がある。

 「茱萸坂」の由来は、ここは江戸時代、大名屋敷が立ち並び、道の両側にグミの木があったことにちなむ。
(鈴木信幸)

 

鈴木信幸
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