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大きな争点としての消費税増税問題

By in コラム・百音風発 on 2017年10月7日

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第18回

師岡武男(評論家)
 
 

  今度の総選挙は、入り口の段階で、「政権選択」を目指す野党再編成のドラマが大騒ぎになったが、それが一段落すれば、政策公約の争点に有権者の関心が高まっていくだろう。その一つが消費税増税問題だ。このコラムは、何回か消費税問題を取り上げてきたので、続編として書いておきたい。

 安倍政権が消費税を国政選挙の争点として持ち出したのはこれで3回目だ。1回目は14年12月の衆院選挙、2回目は16年7月の参院選挙。1-2回目は実施の延期だが、今度は増税実施の確認と使い途の変更である。

 それぞれに、選挙で国民の信を問う、というのだが、多くの有権者はその都度「えっ?」と思ったのではないか。増税延期は結構だが、そのために大金をかけて解散総選挙をする必要があるのか。参院選挙直前の再延期は「よくやったね」と。だが、これらは、与野党間の争点にはなっていない。

しかし3度目の今回は違う。国民の間に「やっぱりやるのか」という失望感や「それにしても2年先の政策変更で「なぜ今解散総選挙か」という疑問があるだけでなく、野党は対案を出して争う。本物の争点だ。

 安倍政権としては、今度も延命戦略として決断したのだろう。増税分を少子高齢化対策にも使うと変更したことが、得点になるとみているかもしれない。だが恐らく、あまり評価はされないだろう。肝心なことは、増税確認なのだから。

 しかも、今回の使い途変更案で驚かされたのは、これまで政府が言っていた「消費税は全額社会保障に使う」という決まり文句が大嘘だったことだ。2%の増税分は5兆円強になるが、社会保障費の増額に使われるのは5分の1だけで、残り4兆円強は借金返済に使う、と国民に約束していた、というのだ。そんな約束を何時どこでしたのかを、私は知らなかった。

 その約束なるものを「変更して国民生活に関わる重い決断を行なう以上、速やかに国民に信を問わねばならない」から衆院を解散する、という。空々しくてあきれるばかりだが、ともあれこの政策公約の意味する内容は、国民生活にとって重要だ。

 今度こそ消費税増税を実行される。社会保障や幼児教育無償化などの「人づくり革命」に2兆円使うが、残り3兆円はやはり国民に還流されずに、借金返済でデフレ要因となる。社会保障費は、年金・介護を充実すると言うが、財政全体の健全化のために「歳出改革を徹底」の枠がある。

 改めて、消費税とはなんぞや、を考えてみよう。消費税導入以来現在までの収入総額は、所得税・法人税の減税額とほぼ同額になる。税率が5%に増えた97年以後20年間の国民所得はほぼゼロ成長で、消費抑制のデフレ経済。社会保障費は、自然増加分を抑制するための制度改定が続いている。

 つまり、消費税とは、税負担を応能負担から大衆負担に切り替えながら、「小さな政府」として社会保障費を抑制し、経済活動はゼロ成長のまま優勝劣敗の競争市場に任せる、という新自由主義の大黒柱だった。今後もその政策を続けるか、転換するかを決めるのが、この総選挙だ。

 こう考えると、消費税増税問題は、日本経済の今後を左右するほどの極めて大きな争点である。そもそも消費税増税と社会保障抑制の一体改革政策は民主党政権が決めたものだ。安倍政権があえて持ち出したこの争点に対して、野党は率直に民主党政権の誤りを認めて、増税の中止あるいは凍結を掲げて戦うべきだろう。(了)

 

 

【筆者略歴】
師岡武男(もろおか・たけお)
 1926年、千葉県生まれ。評論家。東大法学部卒。共同通信社入社後、社会部、経済部を経て編集委員、論説委員を歴任。元新聞労連書記長。主な著書に『証言構成戦後労働運動史』(共著)などがある。

 

 

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