パワハラ受けた20%、セクハラ3.5%、マタハラ1% 西東京市の職場環境改善・見直し検討報告 前教育長の疑惑は「指導の範囲内」

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙 オン 2017年8月24日

 西東京市議会の全員協議会が8月23日に開かれ、前教育長のパワーハラスメント疑惑を契機にあらためて実施された市職員対象の全庁アンケート結果が報告された。最近3年間でパワハラを受けたと回答した職員は137人、約20%に上った。セクハラは3.5%、妊娠・出産・育児休業に関する嫌がらせ、いわゆるマタハラは約1.0%だった。教育委員会の個別ヒアリング結果も併せて報告された。疑惑の有無や実態は具体的に記載されなかったが、池澤隆史副市長は「指導の範囲内」と述べた。

 パワハラ疑惑を受けて今年2月に西東京市職場環境等調査委員会(委員長・池澤隆史副市長)が発表した調査報告では、職場環境の改善が必要、相談窓口の機能が不十分と指摘された。今回は調査委員会の下に設けられた職場環境等改善・見直し検討部会(部会長・櫻井勉総務部長)が教育委員会職員の個別ヒアリングと全庁アンケート調査を実施した。

田無庁舎

西東京市役所の田無庁舎

 

全庁アンケートから

 全庁アンケートは5月31日から6月12日までの約2週間、再任用短時間勤務を含む常勤一般職1045人を対象に実施され、686人の回答があった。回答率は65.6%だった。

 最近3年の間に「パワハラが疑われる言動を受けた」との回答について報告は「厚生労働省の平成28年度調査の全国平均(32.5%)を下回るものの137人(約20%)の回答があったことを重く受け止め、全庁挙げて改善に取り組む」としている。

 パワハラ、セクハラなどの行為者は「上司または先輩」「同僚」が上位。相談窓口の認知度は「窓口を知らない」53%、「知っているが相談しにくい」33%となり、窓口は”遠い存在”だった。

 一方、職場の雰囲気は「大変いい・いい」が約82%、職場のコミュニケーションも「非常に満足・満足」約75%だった。

 報告は改善策として、「組織のトップが『ハラスメントをしない・許さない』メッセージを発信し、職場作りに取り組む」と述べ、丸山浩一市長が5月にいち早く「健康・イクボス・ケアボス宣言」を表明したことを挙げた。その上で特別職には弁護士や社会保険労務士ら専門家による研修を実施し、ハラスメント予防・対応マニュアルを見直すなどとしている。

 全庁アンケート調査に関する議員の質問は、パワハラ、セクハラなどに関連する内容が目立った。大竹あつ子氏(共産)は「ハラスメントを受けたとの回答があるのに、これを救わなければ何の調査か」と質し、後藤優子氏(生活者ネット)は「回答率65%は低すぎる。実数データも欠けている。前回報告にアンケート用紙(質問項目)が付いていたのに今回ないのはなぜか」などと質問し、ともにパワハラ対策と共にセクハラ対策も求めた。

 パワハラを受けたという137人、約20%は実数とパーセンテージが揃っているが、ほかの数字に逆算した実数データを補うと、セクハラ約3.5%は24人、マタハラ約1.0%は6~7人となる。

 市側は「匿名調査なので個別のケースを特定できないが、アンケートに相談窓口を記載して、実際の相談につなげるように努めた」「厚生労働省のマニュアルによると、この種の調査の回答率は50%が目安となっている。しかし100%に近い回収率が望ましいので、調査期間や周知徹底、パソコンを通じて行う現行の調査方法を今後検討したい」「分かりやすさを求めてパーセントや数字を使った。アンケート結果を載せているので詳細は省略した」「セクハラ、マタハラなどを相談窓口に結びつけていきたい」などと答えた。

 今回の調査対象は常勤職員だけ。職員課によると、2016年4月現在の非常勤職員は嘱託579人、臨時617人の計1196人。常勤職員を超える人数だった。後藤氏や森輝雄氏(無所属)らから「弱い立場の非常勤職員をなぜ外したのか。実態を調べるべきだ」との声が上がった。市側は「非常勤職員は今回、調査期間が短い上、パソコンを通じての調査だったので使える環境にない職場にいた方も多くて対応が間に合わず、対象にしなかった。今後検討したい」と答えた。

 

教育委員会個別ヒアリングから

 

保谷庁舎

西東京市教育委員会が入っている保谷庁舎

 

 全庁アンケートと共に、教育委員会の一般職員、管理職計43人に対して実施されたメンタルヘルスカウンセラー2人による個別ヒアリング調査結果も報告された。

 ヒアリング結果や改善策を差し置いて、報告の冒頭に記載されたのが、同カウンセラーの「コメント」だった。そこでは前田哲・前教育長のパワハラ疑惑に関連して「ヒアリングでは率直に話を聞けたと感じており、今後も引き続きフォローが必要な様子の方は特にいなかった」と指摘。その上で「(前教育長は)管理職以外の職員には優しい態度だったが、管理職には仕事に対する要求が厳しい様子がうかがわれた」「背景には教育行政への熱い思いと学校現場を第一に考え、妥協を許さない仕事への姿勢がヒアリングを通して感じられた」とした。

 調査の目的は職場環境の改善・見直しとされたが、質問はパワハラ疑惑に集中した。
 納田さおり氏(無所属)は「このコメントは、パワハラの事実がなかったということか」と質した。
 池澤副市長は「今回の調査結果から見えてきたのは、前教育長は教育行政に熱い思いがあり、学校現場第一に考えて管理職の指導に当たってきたことだと思う。それがパワハラに当たるかどうかについては、カウンセラーのコメントで『今後も引き続きフォローが必要な職員はいない』とのことなので、厳しい指導は確かにあったが、『(業務の適正な)指導の範囲内』ではないかと感じている」と述べ、前教育長の言動は「パワハラに当たらない」との判断を色濃く滲ませた。

 これに対して小峰和美氏(みらい)は「パワハラはないというけれども、保谷七緒美議員が本会議場で疑惑があると指摘した。確証を持って発言したと思う。彼女の名誉のためにも、疑惑をはっきりさせるべきだ。うやむやにしてはいけない。これで幕引きにしてはいけない」と述べた。

 浅野高司氏(自民)は前教育長が辞めた当日、部屋で荷物を整理しているところを訪ねて話したとのエピソードを明らかにしながら、「私は教育委員会事務局の幹部から(パワハラの話を)聞いている。パワハラはあったと思っている。『(疑惑は)ない』『知らない』などと事態を軽視しないで、当事者から話を聞けばいい。やった人、やられた人、側にいた人がいるんだから」と話した。

 前教育長へのヒアリングに関して中尾根敬一職員課長は「市長が(疑惑指摘直後に)既に聞き取りをしているので、新たには聞いていない」と答え、白井清美総務部参与は「当時の教育委員会の事務局幹部を含めてすべての職員からヒアリングした」と述べた。

 浅野氏はさらに「パワハラがないんだったら、前教育長は辞めなければいい。辞めた理由は何か」と質したのに対し、池澤副市長は「『一身上の都合』だった」と答えると、議員席から声が上がった。浅野氏は「再調査していただきたい」と述べて、質問を終えた。

 引き続いて稲垣裕二氏(自民)は「2月の前回報告の無記名アンケートで、『業務の適正な範囲を超え、人格、尊厳を侵害する言動があったと感じたか』との問いに8人の職員が『感じた』と答えている。ところが今回の対面ヒアリングではそういう答えは出てきていない。(この違いを)どう考えているか」と説明を求めた。

 白井参与は「無記名アンケートでの職員の主観的な感情は否定できないけれども、その行為が『業務の適正な範囲』を超えたかどうかは明らかでないため、セクハラの認定は出来ないと考えている。しかしそう感じた職員がいるということを重く受け止め、職場環境の改善策を作った」と答えた。

 発端は2016年の12月議会本会議。保谷七緒美氏(自民)が前田哲・前教育長を名指しで「パワハラ疑惑がある」と追及したことだった。同月末に前田氏は辞任。以後、真相究明を求める百条委員会設置の動議が2度にわたって否決された。市側は職場環境改善に取り組むための委員会を設置、調査を実施していた。

 全員協議会の冒頭、丸山浩一市長が今回の報告に触れ、「職場環境改善について、市のトップとして『ハラスメントはしない、許さない』とのメッセージを発し、働きやすい環境づくりに取り組む」と決意を明らかにした。

 新任の木村俊二教育長も「教育行政のトップとして、職場環境の改善は重要な課題と認識している。ハラスメントは職場環境を悪化させ、職員の円滑な事務執行に重大な支障を来し、結果として教育行政の停滞を招くと考えている。着任後、『健康・イクボス・ケアボス宣言』に署名し、管理職に対して職場環境改善に取り組むよう指示した。全職員にメールを配信し、宣言と教育長の考えを周知した」などと述べた。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・西東京市職場環境等調査委員会調査報告書の公表について(平成29年2月)(西東京市Web
・職場のパワーハラスメントについて(厚生労働省

 

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パワハラ受けた20%、セクハラ3.5%、マタハラ1% 西東京市の職場環境改善・見直し検討報告 前教育長の疑惑は「指導の範囲内」」への3件のフィードバック

  1. 片岡義博
    1

    これは数字の多寡よりも、報告書の中の実際の事例を見たほうが面白い。ハラスメントの定義は難しく、「こんなことがパワハラになるの?」「パワーとは関係ないんじゃないの?」とつっこみどころが満載だ。アンケートの中身も大事だが、アンケートを実施することによる啓蒙効果が大きいと思う。そこに意識が向くというだけでハラスメントの軽減につながるような気がします。

    • 2

      ご指摘、ごもっともです。ところが、記事中で実数を補わなければならなかっただけでなく、報告書に具体例は記載されていませんでした。記載があってもあまりに具体的だと、逆に特定可能という理由で伏せられる恐れも(笑)。

  2. 3

    全庁アンケート調査の項で、足りなかった議員の質問を一部補い、市側の答弁も補足しました。(編集部)

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