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コーチ処分は重すぎる 協会からパワハラ受けた 宮川紗江選手が記者会見

By in 芸術・文化 on 2018年8月30日

「 速見コーチの処分は重すぎる」 と訴える宮川選手。
左隣は山口政貴弁護士

 西東京市出身で体操女子の宮川紗江選手(18)が8月29日、東京・霞ヶ関の弁護士会館で記者会見を開いた。指導していた速見佑斗コーチ(34)が宮川選手に暴力を振るったとして、日本体操協会が無期限の登録抹消処分にしたのは「余りにも重すぎる」と処分の軽減を求めた。そのうえで協会役員の言動を挙げ、処分絡みだけでなく選手強化をめぐる具体例も列挙して「パワーハラスメントを受けた」と訴えた。日本体操協会は同夜開いた記者会見で「正式の申し出があれば調査する」と対応を約束した。

 宮川選手は会見の冒頭で、「私自身の言葉でしっかりと、真実を語るために記者会見を設けてもらい、今日この場に来ました。何日も自分の気持ちと向き合い考えてきた。嘘偽りなく話したい」と処分関連の事実経過を話し始めた。

 

「パワハラの事実を素直に認めてほしい」

 

 速見コーチとは小学5年から8年以上指導を受けてきた間柄。一緒にオリンピックの金メダルを目指してきた。「力を抜いたり、気持ちが入らず練習を投げ出したりしたとき、けがになりやすい。速見コーチはそんなとき厳しく指導した。本気で伝えたいという気持ちが、暴力になったのだと思う。しかし今は、暴力は決して許されないと理解している。今後、暴力行為を許すつもりもない」と話した。

 処分報道には「ダメージとショックを受けた」。「馬乗りになって叩かれたことはありません」「髪の毛を掴まれて引きずり回されたことも一度もありません」と訴え、「叩かれてけがをしたり傷付いたりしたこともない」と過剰報道や誤報を指摘した。

 処分に関しては「身の回りで起きた納得できない事実」を淡々と話した。
 7月15日の代表合宿の前、体操協会の女子専任コーチから速見コーチに電話があり、「合宿には参加出来ない」と告げられた、という。

 合宿初日の15日、宮川選手は練習中に突然呼び出された。部屋に入ると塚原千恵子常務理事(女子体操強化本部長)と夫の塚原光男副会長が待っていた。2人は速見コーチの暴力問題を取り上げた。「あなたが認めないと、あなたが厳しい状況になる」「速見コーチが除外されたあと、あなたが一番困る。私はあなたの味方よ」「あのコーチはダメ。だからあなたは伸びない。コーチのせい。私なら速見コーチより100倍教えられる」と繰り返された。それでも宮川選手は「他の人が証言しても、私は証言しません」と答えた。

 どうしたいか聞かれたので、「ずっと前から目標に向けて速見コーチと計画を立て頑張ってきた。(コーチは)怖くて何も言えない先生ではなく、自分の考えを言える先生です」とはっきり主張した。「これからも家族と共に先生を信頼して一緒にやっていきます」とも言った。

 ところが…。返ってきたのは「家族はどうかしてる。宗教みたいだ」との「高圧的な言葉」だった。遣り取りの中で「オリンピックにも出られなくなるわよ」とまで告げられた、と言う。

 

「私は純粋な気持ちで体操に打ち込み、純粋にうまくなりたい、強くなりたい」

 

 「納得できない事実」はさらに続いた。
 合宿の終わり近い7月20日、強化本部長の「付け人」から「速見コーチと今後練習できなくなる。朝日生命(体操クラブ)ならできる。ナショナルトレーニングセンター(NTC)に専任コーチも来てくれる」と言われた。朝日生命体操クラブは有力な体操団体の一つ。塚原光男副会長が「校長」で、妻の塚原千恵子強化本部長は「副校長」。五輪に出場するなどトップ選手が所属してきたことで知られる。

 合宿最終日の21日、「朝日生命の寮が一つ空いているから使っていい。朝日生命は近いし、そこで練習すれば本部長もいる」と言われ、専任コーチの電話番号を渡された。

 速見コーチの事情聴取は7月30日。処分公表は8月15日。聴取も処分も明らかになっていない段階で、周辺は手回しよく動いているように見えた。宮川選手は「過去の暴力を問題にして最初から速見コーチを排除し、朝日生命に入れる目的なのだと確信に変わりました」と当時の心境を語った。

 宮川選手はその後思うように眠れなくなり、頭痛が治まらない状態がいまも続いて「練習できる状態ではない」と言う。このため代表候補になっている世界体操競技選手権大会や合宿、全日本シニア体操競技選手権大会などの出場を辞退。「すべてをやり直し、速見コーチとともに再スタートを切り、努力して必ず復帰したい」と語った。

 協会側のハラスメントは「2020東京オリンピック特別強化のための強化指定選手制度」参加申し込みをめぐっても続いた。説明会に出てみたが、内容が不明で、コーチも未定。任意参加制なので、宮川選手は申し込込まなかった。ところが再三、参加するよう働きかけがあった。

 あるとき塚原本部長から電話があり、「申し込まないと協会は協力できない。オリンピックに出られなくなる」とまで言われた。NTCの使用制限も受けた。このため宮川選手は今年6月に参加申し込みしたが、いまは脱退を希望しているという。「私はナショナル強化選手なのにこの2年間、海外派遣の対象になっていない」とも述べた。

 「言うことを聞けば優遇し、聞かないと排除する。権力があればすべて許されるのか。選手はみんなが平等な権利を持ち、納得のいく基準で選考され、先の描ける具体的なプランを望んでいる。パワハラの事実を素直に認めてほしい」と協会側に望み、「私は純粋な気持ちで体操に打ち込み、純粋にうまくなりたい、強くなりたい」と話した。

 宮川選手は最後に「私はまだ18年しか生きていませんが、いま人生の中で一番勇気を出してここに立った。願いが届くことを願っています。これから苦しい状況に立つかもしれませんが、逆境にめげず、自分の信じた道で、もっとよい選手になりたい」と結んだ。

 速見コーチは処分に関して、東京地方裁判所に地位保全の仮処分を申し立てている。

 

「暴力行為は許されない」と語る山本宣史専務(左端)

隣の弁護士2人と折々相談、助言を受ける

 

 日本体操協会(二木英徳会長)は同日午後7時、協会会議室で臨時会見を開いた。山本宣史専務理事は速見コーチの処分について、「たとえ被害者が許容したとしても、暴力は許されない。協会は繰り返し暴力撲滅のために努力してきた。考えは変わらない」と述べた。

 同時に速見コーチの行為を2013年から年を追って列挙。「暴力を繰り返し、指導者や選手への影響もあり処分した。ただ登録を抹消されても、ナショナルトレーニングセンターなどは使えないが、宮川選手の指導はできる」などと説明した。

 強化本部長らのパワハラ行為については「宮川選手から正式に申し立てがあれば、協会として調査する」と答えた。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・日本体操協会(HP

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