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「スリバチウォーキング」で凸凹を体感 南沢湧水群周辺の風景を楽しむ

By in みどり-環境, 学ぶ, 楽しむ on 2019年5月21日

黄菖蒲が満開

 真っ青な空にウグイスの鳴き声。流れに沿って広がる黄菖蒲の群生。カルガモのつがいが水を浴び、カワセミが飛び立つと歓声があがる-。東久留米市の落合川沿道、南沢エリアを散策する「スリバチウォーキング」は、都内とは思えないのどかな風景と土地の凹凸を体感するひとときだった。

 これは大型連休最終日の5月6日に開催された「PARCOスリバチウォーキングVol.2」。昨年11月のひばりが丘PARCO25周年記念イベントに続き、多摩武蔵野スリバチ学会の真貝康之会長が案内役。約7キロを2時間余りで歩く、前回より少し長めの散策ルートだった。

 

スリバチ地形をたどる

 

 スリバチ地形とは4方向を囲まれた窪地とその周辺を指し、窪みの底には河川が流れていることが多い。スリバチ学会はその凹凸地形を楽しむ会である。NHKテレビの人気番組「ブラタモリ」にも出演した真貝さんの声は、貸し出されたレシーバーを通して参加者全員に届く。かなりのスピードで歩きながらの説明は、息切れもなく淀みない。約30名の参加者は、速足の真貝さんに遅れずに着いていく。

 

学園町の由来を聞きながら歩く参加者

 

 今回のルートは、西武池袋線ひばりヶ丘駅前のPARCOを出発して西に進み、東久留米市の学園町を抜けて南沢2丁目笠松坂の庚申塔を見学。立野川源流付近や南沢湧水群のいくつかの湧水点を確認して南沢氷川神社へ。さらに西に進み、中央町の庚申塔へ。東へ折り返して落合川沿道を進み、多聞寺を訪問。本町の庚申塔と常夜燈を見て南下。竹林公園を抜け、戦争遺産である武蔵野鉄道引き込み線跡地のたての緑道を通ってPARCOに戻る。

 

3カ所の庚申塚

 

 当日3か所の庚申塔を回った。南沢2丁目の庚申塔(元禄7年、1694造立)、中央町の庚申塔(享保18年、1733造立)と石橋廻国供養塔(宝暦10年、1760造立)、そして東久留米市有形民俗文化財である南沢1丁目の庚申塔(宝暦7年、1757造立)と常夜燈(文化元年、1804造立)である。

 

南沢2丁目の庚申塔

中央町の庚申塔

花が供えられた本町の庚申塔と常夜燈

 

 立て看板の案内によると、庚申信仰は、60日ごとの庚申の日の夜、眠っている人の身体から三尸(さんし)という虫が抜け出てその人の罪を天帝に報告しに行くとされていることから、それを避けるために夜通し眠らないで天帝や猿田彦や青面金剛を祀り、儀式や宴会をして過ごす風習だという。

 江戸時代中頃から庚申塔や供養塔の造立が盛んになったとされ、後には道標にもなったという。約200年から300年前の江戸の人びとが集まり、儀式や宴会を開いたと聞くと、当時はどんな風景が広がっていたのだろうかと想像が膨らんだ。

 

湧水群から多聞寺、たての緑道へ

 

 南沢氷川神社は、落合川上流の東久留米市「南沢緑地保全地域」の湧水地の高台に位置し、神社のホームページによると湧水守護神として崇められているとのこと。前後に川が流れる境内は、清々しく凛とした空気が漂っていた。

 

氷川神社を参拝する参加者

狛犬とご神木

南沢緑地には水遊びを楽しめる浅瀬もあり、夏にはこどもたちの歓声が響く

 

 南沢緑地と竹林公園の湧水は「東京の名湧水57選」にも選ばれており、その湧き水の流れは本当に美しい。落合川では蛍の餌になるカワニナを真貝さんがいち早く発見。一緒に参加した友人によると、30年ほど前の落合川はそれほど綺麗な川ではなかったという。河川改修で一部は直線化されたが、自然な蛇行部分も残され、河川を浄化する努力の結果だろうか。竹林公園は孟宗竹に囲まれた静寂な雰囲気で、たまの突風に竹と竹が擦れあって出す不思議な音が響いていた。

 

欅づくりの多聞寺山門

欅を落合川に流して江戸に運び彫らせたと伝えられている獅子

 

 多聞寺の山門は、江戸時代の嘉永5年(1852)ごろの建立。四脚門で、総造、獅子頭や海老虹梁の彫り物も立派だった。天保年間(1830~43)に村の欅を寺の前の落合川に流して江戸に運び、獅子の彫刻を彫らせたとも伝えられていると看板にある。河川は人々の生活の基盤であり、物資の運搬にも重要な役割を果たしていたことに思いをはせた。

 たての緑道は、昭和19年武蔵野鉄道(現西武池袋線)東久留米駅から旧中島航空金属田無製造所(現住友重工業田無製造所=西東京市)へ敷設された鉄道引き込み線跡の一部。東久留米市HPによると、当時、中島飛行機武蔵製作所(武蔵野市)の関連会社であった同製造所へ、小型蒸気機関車が貨車を引いて軍用機エンジンを作るための原材料を搬入していた。

 

花も景色も美しい

 

 真貝会長のお話は、マンホールから、地形、町の成り立ち、歴史、川に住む鳥や生物、環境など多岐にわたり、参加者らも起伏の多い行程を歩きながら、熱心に耳を傾け、積極的に質問していた。この地域で育った人、長く住んでいる参加者も多く、歴史や変遷、庚申塚の移動などの話を聞くこともできた。

 

中央町の庚申塔脇に咲くテッセン

落合川を泳ぐカルガモ

ウォーキングの帰り、沈みゆく夕陽

 

 散策で見かけた花の美しさも忘れられない。学園町沿道のツツジ、個人宅の庭で育てられたバラ、庚申塔の脇に咲くテッセン、川辺に群生する黄菖蒲、風に揺れる麦穂など、写真を撮っているとついついグループから遅れがちとなったが、その美しさをカメラに収めずにはいられなかった。

 

それぞれの楽しさを見つけに

 

 スリバチウォーキングを知る前の筆者は、自転車をよく利用するため町中の高低差を疎んでいた。しかし凹凸を歩く楽しさを知ると「下り坂はすりばちの底に降りて行っているんだ」とか、「この上り坂はすりばちから上っている証拠」など、その高低差を体感することが逆に楽しみになった。

 スリバチウォーキングの楽しみは人それぞれだろう。町の地名、歴史、由来を知る。神社や江戸時代の建造物、明治・昭和の遺産と出会う。四季の花々に彩られた風景を楽しみ、川を渡る風、音、清々しい空気など、五感で自然を感じる。なにも考えずただただ歩く。あるいは、水との共生、環境、自然などを考えるきっかけになるかもしれない。

 蚊のでる季節には長袖、長ズボン、虫よけが必須だが、それぞれの楽しさを見つけに、スリバチウォーキングに出かけてみませんか。
(卯野右子)

 

【関連リンク】
・多摩武蔵野スリバチ学会(facebook

 

【筆者略歴】
 卯野右子(うの・ゆうこ)
 西東京市新町在住。金融会社勤務。仕事の傍ら「アートみーる」(対話型美術鑑賞ファシリテーター)「みんなの西東京」「放課後カフェ」の活動に参加。東京藝術大学で「アートX福祉」を履修し、2019年4月より東京都美術館のアートコミュニケーターとして人と美術館を繫ぐ活動を開始する。

 

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4 thoughts on “「スリバチウォーキング」で凸凹を体感 南沢湧水群周辺の風景を楽しむ

  1. 穂坂 晴子
    1

    素敵な記事ですね。写真もとても効果的に使ってます。疲れた時、ほっとし、わ、行ってみたいと思う記事ですよ。今度ぜひご案内ください。(^^♪
    ひばりタイムスの1番記事にこういうのがのるのもいいですね。
      ご無沙汰してます。相変わらず日々に追われてる穂坂です。
      でも必要な忙しさだと半ば思いつつ。

    • 2

      穂坂さま、コメントありがとうございます
      急な暑さの到来、ご自愛くださいませ!うの

  2. 3

    西東京市在住ですが、ステキなレポート有難うございました。知っていたら参加したでしょう。
    次回の予定を教えてくださいませんか。

    • 4

      アキラさま、こちらのコメントに本日気が付きました。返信に5か月以上もかかってしまって本当に申し訳ございません。

      こちらのスリバチウォーキングは、ひばりが丘PARCOの周年記念や文化祭などの関連イベントとして開催されましたので、同店のHPを参照なさってくださいませ。(11月2日にも開催されましたが、お知らせが間に合わずごめんなさい。来年の初夏に開催されることを祈りつつ・・https://hibarigaoka.parco.jp/page/bunkasai/)

      東京スリバチ学会や多摩武蔵野スリバチ学会は、定期的にスリバチウォーキングを実施しています。以下のFacebookやTwitterで確認できます。

      東京スリバチ学会 https://www.facebook.com/東京スリバチ学会-244418162281909/
      多摩武蔵野スリバチ学会 https://www.facebook.com/tamamusashinosuribachi/

      11月17日、日立製作所中央研究所の公開日に合わせて開催の新潮講座・国分寺篇も良さそうですね。

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