サルバドール・ダリの世界に浸る 角川武蔵野ミュージアムで体感型ダリ展始まる

投稿者: カテゴリー: 文化 オン 2023年12月24日

 スペインに生まれ20世紀のシュルレアリスムを代表する芸術家サルバドール・ダリの世界を360度の映像で映し出す「サルバドール・ダリ - エンドレス・エニグマ 永遠の謎 - 」が12月20日から角川武蔵野ミュージアムで始まった。24万人が訪れた「ファン・ゴッホ - 僕には世界がこう見える - 」に続く巨大映像空間に没入する体感型デジタルアート劇場第3弾。ダイナミックな映像と音で再現された幻想的なダリの世界を、自由に歩きまわったり座ったりして鑑賞できる展示となっている。

 

ダリ展

第3会場の展示風景より ©角川武蔵野ミュージアム

 

 特徴的な口ひげを持つユニークな風貌、奇妙で超自然的なものへの執着、彼のミューズであり協力者でもあった妻のガラへの愛情、多岐にわたるメディアでの活動など、ダリのさまざまな側面に焦点を当てた映像によって、ダリの独特な世界へと誘われる。

 

ダリ展

第1会場「体感型デジタルアート劇場」の展示風景より 壁と床にひろがるダリの世界
CreativeDirection:GianfrancoIannuzzi
Createdby:GianfrancoIannuzzi–RenatoGatto–MassimilianoSiccardi
KCMEditing:RinoTagliafierro
Production:CulturespacesDigital®

 

 体感型デジタルアート劇場の制作に際し、イマーシブアートの先駆者であるGianfranco Iannuzzi(ジャンフランコ・イアヌッツィ)氏が、第2弾「ファン・ゴッホ」展に続きクリエイティブディレクターとして映像と音楽を担当。イマーシブアート(没入型アート)とは、音響効果と壁面や床面に投影される映像を組み合わせて名画を再現する。鑑賞者はその空間内を自由に歩き回ることができ、音と映像によりあたかも全身で名画の世界に入り込んだような体験が可能だ。

 

ダリ展

Gianfranco Iannuzzi氏が手掛けたイマーシブアート作品

 

 第1会場「ダリを、歩く、感じる、浴びる」には、32台の高輝度プロジェクターで組み合わせた映像が、1100 ㎡以上の大空間、壁面と床面すべてに映し出される。絵画のみならず、版画、彫刻、オブジェ、舞台芸術、宝飾デザイン、広告、映画、執筆と幅広く活動したダリの作品がコラージュされ、ダリの生涯を辿る構成だ。

 ダリは古典的な技術を用い、斬新な絵作りに挑戦、新しい創造を展開した。メディアを通して自分自身をプロデュースし天才としてのイメージを打ち出した。角川武蔵野ミュージアムアート部門ディレクターの神野真吾(じんの・しんご)氏は「もしダリが生きていたら、彼の多岐にわたる創作や作品を使い、プロジェクションマッピングで自分の作品を動かしていたかもしれない」と語った。全身で味わう鑑賞体験は、「ダリが何をやろうとしたのか、世界をどう捉えどのように向きあってきたのか、その変遷を伝えるに適したメディアで、今を生きる多くに人にダリの本質に近づいてもらえるのでは」と考えている。

 全12幕、35分からなる映像は、英国のロックバンド「ピンク・フロイド」の楽曲が全編に鳴り響き、同時代を生きた前衛的なミュージシャンの13曲とダリの芸術作品とのマッチングもみどころ。神野氏によると「新しいサウンドとテクノロジーで音楽の可能性を広げたピンク・フロイドと、様々なジャンルを横断しメディアとの新しい関係性を切り開いたダリの、新しいことに挑戦しそれぞれの領域を拡張した類似性」が、Gianfranco Iannuzzi氏がピンク・フロイドを起用した決め手だったと語った。

 

ダリ展

第1会場「体感型デジタルアート劇場」の展示風景より
CreativeDirection:GianfrancoIannuzzi
Createdby:GianfrancoIannuzzi–RenatoGatto–MassimilianoSiccardi
KCMEditing:RinoTagliafierro
Production:CulturespacesDigital®

 

 第1会場から第2会場に向かう細長い空間は、言葉の回廊となっている。ダリの残した数々の言葉が自伝から抜粋され、天井からつるされた布や壁に展示されている。「シュルレアリスムとは、つまり私のことだ!」「天才を演じつづけよ。そうすれば、おまえは天才となるのだ!」など、奇想天外なダリの言葉を全身で浴びる仕掛け。

 

ダリ展

言葉の回廊 ©角川武蔵野ミュージアム

 

 第2会場「永遠の謎 ダリ!ダリ?」では、年表でダリの生涯を辿る。第1会場でダリの生涯や作品に感覚的に接してから、学ぶコーナーとして第2会場が設けられた。ダリの故郷スペインのフィゲラスにあるダリが設計や内装を手掛けたダリ劇場美術館や、当時のパリの劇場をイメージした空間となっている。

 

ダリ展

第2会場「永遠の謎ダリ!ダリ?」の展示風景より ©角川武蔵野ミュージアム

第2会場「永遠の謎ダリ!ダリ?」の展示風景より ©角川武蔵野ミュージアム

 

 第3会場は、会場入り口のホワイエで、無料エリアのフォトスポットだ。ダリの有名な作品《記憶の固執》、《聖アントワーヌの誘惑》が壁に展示され、半分に割れた卵の殻の模型に入って写真も撮れる。

 

ダリ展

第3会場の展示風景より ©角川武蔵野ミュージアム

 

 神野氏は、今回の展示は「アートの初心者にも楽しんでもらえる内容」となっていると言う。今まで美術館に行ったことのない初心者や若年層、また、こどもが騒ぐので美術館に行きにくいという家族にも気軽に来てもらえるような場とコンテンツを提供できれば、アートへの入り口として機能しアート層が広がると期待する。

 一方で、美術に詳しい層にもアピールできると、角川武蔵野ミュージーアムプロデューサーの今井久(いまい・ひさし)氏は考える。Gianfranco Iannuzzi氏がダリの研究を重ね、どの作品を用い、何を繋いでどう見せるのか、また固有の会場をどう活かすのか、など、考え尽くされた章立てと構成になっていることが、ダリをよく知る鑑賞者にも十分楽しんでもらえる内容、と自信を見せた。

 角川武蔵野ミュージアムは、図書館・美術館・博物館が融合した文化複合施設で、メインカルチャーからポップカルチャーまで多角的に文化を発信する。神野氏は「High(高級芸術・メインカルチャ―)とLow(大衆芸術・ポップカルチャー)、つまり名画作品とアニメ・漫画・ゲームなどのサブカルチャーを別々のものとして分けて享受するのではなく、生活の中に息づく同じ人間の営みとして関わり繋がることで、新しい創造が生まれるのではないか」と語った。
 2024年5月31日まで開催。

 

ダリ展

第1会場の展示風景より
CreativeDirection:GianfrancoIannuzzi
Createdby:GianfrancoIannuzzi–RenatoGatto–MassimilianoSiccardi
KCMEditing:RinoTagliafierro
Production:CulturespacesDigital®

角川武蔵野ミュージアム

隈研吾設計の角川武蔵野ミュージアム外観

 

【展覧会概要】
サルバドール・ダリ ― エンドレス・エニグマ 永遠の謎  ―
Salvador Dali – Endless Enigma

会期:2023年12月20日(水)~2024年5月31日(金)
会場:角川武蔵野ミュージアム1階 グランドギャラリー
住所:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 ところざわサクラタウン内
開館時間:日~木10:00~18:00/金・土 10:00~21:00 ※最終入館は閉館の30分前
休館日:第1・3・5火曜日
料金:一般(大学生以上):2,500円/中高生:2,000円/小学生:1,300円/未就学児:無料
●オンライン購入(https://tix.kadcul.com/)・当日窓口購入

 

【関連情報】
・展覧会公式サイト(角川武蔵野ミュージアム
・Gianfranco Iannuzzi(ジャンフランコ・イアヌッツィ公式サイト

 

 

卯野右子
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