バッタやコオロギ捕まえた 小学生たちと第5回「サマースクール」
西武新宿線田無駅北口から徒歩10分の旧東大農場(西東京市緑町)で7月23日、「東大農場・演習林サマースクール2019」が開かれた。2015年から始まり今年で5回目。「東大農場・演習林」サマースクール2019実行委員会、東京大学生態調和農学機構、多摩六都科学館らが主催。小学3年~6年生と保護者、スタッフら45人が果樹園や水田、草っぱらでの体験やミニ講座を楽しんだ。(写真:原っぱにバッタがたくさんいたよ)
果樹園、水田、草っぱらで体験
旧東大農場は約30ヘクタールあり、研究用の水田、畑、果樹園や演習林など広大な自然が残されている。
午前9時30分、あいにくの雨の中、学生宿舎前で開会式が行われた。各団体に続いて実行委員会の田中敏久委員長が「ここは東京大学の研究施設。今日は普段は見ることができない場所の案内も、大学とスタッフが準備しました。安全に気をつけて楽しんでください」と挨拶した後、2つのグループに分かれて果樹園に向かった。
林道を抜けると畑や草原、演習林、果樹園などがひろがり、「北海道みたい」という参加者もいた。
果樹園の中で技術職員が「葡萄は世界中でつくられているけど、食べるのは10のうち3つ。残りの7つは何につかわれるのか知っている人はいますか?」。さっそくクイズだ。答えは、ほとんどがワイン用。植え棚を組んで苗木を広げていくのは日本式。ヨーロッパは垣根仕立てが多い。巨砲やマスカットは日本で開発したそうだ。豆知識も増える。葡萄の試食もあった。桃も色づき始め、梨もあった。
次は水田で、水生生物の生態を観察する。子どもたちは網で溝にいる蛙やゲンゴロウを探す。「あっちの方がいるみたいよ」「後ろからそっとすくわないと捕れないよ」「落ちるなよ」…。保護者も心配そうだ。「これはトンボのヤゴだね」「それは日本アマガエル」とスタッフの大森拓郎さんが丁寧に説明した。
足元をびしょびしょにして次の「草っぱ」に着いたころには雨も止んできた。
昔の武蔵野台地の面影があり、カヤなどを残した半自然の場所が「原っぱ」だ。
「カヤは、籠の材料にもなるし家の屋根にもなる。捨てる箇所などなかった。農閑期のお百姓さんの生活も支えてきた。そうやって江戸時代の急増する人口を支えてきた。豊かな生態系をそのまま『原っぱ』として残しているのは、東京にもほとんどない」と説明があった。子どもたちは網を持って、バッタやコオロギを捕まえに散った。「すずめばちもいた。怖かった」という子もいた。
学生宿舎での昼食時間には、稲わらやシュロをつかって手づくり体験も企画された。
「昔の人はお米を食べた後、残ったわらをつかって草履や鍋敷き、箒をつくった。それでも残ったものは火にくべて来年の堆肥にした」と指導の先生。お土産のバッタがリアルに作られていた。
ミニ講座もあった
午後は深野裕也先生のミニ講義「生き物のつながりから見た果物の追熟」。
「植物は実を動物に食べてもらい、遠くに種を運んでもらい繁殖していく。運んでほしい動物に合わせて果実の特徴が少しづつ違います。鳥は甘くなくても実を啄んでいきますが、タヌキや猿などに食べてもらうために木から落ちた果物を追熟させるエチレンが出る。それで甘くなる。生き物のつながりで果実の性質が生まれるんです。桃やリンゴなどは熟すると落ちます」「先生、桃太郎の桃は水に浮いています」と子どもたち。どんどん意見や質問が出て、丁寧な答えが「わかりやすかった」と好評だった。
アンケートでは「身近な自然を見る目が変わった」「普段は入れない区域を見学。素晴らしい場所」「息子は虫が得意でないのですが、初めてバッタを触ることができた」「お母さんが申し込んだが、おもしろかった」との感想があった。
次は10月20日「アクティブスクール」
田中実行委員長は、「昨年は猛暑のために中止し残念な思いをした。今年は夏に東大農場のフィールドでサマースクールを開催した。秋には演習林で仮称『東大農場・演習林アクティブスクール2019』を10月20日に開催します。ぜひ来てほしい」と話した。
(川地素睿)(写真は、サマースクール実行委員会以外は筆者提供)
【関連リンク】
・東大農場・演習林サマースクール2019募集開始(多摩六都科学館)
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詳細で的確なレポートのおかげで、改めて東大生態調和農学が目指す、生態系サービスを受ける方すべてがユーザーという初代小林機構長のコンセプトが実感できました。市民、技術員、研究者、科学館がつながったこの日、ひばりの眼差しを感じた一日でした。
ミニ講義の講師を務めた深野祐也先生の名前に誤りがありました。お詫びして訂正します。(編集部)