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たっぷり準備した「準備をしない訓練」 市内初、4校の合同避難所開設訓練

By in 災害・防災 on 2019年11月2日

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 台風19号が各地に大きな被害をもたらした翌週の10月19日、西東京市内初の東部地区 4校合同避難所開設訓練が、碧山小学校を会場にして実施された。今回は事前準備が不十分との想定で開く、「準備をしない訓練」の試みだった。実際に近いだけに、日ごろ気付かない事実がいくつも浮かび上がってきた。

 

市民が続々集まる

 

 参加したのは碧山小をはじめ、東小、保谷中、明保中の保護者や周辺の住民ら。西東京市と4校の避難所運営協議会が協力した。今回の目的は、避難所を運営するために行政、学校、地域住民、各関係機関の役割分担をそれぞれ明確にするほか、多くの住民が参加できるようにする、東部地区の連携体制を構築する、などだった。

 

緑色のゼッケンを付けた碧山小避難所運営協議会のメンバー。コーディネーターの小野修平さん(中央)はハンドマイクを肩に掛けている

 

 台風被害が大きかった影響か、集合時間の午後2時前から、市民が続々とやってきた。
 車椅子を使っている方に話しを聞くと、「通っている『自立生活企画』では、防災に力を入れています。今回の訓練も関心があってきました」と話して、写真撮影に協力してくれた。自立生活企画は市内にあるNPO法人で、障害者が地域で安心して暮らせるように支援活動を続けている。

 

「自立生活企画」の皆さん

 

訓練の進行にハラハラ、ドキドキ

 

会長の成瀬修さん

 碧山小学校避難所運営協議会会長の成瀬修さんは「4校合同の避難所運営の構想は昨年度末からあり、新年度がスタートして本格的に準備してきました。避難所開設にあたり、課題や意見を集めるのも目的の一つです」と言う。

 災害が起きた時には、準備万端で避難所が開設できるわけではない。さまざまな意見が出るのを覚悟の上で、そのバタバタ具合を実感してもらうことが、今回の訓練の大きな狙いでもあった。

 そうと知っていても、物事が段取り良く進むことに慣れている私は、集合時間が過ぎているのに案内が始まらないのでドキドキする。参加者がすでに100人を超えていることにも、なんだかハラハラする。

 訓練のコーディネーターで、ジョージ防災研究所代表の小野修平さんは、なかなか始まらない受付の案内を「誰かが気づいて動き出すんですよ」と泰然自若。今ドキの言葉を使えば「しれっと」見守っていた。しばらくすると、メガホンを持った女性メンバーが登場。「もう少し、お待ちください!」とアナウンスを始めた。

 

市民の出番です

 

 受付の作業もまず、集まった人たちに呼びかけて、手伝ってくれる人を探すことから始まった。「どなたかお二人、受付の案内をしてくれる人はいませんか?」。その声かけに、2人の女性が「はいっ」と手を挙げた。市民の出番である。

 やがて受付が始まった。しかし受付の前段階で、集まった人たちが町名ごとに並ぶ校庭は、雨で足場が悪い。即席で作った案内版は、字が細くて、「見えない!」の声が飛ぶ。次に受付に移動し、「避難者カード」を一家で一枚、それに家族の人数分の「お困りごとカード」をもらう。

 

町名ごとに並ぶ。足元は水浸し

 

 受付で渡された「避難者カード」に、家族の名前などを記入する。任意記入ではあるが、「避難所に協力できること」の項目もある。「お困りごとカード」には、一つでもチェックが入った場合、付箋が貼られる。その作業の担当も「はい!」と答えたボランティアだ。付箋の付いた「お困りごとカード」の市民には、一般の避難者とは別に個別対応する。

 

避難者カード(クリックで拡大)

お困りごとカード(クリックで拡大)

 

 

避難所に全員は入れない

 

 受付が終了した市民は体育館へ移動し、小野さんの防災講座に参加した。準備した椅子が足りなくなり急遽増やした。小野さんはスライドを使いながら、「各自の役割を自覚する必要があります。『行政』は市民の命、健康、安全、生活を守るため、 統制 や連絡調整を行い、生活再建を保証します。『地域住民』や『各関係機関』は円滑な避難生活と、迅速な生活再建に向けて、力を合わせます」と、穏やかな口調で話した。

 小野さんによると、西東京市の20万市民のうち、避難所に入れるのは、3万6470人。4校の収容人数は、碧山小1102人、東小879人、保谷中1758人、明保中1201人。4校合わせると4940人となる。避難所には3.3㎡につき2人入る、とした場合の計算だった。

 

避難所収容人数の情報を皆食い入るように見つめる

 

 1時間半におよぶ開設訓練。体育館での小野さんの講義には、ほとんどの人が最後まで熱心に耳を傾けていた。 小野さんは「参加者が1人なのか1000人来るのか分かりません」と言っていた。しかし実際は、この日、受付で避難所カードを書いた人だけで125人。集まった市民は計200人を超えていた。全員が受付を済ませるまでに、どんな事が起きていたのか。11月16日に振り返る場も用意されている。

 

振り返りの場の案内

 

避難所に行けばなんとかなる?

 

 避難所に行けば、なんとかなるのだろうか。誰が避難して、誰が運営を担うのか。小野さんの話から、次のようなことが明らかになった。

「避難所には、受け入れの優先順位がある」
「避難所には、市民全員は入れない」
「避難所では、市民は力を合わせる」

 4校合同訓練は、前半はハラハラ、ドキドキ。後半はなるほど、なるほど。たっぷりと準備した「準備をしない訓練」の下、多くの学びがあった。
(石田裕子)

 

【筆者略歴】
石田裕子(いしだ・ひろこ)
 夫と長男と、猫2匹が現在の同居家族。PTAが大好きで、谷戸小学校では2回、田無二中でも2回のPTA会長を歴任。人生のテーマが「子ども支援」。育成会や遊び場開放で、子どもとふれあいなから、市内2カ所の子ども食堂に関わる。谷戸小学校施設開放運営協議会管理者、青少年育成会メタセコイア 副会長、西東京わいわいネット 事務局長、放課後キッチン・ごろごろ代表など。

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