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「心のケア」専門職の課題浮き彫りに 国立精神・神経医療研究センターが初の大規模調査

By in 健康・医療 on 2020年5月24日

国立精神・神経医療研究センター病院

 うつ病や摂食障害、虐待、依存症などさまざまな分野で「心のケア」が求められる中、小平市の国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は5月22日、メンタルヘルスを専門とする「公認心理師」の職務や実習の実態を全国の医療機関を対象に探った調査結果を公表した。医療現場に心理職初の国家資格である公認心理師が誕生してから初の大規模調査であり、心のケアを充実させるための基礎資料とする。

 心理職は長く民間資格しかなかったが、一定の専門性や技術を確保するために国家資格とする公認心理師法が2017年に施行された。養成課程で必修となる医療現場での実習が始まり、2018年の第1回試験では約2万8千人が合格した。

  公認心理師は医療や福祉、教育、産業などの分野で心を病んだ人々や家族の相談に応じ、サポートする役割を担う。その実習や職務の実態、求められる役割や技能を把握するため、NCNP病院の臨床心理部は全国4000カ所の医療機関を対象としたアンケート調査(回収率40%)と、医師や専門職計40人に対するインタビュー調査を実施した。

 心理職が在籍する医療機関は全体の55%で、総合病院では30%。人数は1~2人が49%を占め、常勤者に限ると0~1人が53%に上った。公認心理師の実習を受け入れている医療機関は全体の14%。常勤者の6割弱は年収400万円未満で、非常勤の平均時給は5割以上が1600 円未満だった。心理職が医療現場に根付いておらず、雇用形態は非常に不安定である実態が伝わる。

 心理職を雇用しない理由は「収益性の問題」が36%と最も多く、「心理職の役割や職務が不明」「必要性がない」が続く。心理職の主要業務である個別の心理面接は約8割が収益には直接つながらない形で実施され、64%が導入している心理検査は臨床上の必要性があっても診療報酬の対象外だ。心理職の業務の多くが収益につながらず、その役割や有用性が十分認識されていないことが心理職の拡充の障壁になっていることがわかる。

 心理職に求められる技能としては、他の専門職と協働するスキルが挙げられた。常勤者の人数と、心理職による多職種や地域との連携状況を比較すると、常勤者が0人から1人、1人から複数に増えることで支援が有意に広がり、非常勤者だけが増えても連携の拡充にはつながらないことが明らかになった。

 インタビュー調査では、医療現場で公認心理師に求めるものとして、「多職種連携とコミュニケーシ ョン能力の向上」が61%で最も多く、「理想の心理師像」として最も多かったのは「コミュニケーション能力が高く連携しやすい人物」だった。

 調査結果からNCNPは、医療現場からの期待に応えるためには1施設に常勤の公認心理師を複数在籍させることが有効だが、その業務が収益に貢献しにくい医療制度や公認心理師の技能や質の均一性に課題がある、と指摘。今後、診療報酬や配置条件の改定、実習内容の標準化とガイドラインの制定などを提言している。
(片岡義博)(写真は筆者撮影)

 

【関連情報】
・公認心理師の職務や実習の実態を明らかにするため全国初の大規模調査を行いました(NCNP病院

 

【筆者略歴】
 片岡義博(かたおか・よしひろ)
 1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。2009年から全国52新聞社と共同通信のウェブサイト「47NEWS」で「新刊レビュー」を連載。著書に『文章のそうじ術』(言視舎)など。小平市在住。

 

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