連載コラム「百音風発」が単行本に 師岡武男著「『対案力』養成講座」出版
ひばりタイムスの連載コラム「百音風発」に書き下ろしなどを加えた師岡武男著「『対案力』養成講座」(言視舎)が2月末に出版された。格差と貧困をもたらした新自由主義に抗して、日本経済の再生をめざす新たな経済政策を提唱している。
日本経済はこの20年ほどの間、新自由主義のグローバリズムに覆われてきた。人びとはデフレと低成長にあえいでいたところに新型コロナウイルス感染症が広がり、実質賃金の低下とあいまって格差と貧困の苦しい生活を余儀なくされている。著者は再生の切り札として積極財政を柱とする「大きな政府」論を提唱する。
その実現の壁となっている緊縮財政論、新自由主義には手厳しい。特に財務省の繰り出す財政破綻論のからくりや、緊縮財政論に鋭く反駁。「消費税は社会保障に使う」というまやかしも指摘する。国債発行による経済再生、実質賃金の上昇、充実したコロナ対策などを願い、いわゆる「大きな政府」による積極財政を掲げ、暮らしと経済の再生、向上を目指す「対案」提起となっている。
「これ以上国債を発行したら、借金で首が回らなくなる」「子孫にツケを回す」「インフレになったらどうする」「年金や介護、医療費が増えて財政が破綻する」…。こんな危惧をQ&A形式で懇切丁寧に解きほぐし、福祉充実のための社会の道筋を示す。
著者は共同通信社経済部記者を経て編集委員、論説委員を歴任した。新聞労連書記長を務めるなど労働運動にも詳しく、戦後の社会と経済の盛衰をつぶさに体験してきた。今年94歳。現役のジャーナリストで経済評論家。豊かで安心な暮らしを取り戻したいと願う人たちに勇気を与え、出し渋りの政府に積極財政の実行を迫る一冊だ。
(北嶋孝)
(注)『「対案力」養成講座』は言視舎発行。四六判・並製、全214ページ。本体価格1700円。
【関連情報】
・連載コラム「百音風発」(師岡武男著)(ひばりタイムス)
・「対案力」養成講座(言視舎)
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師岡武男
日本の社会を豊かな民主主義の国として築くためには、福祉型内需型の経済成長の政策と、大衆運動の力、および人々の知る権利にこたえるジャーナリズムのセットが必要条件だろう、というのが、ジャーナリストとして日本の現実を見てきた日ごろの思いでした。老骨の身ですが、そのために役に立つならと思って、書きました。
政策の対案の要は、大きな政府による反緊縮の「積極財政」です。コロナ禍の結果として、世界中がその方向に動いているように思いますが、安倍政権・菅政権の政策は相変わらず緊縮財政と輸出主導型経済を固守しています。大転換によって、禍を転じて福となしたいものです。
編集担当より。コロナ禍で、政府は否が応でも財政出動しなければならなくなっています。「でも、大丈夫」、である根拠をわかりやすく説明しているのが、この本です。消費税についても、へぇーという考えも述べられています。議論のネタ本にしてください。