茨木のり子「春の集い」

朗読と音楽で「茨木のり子」春の集い 没後15年企画「講演会・パネル展・集い」も計画

投稿者: カテゴリー: 暮らし文化 オン 2021年4月20日

 「倚りかからず」「わたしが一番きれいだったとき」などの作品で知られる詩人の茨木のり子さんは2006年2月、西東京市東伏見の自宅で亡くなりました。今夏は没後15年を記念するイベントが予定されています。茨木さんの詩の魅力にひかれた人たちが、今年も詩を朗読する「茨木のり子の詩と思索を巡る旅~春の集い 」を開きました。主催した「茨木のり子さんの家を残したい会」発起人の一人、柳田由紀子さんの報告です。(編集部)(写真は「春の集い」=大場誠司さん提供)

 

 

春の集いは「好きな詩の朗読」

 

 詩人茨木のり子の好きな詩を選び朗読する「春の集い」が4月10日(土)午後、保谷駅前公民館集会室にて開催された。「茨木のり子の家を残したい会」が主催し、29人が参加した。

 

 会では四季折々の「集い」開催を心掛けているが、今回は、コロナの影響もあり、昨年8月に柳沢公民館視聴覚室で2回開いた「夏の集い」以来8ヵ月振りとなった。

 

茨木のり子「春の集い」

茨木のり子「春の集い」

(写真は「春の集い」=大場誠司さん提供)

 

 今年は、茨木さん没後15年にあたることから、会では、いくつかの記念行事を6月から8月に企画。この日は、プレ記念行事のような雰囲気で、まず、私たち自身が、茨木さんの作品に親しむことをメインにした。

 

 朗読希望者は会員のみならず、青梅市など遠方の方もあり、事前申込段階からファンの熱き思いが伝わってきた。

 

 申込順に、「六月」菊池範子さん、「根府川の海」谷邦子さん、「四月のうた」牧子真佐子さん、「鄙ぶりの唄」増田恵津子さん、「いちど視たもの」矢田部進さん、エッセイ「一本の茎の上に」から 新田宜子さん、「対話」橋本直子さん、「汲む―Y.Yに―」舟木栄子さん、「知命」溜口郁子さん、「二人の左官屋」鈴木春子さんの10人が朗読し、選んだ理由を話された。

 

 今大切に思うこととぴったり! と仰る方、祖父母の住む地にちなむ思いを語られた方、季節のイメージにメッセージを汲みとる方、辛いときの心の支えになった方、時代を見抜く決意の視点に共感する方、茨木さんの家を探したときの思い出話をなさった方など、それは多面な切り口だった。

 

 そして、サプライズ。4月4日に「一人は賑やか」の公演をされたばかりの志賀澤子さん(東京演劇アンサンブル)が「ぎらりと光るダイヤのような日」を暗唱された。

 

 11人それぞれの長い人生を感じさせる味わい深い声に耳を傾け、アットホームな雰囲気に包まれた。

 

 休憩後に、大場誠司さん作曲「木は旅が好き」「花ゲリラ」を5人の方が合唱でお披露目。優しいメロディーだ。8月の集いで発表するが、まだ「合唱団員」は少ないため、歌の好きなメンバーを募っている。その後、大場さんのピアノ弾き語りで、「生きているもの・死んでいるもの」(吉岡しげ美作曲)。楽譜がないためCDから採譜という熱心さ。これも茨木のり子に触発される楽しさに違いない。

 

 残りの40分程は会のこれまでの活動や今年の企画などをお話し、感想・意見を伺った。10分の休憩時間中に、ナマの声で「朗読」を聴く素晴らしさを詩になさった方があり、的確な表現と迅速な創作に一同感動。涙ぐんだ方も。

 

 朗読と音楽で、しばし「茨木のり子」との対話を楽しむことができたように思う。

 

シンプルでモダンな茨木邸

 

 茨木邸は茨木のり子さんが1958年32歳の時、建築家の従姉妹と設計して建てた。東伏見小学校と下野谷遺跡を結ぶ坂の中ほどにあり、ル・コルビュジェのデザインを取り入れたと思われるピロティと横長の窓を備え、シンプルでモダン。内部は、機能美の中に温かみのある造りで、暮らしを大切にしたことが分かる。

 

茨木邸は坂道の途中にある

茨木邸

モダンな山小屋にも見える

 

 家を相続された甥御さんは「茨木のり子の家」(2010年平凡社刊)の中で、「どの程度まで本人が設計に関わったのかは定かではないが、エントランスから臨む山小屋風のデザインは今見ても斬新だし、内装は独特の落ち着きがある。武蔵野の雑木林に佇むこの住居も茨木のり子の作品の一つとも言えなくもない」と述べ、家の本を「著者茨木のり子」として出版されている。

 

 私たちは、茨木邸をできれば将来、記念館のような形で残したいと思っている。詩は、時空を超えて、人の心に届くものであり、詩の価値は人それぞれに違い、詩と詩人が暮らした場所とは無関係、切り離すべきという考えもあるだろう。しかし、詩作の場を知ることで、その暮らし方にも関心が広がり、思想、全人格への理解が一層深まるということもある。読者が茨木さんの創作と生活の場に、その空間に身を置くことで、作品への思いをさらに豊かにできるだろう。

 

茨木邸の庭

茨木邸の庭(2021 年4月)

 現在茨木邸はそのまま保存・管理され、企画展への資料貸出や編集者との打ち合わせなどに使われている。内部見学については、甥御さんのご厚意により、限定的ではあるが可能となっている(今はコロナ禍で控えている)。

 

5年前に5人が始めた「残したい会」

 

 茨木のり子さん没後10年の2016年に地域では回顧展一つなく関心が低くかった。その年の暮れ、彼女の詩や生き方に魅かれ、亡くなるまで50年近く暮した西東京市東伏見の家を残していきたいと思う5人が会を作った。2年間は殆ど休眠。

 

 2019年に入り、本格的に賛同人を募り、思いを分かち合うツールとして会報「茨木のり子手帖」(季刊)を夏に創刊。秋には、「茨木のり子の家&詩作の場を訪れ 詩と暮らし方を語り合う集い」を開催。東伏見小学校、茨木邸前、下野谷遺跡公園、青梅街道などでゆかりの詩を読み、その後語り合った。散会後、発起人5人が甥御さんとお会いして家の内部を見学させていただいた。冬には、「茨木のり子の詩と思索を巡る旅~冬の集い」を開催し、多摩六都フェア映画制作グランプリ作品<茨木のり子と下野谷遺跡をつなぐ物語「つなぐ人」>のDVDを鑑賞し、「ハングルへの旅」の読後感想を語り合った。

 

 2020年は7月に「草刈りたいボランテイア部」が発足し、茨木邸の庭の草刈りを3日間行う。8月に「茨木のり子の詩と思索を巡る旅~夏の集い」を2回開催。絵本「貝の子プチキュー」読み聞かせ、吉岡しげ美さんのCD鑑賞、詩の朗読、交流を行った。

 

草刈ボランティア

草刈ボランティア

力を合わせて庭の草刈り(2020年7月)

 

 会報は7号まで発行。創刊号は8頁であったが、「茨木のり子」に寄せる思いが次々につながり、覚醒され、20頁に成長。会員は、市外にも広がり、この4月に130人を超えた。

 

6月~8月に没後15年の連続企画

 

 没後15年の今年は、私たちの手で、彼女の詩と生きる姿勢を振り返り、その魅力を広め、深めていきたいと次の企画を立てている。チラシは作成準備中。

【講演会】 西東京市公民館市民企画事業(当会と公民館の共催)
 連続講座「茨木のり子 詩と生き方の魅力~没後15年に振りかえる~」
①講師 : 後藤正治氏(ノンフィクション作家)
 テーマ : 「茨木のり子 凛としなやかに生きた詩人」
 日時 : 6月19日(土)14時~16時30分
 会場 : 柳沢公民館視聴覚室
②講師 : 米田佐代子氏(女性史研究家)
テーマ : 「女が「個」あるいは「孤」を生きるということ―茨木のり子と
 平塚らいてうに寄せて」
 日時 : 7月17日(土)14時~16時30分
 会場 : 柳沢公民館視聴覚室
  ★無料
  ★定員35人(6月2日午前10時より申し込み順)
 ★対象 市内在住・在勤・在学

【パネル展】 当会主催
 「茨木のり子 詩と暮らし~東伏見に48年~」
 日程 : 7月11日(月)~17日(土)
 ◆最終日は米田さん講演会に併せて開催
 会場 : 柳沢公民館ロビー
  ★無料

【集い】 当会主催
 「どこかに美しい人と人との力はないか~茨木のり子没後15年の集い」
 日時 : 8月8日(日)13時30分~
 会場 : 保谷こもれびホール・小ホール(230席)
 入場料 : 1800円、前売り1500円
 内容 : 朗読劇「詩人茨木のり子の軌跡」 会員*
 ソプラノ独唱 前中榮子さん
 朗読「りゅうりぇんれんの物語」 山川建夫さん
 合唱「花ゲリラ」「木は旅が好き」 会員*
 ピアノ独奏 「ル・コルビュジェの為の休息」 小森俊明さん
 ピアノ弾き語り 吉岡しげ美さん
朗読劇に、都丸哲也元保谷市長(100歳)出演予定!

 

茨木のり子と地域のつながり

 

 茨木のり子さんは、保谷市東伏見に、1958年32歳の時から2006年79歳で亡くなるまで50年近く住み続けた。

 地域にちなむ詩に「七夕」「ビスケット工場」「ほうや草紙」「青梅街道」「二人の左官屋」「夏の声」「みずうみ」「みかんの木」などがある。

 行政関係では、保谷市時代に、当時の市長都丸哲也氏の要請で1982年10月制定の「憲法擁護・非核都市宣言」草案に関わられた(56歳)。また1989年7月教育委員会発行「ほうやの教育」第32号にエッセイ「ほうや今昔」を寄稿されている。
(「春の集い」以外の写真は、筆者撮影)

 

【筆者略歴】
柳田由紀子(やなぎた・ゆきこ)
 1973年25歳の時から柳沢在住。2008年まで35年間自宅で学習塾を開く。地域では生協活動、住民・市民活動に関わる。現在、公民館を活動の場として8つの団体で、事務局や代表を務める。「茨木のり子の家を残したい会」発起人の一人。

 

【関連情報】
・茨木のり子の家を残したい会(ゆめこらぼ

 

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