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下野谷遺跡公園

「ムラびと」と作る 西東京市の下野谷遺跡「縄文里山プロジェクト」が加速

投稿者: カテゴリー: 文化・スポーツ オン 2021年10月2日

 西東京市が誇る国史跡「下野谷遺跡」をアピールし、後世に継いでいくため、同市で「したのや縄文里山プロジェクト」が進められている。発掘開始から半世紀、史跡指定から6年を経て、施設の整備やPRを本格化。行政だけでなく遺跡に関心を持つ人にも「ムラびと」として参加してもらい、「東京に縄文のムラを作ろう!」と盛り上がっている。(写真は、整備が進んでいるエントランス部分)

 

 ◆ 世界遺産・三内丸山遺跡と同時代

 

 近年の縄文ブームに加え、今年7月には北海道、北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録が決まり、縄文時代への関心はさらに高まっている。下野谷遺跡は、世界遺産の中心となる三内丸山遺跡(青森市)と同じ縄文中期、今から4000~5000年前に約1000年続いたとみられる集落跡。

 西武新宿線東伏見駅から徒歩7分、青梅街道から少し入った石神井川に面する日当たりのいい高台から低地にかけての約13万4000平方メートル、東京ドーム3個分となる東伏見2、3、6丁目に浅い谷を挟んで東西二つの「環状集落」がある。環状集落は土坑(墓)などがある広場を住居や掘立柱建物(倉庫)が囲むもので、市の学芸員、亀田直美さんによれば、同時代の集落は直径50~100メートルが普通だが、下野谷遺跡は同150~300メートルと東西の集落をあわせると南関東最大級。集落、住居などの構成が典型的で「縄文時代中期の研究の基礎となる資料が提示できる遺跡」と位置付けられている。

 

整備イメージ図

プロジェクト完成イメージ図。右手前がエントランス、右奥がイベントゾーン、左が復元ゾーン(市提供)

 

 とくに住宅街にあってほとんど開発が入っていない西集落は、都市部でこれだけの集落が丸々残っているのは非常に珍しく、「未来に残すべき貴重な文化遺産」として2015年3月に国の史跡に指定された。

 

公園、VRアプリなどでPRも

 

 指定と前後して、2006年に遺跡のキャラクターとして「しーた」「のーや」などが誕生、2007年には集落があった場所に、縄文人が好んだ立地や自然を知ることができる「下野谷遺跡公園」が開園し、2017年には3D CGなどで縄文時代の様子を再現し、ムラの中にいるような映像や解説、現地でできるバーチャル体験など、下野谷遺跡を知り、楽しめるスマートフォンアプリ「VR下野谷縄文ミュージアム」がスタートするなど、遺跡のPRに努めてきた。

 ただ、同公園は骨格が復元された2/3サイズの竪穴住居などと案内板、植栽された「縄文の森」がある程度で、ガイダンス施設などはなく、見ごたえという点では物足りないという声が多い。遺跡の周知や理解促進のためには施設の充実と行政以外も巻き込んだムーブメントが必要。そこで、市が昨年、「みんなでつくる、つなげる都市部の縄文空間」として打ち出したのが「したのや縄文里山プロジェクト」だ。

 市教育部社会教育課の森主一央主査によれば、プロジェクトでは原寸大で復元する竪穴住居2棟や、土器などが発掘された状況を土器のレプリカなどを使って再現する遺構展示などからなる「復元ゾーン」と、縄文人の生活を知るためのイベントなどを行う「イベントゾーン」で構成。縄文時代に実際にあった樹木の植栽も進め、「住宅街なので防犯や防災にも注意しながら、縄文の景観づくりを目指したい」と森主さん。

 

SDGsにも重なる知恵伝える

 

 その復元のためのデータを集める第35次発掘調査が9月中旬に終わり、1973年以来、約半世紀続いてきた調査は一区切り。すでに整備されたエントランス部分に続き、2021、22年度で遺構展示、竪穴住居跡、植栽などを整備するなど、23年3月の完成を目指してプロジェクトが加速する。

 亀田さんは「縄文時代は温暖な気候、四季があり広葉樹の森が広がるなかで、自然を上手に利用してその恵みを受けてゆたかな暮らしをしていた。プロジェクトでは住宅街に森を作ろうというのではない。今のSDGs(持続可能な開発目標)にも重なるような縄文の知恵を伝え、縄文時代はこんなところなんだなと考えてもらえるようにしたい」と話す。

 さらに、「このプロジェクトは『みんなで作り、育てる』がテーマ。里山は一朝一夕ではできないが、最初は里山とは思えなくても、植栽や草むしりなどの協力をいただき、何十年後かには違う風景に見えるよう遺跡を応援してくださる皆さんと一緒に作っていきたい。まずは心の中に里山を描いていただけたら」と行政だけでない取り組みを強調。

 

ムラびと証

ムラびとになるともらえる「したのやムラびと証」(市提供)

 

 その担い手となるのが、下野谷遺跡が好きな人、応援してくれる人で、ボランティア活動、イベントや講座への参加、寄附などをした人たちになってもらう「ムラびと」。昨年末から今年はじめにかけて実施したプロジェクトに対するクラウドファンディングで474万145円(目標額200万円)が集まったが、その寄附者や、これまでに遺跡を応援してきた人ら計396人(9月17日現在、約8割が西東京市民)に「ムラびと証」が発行されている。また、したのやムラでの活動などの話題をお知らせする「したのやムラだより」も8月に第1号が発行された。

 下野谷遺跡の整備について西東京市の池澤隆史市長は、今年5月の施政方針演説で「貴重な文化財の保護・活用に努めるとともに、『遺跡で集い、つながる』ようなまちづくりを進めてまいります」と話しており、今後、遺跡を取り巻く盛り上がりが期待できそうだ。

 なお、「ムラびと」になるには「したのやムラ 入居申込書」を提出する必要がある。問い合わせは、西東京市教育委員会社会教育課文化財係(TEL:042-420-2832、E-mail:syakyou@city.nishitokyo.lg.jp)まで。
(倉野武)

 

【関連情報】
・したのや縄文里山プロジェクト 東京に縄文のムラを作ろう!(西東京市Web
・【したのやムラだより】第1号発行のお知らせ(西東京市Web
・下野谷遺跡(西東京市Web

 

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