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障がい児の介助員配置が16年ぶりに変更へ 通常学級に通う当事者に「合理的配慮」を

投稿者: カテゴリー: 子育て・教育 オン 2021年12月29日

 障がいのある子どもが地域の学校の通常学級(普通学級)に通うと、介助員を配置する制度が16年前、西東京市に設けられました。しかし保護者に重い負担を強いる条件と運用が続いていると、当事者らが長らく改善を要望してきました。この12月の市議会で、教育委員会が改善の方針を打ち出しました。しかし具体的な内容はまだ明らかになっていません。当事者らはこれまで何を要望し、何が課題だったのか。西東京市障がい者福祉をすすめる会会長の根本尚之さんが報告します。(編集部)(写真は学校のイメージ)

 

動き始める介助員制度

 西東京市議会の一般質問で12月6日、通常学級に通う障がい児へ介助員を公的に配置する制度(障害児童等介助事業:以下「介助員制度」とする)の運用変更を予定している、と教育長から答弁がありました。制度開始から16年を経て、やっと運用変更が動き出すことになります。

 この変更は、数年前からこの制度を利用している保護者とそれを支えるボランティア、そしてこの制度の問題点を市に掛け合ってきた市議会議員の方々の活動の成果です。 その保護者は、自分のまちにこういった制度があることを知り、実際使ってみて、以下の大きな課題に直面しました。

 それは、公的介助員が配置されるのは最大100日までとされていて、自分の子どもに必要な日数を賄えなかったこと。加えて、市では介助員の必要人数を手当することができなかったことです。 公的介助員制度があるにもかかわらず、実際は親や介助ボランティアへ大きな負担がのしかかっていました。

 西東京市の教育委員会は市議から制度改善の要望を受け、どうしたら親の負担をもっと軽減できるのか、どうしたら公的介助員をもっと集めることができるのかなど、他市の事例を調べてはいたようですが、いままで改善されませんでした。

 

 「親の責任で…」

 自分の子どもに障がいがあっても、地域の通常学級で学ばせたいと考える親は少なくありません。西東京市では2005年まで、そういったケースで子どもをサポートするための介助員を公的に配置する制度はありませんでした。

 当時の教育委員会は、障がいをもった児童・生徒は特別支援学校か特別支援学級に行くことを前提としていて、通常学級にどうしても入りたいと思うのであれば、親の責任において介助員を用意してくださいというのが基本的な考え方でした。

 親が校長先生と話し合いをもって自分の子どもの受け入れをお願いし、多くの場合は親自らが介助員として学校で自分の子どもを介助し、また介助ボランティアにお願いする場合も、ボランティアの募集からスケジュール調整まですべて親が行うことが当たり前でした。

 私の子どもは脳性麻痺という障がいがあり、2003年に市内の通常学級に入学しました。 2002年から、同じように自分の障がいがある子どもを通常学級に通わせたいとおもう親たちと一緒に、市へ「介助員制度」を作って欲しいと何度も要望しました。

当時すでに三多摩地域でも5~6の自治体は介助員の公的配置が行われていました。

 

実現までの長い道のり

 教育委員会に要望しても、「検討します」という言葉さえ得ることができませんでした。2002年~2004年にかけて市議会へ「介助員制度」を実現して欲しい旨の陳情を2回提出し、2回とも採択されました。それでも一向に実現されませんでした。

 東京新聞が取材に来て、介助員手配の親の負担と、公的な対処の必要性について記事を書いてくれました。 しかし、それでも実現されません。そんな中、転機が訪れたのは、市長の交代です。

 坂口光治都議が2005年2月に市長になられて2カ月ほどたったある日、教育委員会から自宅に電話が入り、「介助員制度」を検討することになったので意見を聞かせて欲しいとのことでした。実は坂口市長の選挙公約(マニフェスト)の中に、「介助員制度の実現」が掲げられていたのです。

 

利用者のニーズを反映していない

 それから市教委の検討懇談会が9回も開催され、当事者の意見も聞き、2005年度中に「介助員制度」がスタートすることになりました。

 しかし、検討懇談会のなかで私達が主張した複数の重要な内容は考慮されないままのスタートでした。疑問に思った点のいくつかをあげると

1.介助員の配置は最大100日までとする
2.公的の配置は介助員の最大50%までとする(親もしくは親が準備する介助員は50%以上とする)
3.親もしくは親が準備する介助員の実績がないとこの制度は利用できない

 

 利用者の要望を理解していない運用内容でした。

 

要望書

2008年に提出した「要望書」

 

 障がいは個々人によって異なります。身体介助が必要な子どもや、見守りが必要な子ども、筆談が必要な子どもなどなど、障がいも千差万別です。介助もさまざまで必要な場面もいろいろです。1.の「介助員の配置は最大100日まで」とはどういうことなのでしょうか。日にちで縛るというのは管理する側の論理です。

 また、2.の「親もしくは親が準備したボランティアの介助員は50%以上」であるべきということ、3の「実績がないと公的介助員は配置しません」は全く理解できません。「基本は親がやるのが筋だが、市も一部は助けてあげますよ」という制度のようです。 作れと言われたから仕方なく作った、魂がない制度だということを当時は強く感じました。

 私たちは上記の内容が納得できなかったので2回にわたり、教育長に制度運用を改善するように要望書を提出しました。しかし残念ながら、利用者にとって使い易い変更はされず、現在までほぼ同じ内容で運用されてきました。

 

「障害者差別解消法」と「合理的配慮」

リーフレット表紙

リーフレットの表紙(クリックで拡大)

 日本では2016年に「障害者差別解消法」が施行されました。障がいのある人に「合理的配慮」を行うことなどを通じて「共生社会」の実現を目指すことになったのです。この「合理的配慮」とは、「障害の有無によらず、すべての人の人権を平等に守れるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて生じる困難を取り除くための調整や変更のこと」です。それらを国や自治体に義務付けた画期的な法律です。

 今年2021年6月には改正障害者差別解消法が公布され、いままで努力義務だった民間企業も義務づけられることとなります。(施行は公布後3年以内)

 今回の西東京市の「介助員制度」も、本来であれば2016年に自治体の義務として、通常学級に通う障がい児の学習の際の困難を取り除くため、100%の公的介助員を配置する義務があったことになります。もっと早く運用の見直しが行われていれば、救われた家族や児童・生徒がいたはずです。

 

 障がい児が通常学級で学ぶとは

 障がいをもった子どもが通常学級で学ぶことは、その子にとっての成長だけでなく、同級生、担任の障がい者の理解が進むことにもつながります。私の息子は小学校6年間車イスで学校に通いました。高学年になると、学内の移動時は同級生が車イスを押してくれました。運動会や遠足などの行事の際も、車イスの息子が参加できるような工夫を、担任と同級生が考えてくれました。息子のクラスではそれが当たり前になっていました。

 多様性を認め合うことが大切なことだと、今日その重要性が叫ばれていますが、そのためには自分と違う様々な人と一緒の時間を持つことが一番の近道だと思います。

 

利用者目線の運用変更を

 当市の公的介助員の配置の運用変更の内容はまだ、確定していません。
市教委の担当部署の皆さんには、ぜひ16年前に始まったこの制度の背景、この制度の利用者が何に困っているのか、どうしてもらいたいのかを、相手の立場になって考えていただきたいと思います。

 西東京市が障がい者(児)、その家族にとって住みやすいまちとなることを願います。

 

【関連情報】
・「合理的配慮」を知っていますか?(内閣府「障害者差別解消法リーフレット」PDF形式:3,252KB

 

【筆者略歴】
 根本尚之(ねもと・なおゆき)
 1959年生まれ。西東京市在住、会社員。1996年に息子が脳性麻痺の障がいをもって生まれたことをきっかけに、民間企業に勤務の傍ら、西東京市で障がい者支援の活動をつづける。西東京市障がい者福祉をすすめる会会長、喫茶コーナーふれあい代表、西東京市地域自立支援協議会副会長、西東京市社会福祉協議会評議員、社会福祉法人さくらの園評議員、社会福祉法人田無の会評議員など。

 

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