eスポーツで高齢者を元気に 西東京市がフレイル予防で新事業
西東京市は新年度から、地域の高齢者らがビデオゲームを楽しむ「eスポーツ講座」を開設し、高齢者を元気にするフレイル予防の新事業を始めることになった。同時に「健康デジタル指導士養成講座」もスタート。eスポーツのルールや機器の操作を伝えるだけでなく、仲間同士や若者世代との交流を図るサポート役になってもらう仕組み。西東京市が2月22日に開いた記者会見で、池澤隆史市長が明らかにした。(「2021 ともに活きる!まちづくりフェス」でeスポーツを楽しむ人たち=西東京市提供)
eスポーツ講座は、家庭用ゲーム機を使い、市内の公共施設のほか、地域にある高齢者の「通いの場」を会場に想定。人気の「太鼓ゲーム」や「運転ゲーム」を楽しみながら仲間らと交流する。新年度は計14回開く予定。
「健康デジタル指導士」は機器の操作やゲームの楽しみ方のほか、スマートフォンなどに不慣れな高齢者に基本的な扱い方も教える。養成講座は年齢を問わず、同世代の高齢者や、デジタル機器やゲームに詳しい若い世代の参加も募り、多世代間交流を図る狙いもあるという。
昨年10月に市内で開かれた地域共生社会の実現を目指したイベント「2021 ともに活きる!まちづくりフェス」でeスポーツコーナーを開いた。これが当たった。参加者した高齢者から「初めてだったが、意外に簡単で、音楽に合わせて楽しくできる」「何年ぶりかで興奮して楽しかった」「またやりたい、みんなでやりたい」などの感想が寄せられた。
これに先立って昨春、eスポーツによる健康づくりを進める日本アクテビティ協会と協力して、高齢者に試験的にゲームを楽しんでもらうイベントを柳沢地区の公団集会所で開いた。こういう積み重ねから、フレイル予防の新たな取り組みとして、eスポーツを取り入れるフレイル事業の考え方がまとまってきた。新年度は市の独自事業で予算額は60万円とささやかなスタートになる。
東京都の高齢社会対策部在宅支援課によると、「自治体の単独事業は分からないが、都の補助金を活用した高齢者向けのeスポーツ事業は聞いていない」という。西東京市のeスポーツ事業が本決まりとなれば、都内で先鞭を付けることになる。
他の自治体では既に先進事例がある。例えば富山県は2020年度から「eスポーツ介護予防促進事業」をスタート。熊本県美里町も2年前から、eスポーツを活用した認知症予防や世代間交流を図る「eスポーツでいい里づくり」事業を始めている。この事業は今年1月、内閣府が設置する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」で「優良事例」に選定された。
首都圏ではNPO法人さいたま市民ネットワークが2018年に始めた「シルバーeスポーツ」が先進事例として知られている。同ネットワークが設立した「さいたま市民シルバーeスポーツ協会」は2020年に「さいたま市シルバーポイント(長寿応援ポイント)事業」の登録団体となり、ポイントがたまったら奨励金に交換できるようになった。eスポーツを楽しんでポイントを獲得。健康増進と仲間づくりに励み、奨励金をゲットできたら買い物で地元の振興にも一役買える。
事務局長の水野臣次さんは「これから始めたいという自治体の問い合わせもあります。4月には都内のある区に出掛けてワークショップを開く予定です。eスポーツは高齢者だけでなく、障がい者も子どもたちもできるし、みんなが交流できますよ」と話していた。
高齢者介護の世界で「遊びリテーション」導入は珍しくない。「遊び」と「リハビリテ-ション」を組み合わせた造語だが、フレイルや認知症の予防活動はとかく、検査や訓練、運動に傾きがち。遊びを取り入れながら、仲間作りや心身の機能向上ができるなら楽しいのに。eスポーツをフレイル予防事業に組み込んだ西東京市の第一歩が、他自治体の歩みに弾みをつけるだろうか。
(北嶋孝)
【関連情報】
・西東京市長記者会見資料9(令和4年2月22日実施分)フレイル予防事業の推進(PDF:217KB、西東京市Web)
・日本アクティビティ協会(HP)
・さいたま市民シルバーeスポーツ協会(HP)
・シルバーeスポーツワークショップを賑やかに開催しました(さいたま市民ネットワーク)
・「eスポーツでいい里づくり事業」への取り組みを開始しました(熊本県美里町)
・2021年度 地方創生SDGs官民連携優良事例の選定について(地方創生SDGs官民連携プラットフォーム)
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