日の出

フクシマの今を見てほしい、考えてほしい 写真展「フクシマ-東日本大震災その後の10年」を開催

投稿者: カテゴリー: 環境・災害文化・娯楽 オン 2022年8月13日

 東日本大震災で起きた東京電力の福島原発事故は被害甚大で、影響は今も続いています。東久留米市在住の兼子義久さんは震災後、現地に通って撮った写真をまとめ、8月19から22日まで小金井市の宮地楽器ホール地下市民ギャラリーで写真展を開きます。個展の準備に忙しい兼子さんに、これまでの取り組みを報告していただきました。(編集部)(写真は、富岡漁港の日の出=富岡町、2021年10月7日撮影)

 

 写真展の開催などについて、Q&A形式でお話ししたいと思います。

 

Q:本題に入る前に、2年前、東日本大震災をテーマに写真展を開催したとのことですが。

A:2020年1月に「東日本大震災―その後の8年」と題して、北は岩手県普代ふだい村から南は福島県いわき市までの震災遺構やまちの現状を撮影、57点にまとめました。今でも撮影しておいて良かったと思っている写真があります。それは岩手県大槌町旧役場です。

 

大槌町旧町役場

解体工事中の大槌町旧町役場(2018年6月7日撮影)

 

 震災遺構として残すかどうかが町長選挙の争点となって、撮影して数カ月経たないうちに解体・除却されました。町長はじめ職員28人が亡くなっており、身内の方々にはその建物を見ることがとても辛いなどのお気持ちがあったことと思います。しかし、自分は、それら遺構と言われるものを撤去してしまえば、そこで多くの方々が亡くなったことも、そこから未来に向けての教訓も引き出せなくなってしまう、と考えています。せめて記録に残すことができて良かったと、今でもそう思っています。

 

Q:今回の写真展は“東日本大震災”というテーマで、前回と共通しています。今回の特徴というかそのあたりは?

A:福島県、それも「帰還困難区域*」に焦点を当てて撮影していることです。もちろん同区域以外のまちの現状も撮影しています。徹底した除染が行われたとはいえ、10年が過ぎても、東京と比べるとやはり高い放射線量となっている箇所が少なくない現状があります。

 また今回は人物写真を展示しています。新聞記事から直接ご本人に当たったり、地元のNPO法人のホームページに掲載しているインタビュー記事からご本人に手紙を差し上げたりして協力していただきました。

 その中には仲間8人で立ち上げたホテルの代表者の方や若手の釣り船の船長、地元医師会の元会長で震災時避難先で仲間の医師たちと医療活動に奔走した方、寺に「原発悔恨の碑」を建立したり、伝言館を作り伝承活動を続けたりしている住職、アートで双葉町のまちおこしを企画・実行した方、地元の人たち自身で震災時以降の出来事など未来に語り継ごうと活動する語り部の会代表など9人の方々が顔写真の撮影に応じてくれました。本当にありがたかったです。

*「帰還困難区域」→原発事故後6年間を経過してもなお空間線量率から推定された年間積算線量が20ミリシーヘ゛ルトを下回らないおそれのある地域(2012年3月時点での推定年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域(福島県ホームページより参照)。なお、国内では放射線障害の防止に関する法令(同年3月時点)では年間1ミリシーベルトを基準としている。

 

双葉町

朝焼けの中のアートディストリクト(双葉町、2021年8月24日撮影)

 

Q:撮影時などで苦労されたことはありましたか?

A:そうですね。双葉町でまちの現状風景を撮影していた時、まだバリケードを撤去して時間が経っていなかった頃でした。元の住人が戻っておらず、街を巡回していたバトカーのお巡りさんに職務質問を受けたことがありました。盗難に入られる家が多いのでしょう。

 苦労というか神経を一番使ったのは、人物の撮影ですね。まず、協力者探しから始めるのですが、新聞社の肩書などがない中で、どうやって地元の方に信頼していただけるか。なんせ顔写真を撮るのですから。次に、撮影日の調整がありますが、何人か承諾していただいたら早速日程調整。しかし、みなさんご多忙な方が多い。こちらも自費での取材ですから、一日にふたりは撮影したい。初日は遅くとも早朝4時には自宅から福島に向かっていました。2泊3日で3人、なかなか4人までは…。ある程度隣接、近くのまちに住む方々をまとめて何とか協力していただきました。

 東京に戻るときはある意味必死でした。事故を起こせば自分の体はもちろん、撮影に応じてくれた方々の気持ちを無に帰してしまうことになります。写真を無事持ち帰ることが絶対に必要です。それを何度か繰り返して…。カメラからパソコンに保管し終えると、とにかくほっとしました!

 

Q:そんな大変な思いをしてなぜ、福島の写真を撮ろうとするのですか?

A:前回の写真展開催までの6年間、いや今もですが、本を何冊も読んだりしながら震災の現実や被災した方々の心情…など、いろいろ考えます。自分に何ができるか。そう考えたとき、写真を撮ること、記録すること、そして写真展を開催し、一人でも多くの方々に原発の事故の結果どうなるのか、大震災のことだけではなくて、考えてほしいと思っています。日本という国に住んでいる以上、地震災害からは逃れることはできません。自分自身はもちろん、子どもや孫たちのことを思うと、やはり自分なりの対策を日頃から検討し、実行に移すことは、生き残るために必須だと考えています。

 福島の場合、原発の問題が現実のこととして起こったわけです。炉心溶融なんて言葉は映画の世界のことと思っていたとしたら、それは間違いだと強く指摘させていただきたいと思います。福島では今も帰宅できず、新たな土地で生活をせざるを得ない方々が何万人といます。そのことを私たちは忘れてはならないのです。

 

旧双葉町役場

双葉町旧役場(双葉町、2020年9月4日撮影)

 

Q:被災地を10年余り見つづけてきました。この間、まちや地域、人びとや風景の何が変わり、何が変わらないか。今回の写真展でどう伝えられるのでしょうか。うまく伝えられなかった、これからの課題だと思っていることは何でしょうか。

A:津波被災地は港湾施設や道路施設、防潮堤など莫大な経費をかけ、この10年間でかなり整備が進行しています。ですから、表面的には新たな町の姿が目の前にあるため、「復興は進んだ」との印象を受けます。福島の原発被災地は津波被害に加え、放射能汚染がありますが、「帰還困難区域」においても部分的に解除されています。同区域では最後となった双葉町でもバリケードが簡易なものに変わったり、開放されてきています。

 しかし、町の姿が元に戻ったのか。例えば町に戻り住んでいる人たちは、まだ1、2割程度という現状です。幹線道路から一歩中に入れば、櫛の歯が欠ける町の姿がそこかしこにあります。

 写真はそれら“復興”した姿、整備された町の姿は撮ることができます。ですが、そこで暮らし始めた人たち、戻りたくても様々な事情から戻れない人たちの気持ちを撮ることはできません。

 今回の写真展では、協力してくださった方々の顔の表情を撮影しています。少しでも“心情”をとらえたかったからです。説明文の中では伺ったお話しの何十分の一しか文字で表現できていません。が、写真とその文章に目を行き来していただき、その方々の“心の声”を、ぜひ、聴き取っていただければありがたいです。

 

黒板

請戸小の黒板(浪江町、2021年11月4日撮影)

 

Q:実行委員会方式で写真展を開催するとのことですが。

A:自治会活動をかつて一緒にやった仲間たち数人が当日の受付などを、設営は前回に続き、新幹線で駆けつけてくれる友人が今回も“助っ人” してくれることになっています。また、写真展開催に合わせて四国から来てくれる友人もいます。地元の福島県人会が会員への周知に協力してくれています。ひとつのことを実現するため、多くの方々が手助けしてくれていることに深く感謝しています。

 

Q:最後に、みなさんにつたえたいことはありますか?

A:最近、国内では地震が頻発しており、水災害が多発しています。災害時、ひとりで生き抜くことはとても難しいのではないでしょうか。日頃から隣の人などとのコミュニケーションを積極的にとることをお勧めします。まずは、あいさつから、と。

 もうひとつ、次の3冊の本を機会があれば、ぜひ、手にしていただければと思います。

 ①『除染と国家―21世紀最悪の公共事業』日野行介著(集英社新書)
 ②『孤塁―双葉郡消防士たちの3.11』吉田千亜著(岩波書店)
 ③『誰が命を救うのか-原発事故と闘った医師たちの記録』鍋島塑峰著(論創社)

 

【開催情報】
写真展「フクシマ-東日本大震災その後の10年」
開催日時 2022年8月19~22日午前10時~午後7時(最終22日は午後4時まで)
会場 小金井宮地楽器ホール地下市民ギャラリー
※JR中央線「武蔵小金井」駅前

 

 

【筆者略歴】
 兼子義久(かねこ・よしひさ)
 1952(昭和27)年生まれ。静岡県出身。東久留米市南町在住。区役所に勤務(広報課を皮切りに地域センター、総務課、環境公害などを担当)。退職後、地元社会福祉協議会で生活支援員、NPO法人で福祉施設などの第三者評価業務に従事。そのかたわら、アマチュア写真家として東日本大震災や福島の「帰還困難区域」の撮影取材を続け、2020年1月に「東日本大震災―その後の8年」として個展を開催。

 

 

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