
戦災変電所前で「平和市民のつどい」 東大和市、3年ぶりの開催
戦争体験に触れて平和の尊さを伝える「第18回平和市民のつどい」(東大和市主催)が8月20日、都立東大和南公園にある旧日立航空機株式会社変電所(戦災変電所)前で開かれた。コロナ禍のためで過去2回はYouTube配信で実施され、本格開催は3年ぶり。戦時下の空襲による傷跡を生々しく残した変電所前で平和を祈るキャンドルが灯った。
変電所の壁面には戦闘機の機銃掃射による弾痕やB29の爆撃による傷跡が残っており、戦禍を伝える貴重な遺跡として「西の原爆ドーム 東の変電所」と呼ばれる。
所内には銃弾がコンクリート壁を貫通した穴や傷ついた変電盤も残されている。この日訪れた人たちには家族連れも多く、子どもたちは壁面の弾痕に恐る恐る触れたり、ボランティアの説明を受けながら展示された爆弾模型や空襲後の現場写真を見学したりした。
夕方からの平和祈念式典では、子どもたちによる戦争体験記の朗読や、広島での平和学習体験の報告などが行われた。日が落ちると、変電所がライトアップされるとともに、市民が思い思いの言葉や絵をかいたシェードで「平和」の文字をかたどったキャンドルが点灯された。
尾崎保夫・東大和市長はあいさつで「今もウクライナでは罪のない人たちが戦争の犠牲者となっている。戦争によって尊い命が奪われることのないよう、このつどいが平和のきっかけになればと思う」と語った。
この変電所は1938年に建設され、隣接する軍用機エンジン工場に送電していた。太平洋戦争末期、米軍による3度の空襲で工場は壊滅し、従業員や住民110人以上が亡くなったが、変電所は奇跡的に残った。朝鮮戦争の勃発を受けて1955年には米軍大和基地として接収されたが(73年に返還)、93年まで変電所として稼働した。
一時は取り壊しの危機に立たされたが、市民らの働きかけによって保存が実現し、95年に東大和市指定の文化財となった。2020年8月から約1年をかけて耐震や壁面の補強などの保存・改修工事を進め、総工費の一部はふるさと納税で賄った。
同変電所は毎週水・日曜に公開されている。 入場無料。
(片岡義博)
【関連情報】
・戦災建造物 東大和市指定文化財 旧日立航空機株式会社変電所(東大和市)
・第18回平和市民のつどい(東大和市)
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