
閉店公表から1カ月、連日行列できる 田無・フジカフェが58年間の営業に幕
西東京市で半世紀以上にわたって営業し、自家焙煎のコーヒーと居心地のよさで地域住民らに親しまれた喫茶店・フジカフェ(西東京市田無町)が8月28日、営業を終了した。最終日は通常の倍以上という220~230人の客が訪れ、別れを惜しんだ。
■「やり切った」とオーナー感慨
セレモニーなど特別なことはなく、静かに最後のお客を送り出したオーナーの伊藤信行社長(79)は「やり切ったという感じですね」と感慨深げに語った。
フジカフェは1964(昭和39)年9月、伊藤さんが西武新宿線・東伏見駅前でオープン。その後、田無駅近くに移転。紆余曲折を経ながら二つの東京オリンピックをつなぐように58年にわたって営業を続けてきたが、コロナ禍などの影響で閉店を決断した。
8月1日に閉店を発表後、ツイッター「フジカフェ(田無)の中の人」などで拡散。ひばりタイムスでも伊藤さんにインタビューし、店の歩みと閉店の経緯などを紹介した。
閉店のニュースに常連客はもちろん、かつて同店で働いた人たち、ネットで初めて知った人らが続々と駆け付け、閉店前の1週間は連日午前8時の開店前に行列ができるほど。
最終日のこの日も行列となり、開店30分で60席の店内はいっぱいに。その後もお客さんが続々と来店し、名物の焼きサンドなどに注文が集まった。終日提供で人気だったモーニングセットも午後3時すぎに売り切れとなり、入り口に「お飲み物のみの提供となります」の張り紙も。
■オーナー夫人が客席あいさつも
午後6時すぎにオーダーストップ。6時15分すぎにはともに店を切り盛りしてきた伊藤さんの妻、万里子さんが「最後のコーヒーおかわりいかがですか」と客席を回り、一人ずつに「長い間ありがとうございました」などと声をかけた。午後6時半、閉店。名残惜しそうに店内の様子を写真に撮ったり、伊藤さんらと記念撮影したりする人もいた。
お客さんだけではない。同店にアルバイトとして6年前から勤め、約3年前からツイッター「フジカフェ(田無)の中の人」を発信してきた丸田裕也さんも、「飲みやすいようにブレンドしたコーヒー、内装やBGMのチョイスなどオーナーの店づくりも含めてフジカフェが大好きでした」と閉店を惜しんだ。
伊藤さんは、この約1カ月を振り返り、「こんなにお客さんが来てくれるとは思わなかった。中学、高校から通い、この店でコーヒーの味を覚えたというお客さんがいたり、『親子3代、4代でお世話になりました。こんなにいいお店なのにどうしてやめるんですか』と言っていただいたりも。少しは人のためになったかなと思うと、やり切った感がありますね」。
前回のインタビューで「店を一日離れると落ち着かない」と話していた伊藤さん。閉店後1週間は残務整理などがあるが、その後は――。
「少しゆっくりして、これから何をするか考えながらこの秋は過ごそうと思います」
お疲れ様でした。
(倉野武)
【関連情報】
・フジカフェ (田無)の中の人(twitter)
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