市民と障害者の交流の場・ぶどうの郷 東久留米駅近くでリサイクル店、ギャラリー、喫茶も

投稿者: カテゴリー: 暮らし健康・福祉 オン 2023年1月29日

 コーヒーを飲みながら絵や書を鑑賞し、買い物もできる-と評判のスポットが、東久留米市大門町にある。精神障害者との共生社会の実現をめざす特定非営利活動法人「武蔵野の里」が運営する「ぶどうの郷」だ。東久留米駅東口から徒歩7分。旧北口商店街を道なりに黒目川に向かい、一つ目の信号を越えると右側に元信用金庫だった総2階建ての白い建物が見えてくる。

 

旧信用金庫の建物は広くて利用しやすい

 1階には、リサイクルショップ、展示ギャラリー、喫茶コーナーが入っていて、地域住民と障害者の交流の場として知られている。1階と2階の使用スペースは、それぞれ176㎡、184㎡と広い。営業時間は月曜日から金曜日までの10時から16時まで。土日、祝祭日は休む。

 

ぶどうの郷はどんなところ?

 

 ぶどうの郷は、障害者総合支援法に基づく就労継続支援B型(非雇用型)と呼ばれる事業所で、2012年3月に設立。利用者一人ひとりの障害の程度、特性、希望に沿ったきめ細かな複数の作業メニューを用意し、利用の相談には常時応じている。利用形態は、午前のみ、午後のみ、丸1日の3種類あり、利用者は自由に選べる。利用者は昼食も作り、みんなで昼食会を開いている。

 現在、約40人の利用者が2グループに分かれて11人のスタッフ、2人の講師(手芸と陶芸)とともに手芸、陶芸、ケーキやクッキーづくり、接客などに従事している。利用者が2階の作業場で作った手芸品、陶芸品、ケーキやクッキーは1階の店舗で売られている。利用者には工賃が支払われる。

 ある利用者は、店舗での接客、寄付の受付、商品の仕入れ、委託品の在庫管理、値札つけ、データ入力などをこなしている。最初の1年間は喫茶コーナーでの接客に従事していたが、内臓疾患や湿疹に罹り体調を崩して利用をやめようと思った時もあった。「スタッフのみなさんに励まされ、今の仕事に就かせてもらった。まだ注意されることも多いけど、『接客が上手になったね。あなたにはもう付いていなくていいわ』とほめられた。工賃をもらえるのもうれしい」と笑顔で話す。

 

掘り出し物に出合えるリサイクルショップ

 

 書籍から絵、衣類、食器類、手芸品、各種雑貨類と品ぞろい豊富なリサイクルショップは、掘り出し物が多いと評判で客足が絶えない。特に衣類は、高級品が格安の値段で買える、と毎日のようにやってくる人も少なくない。

 

リサイクルショップ

掘り出し物もあるリサイクルショップ。右手が喫茶コーナー、奥に展示ギャラリーがある

 

 客から支援者になった人もいる。「利用しているうちにもっと支援したくなった」と話す東久留米市在住の小池紀子さん(71)は、途上国の教育を支援するNGOでの活動経験があり、今でもNGOの支援者たちから品物の寄付を託されることがある。「託す人の思いと託された品物が、ぶどうの郷のリサイクルショップを通して必要とする人に渡る。私のしていることは誰にでもできることですが、人と物をつなぐことが、ここでは障害者の利用者の工賃にもなるのです。まさに一石三鳥、これって究極のSDGsだと思います」。

 

月替わりで楽しめる展示ギャラリー

 

展示ギャラリー

3D絵画の展示会(クリックで拡大)

 展示ギャラリーも絵画、書、手芸品などの展示が1カ月単位なので長く楽しめる。展示する作家にとってもメリットがある。使用料が5000円と格安なうえ、見に来た人たちと知り合いになり、その場で作品を買う約束をしてもらえることも珍しくない。「見に来てくれた人と作者の交流が基本なので、積極的な販売はしていない」(ぶどうの郷)けれどもリピーターも多く、展示の予約は2年先まで埋まっている盛況ぶりだ。

 4月に個展(油彩の抽象画)を開く予定の市内在住の本間弘之さん(86)は「銀座や大阪の梅田でも個展を開いたことがあるが、会場使用料が月10万円もかかる。見に来る人は専門家ばかり。ここは絵を見るのが楽しみという人たちが来てくれるのがうれしい」。本間さんの個展は3回目だ。

 1月いっぱいは、「3D絵画」の展示会が開かれている。これはシャドウボックスまたはシャドウアートとも呼ばれ、印刷された絵を何枚も切ってパーツごとに重ねることで絵に立体感を生み出す手芸だ。

ひまわりの絵を描く

ひまわりの絵を描く野崎なるみさん(クリックで拡大)

 市内に住む作家の野崎なるみさん(58)も3回目の出展。使い勝手の良さからリピーターになっている。「なんといっても使用料が安いでしょ。それに見に来てくれた人たちと絵についていろいろ話ができる。『よくここまで細かく切ったわね』と言ってもらえるのがうれしい」。ゴッホの有名な絵「ひまわり」は6枚の絵を重ね、完成まで1カ月かったという。4号仕立てで値段は5万円。売約済み(予約)の札が2枚付いている。

 10年来の野崎ファンという飯倉安輝子さん(67)は隣の西東京市在住。「ここに来て実物を見ないことには、この絵のすごさはわからないわね」と手放しでほめていた。

 

喫茶コーナーは憩いの場

 

 喫茶コーナーは人気の憩いの場だ。買い物帰りの人たちが気楽に立ち寄り、展示ギャラリーの作品を眺めながら至福の時を過ごす。市内で古物商を営む支援者の源河真理さん(71)は常連客の1人。源河さんは手編みの毛糸の座布団、帽子、指なし手袋(源河さんの命名=冬用)をぶどうの郷で委託販売もしている。

 「仕事柄リサイクルショップ巡りは日課です。ここは私のような骨董屋にとっても穴場。掘り出し物を見つけた後に飲むコーヒーは格別ね。1杯220円ですが、すごくおいしい。個人的には、マンゴープリン(200円)がおススメ」と屈託のない笑顔をみせた。このようにぶどうの郷は多くの支援者と利用者によって支えられている。

 

障害者受け入れの拡大めざす

 

 ぶどうの郷によると、現在の登録利用者は40人。1日の通所利用者約20人を、将来は30人までに増やしたい意向という。今後の取り組みについては「地域のみなさんとの交流をもっと広げたい。そのためにはイベントやワークショップなどの企画に力を入れ、利用者の作業内容も充実したい」としている。

 最後に、ぶどうの郷から利用するときのお願いがいくつかある。
 駐車場はないので、徒歩か自転車で来てほしいという。受け入れていない提供品もあり、電化製品(修理する体制がない)、男性用衣類、家具(搬入や展示に不向き)などがそうだった。

 ぶどうの郷の名前の由来:
 ぶどうの実は一粒でも美味しいが、一房になってこそ果物としての評価と、より高い価値が生まれる。転じて、人間一人の力は弱いが、みんなが力を合わせればより良い仕事が創り出せる、の意。
(鈴木信幸)(写真は筆者撮影)

 

【関連情報】
・ぶどうの郷(NPO武蔵野の里
 所在地:東久留米市大門町1-2-4
 ☎042-471-6388
 Email:budo@aroma.ocn.ne.jp

 

鈴木信幸
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