ひばりが丘図書館の「原爆小文庫」リニューアル 半世紀かけて関連図書4000冊に
原爆関連資料280冊を集めた「原爆小文庫」が1976年、旧保谷市下保谷図書館の一角にスタートした。1994年に新設したひばりが丘図書館に移転。西東京市になってからも資料収集を続け、半世紀近い間に約4000冊に育った。この夏、書架を新製品に替え、図書室奥から入口付近に引っ越し。並べ方も工夫して目に付きやすく、手に取りやすい「小文庫」に生まれ変わった。
図書館に入ると、新着図書の書架と並んで、真新しい4段の書架が目に入る。「原爆小文庫」のお出迎えだ。これまでのCD書架は後に退いた。
小文庫の専用書架は高さ約1.4メートルほどと手が届きやすい。上の4段目には漫画「はだしのゲン」の作者中沢啓治さんの色紙が立て掛けられ、筆者が訪れた日は3段目に「長崎の痕」(大石芳野)、「ひろしま」(石内都)などの写真集が見えた。両面に書物が収められる複式書架なので、後側にも関連書籍が並んでいた。
手に取りやすくするほか、今回のリニューアルでは、求める資料が探しやすくする工夫も凝らした。独自に「タイケンキ」(被爆体験記)、「ブンガク」(原爆文学)、「ブンケン」(ブックリストや原爆研究など)、「タゲンゴ」(日本語以外の資料)など8テーマに分類し、新たにシールを貼った。
ひばりが丘図書館によると、「小文庫」は現在、開架(公開)が約680冊、閉架(書庫)に約3300冊ある。地元在住で原爆資料の研究家、文芸評論家だった長岡弘芳さんが、収集した文献250冊を図書館に寄託したことが切っ掛けだった。図書館側が集めた30冊を追加、当初は280冊からスタートした。公共図書館で「原爆」をテーマにした単独コーナーは珍しく全国的に注目され、新聞や雑誌など多くのメディアで取り上げられた。市外の利用者も多い。「原爆小文庫関係新聞記事」のスクラップ帖は8月2日現在156冊になった。
今回の作業は、ひばりが丘図書館の成人サービス担当チームら5人が今年6月から始め、7月22日に一般公開した。「分かりやすく、手に取りやすく、探しやすく」。館長の山田繭子さんはリニューアルの狙いをこう語り、開架の公開文献と、書庫に収めた多くの資料とがつながるようにも配慮した。「小文庫は今後も、被爆された方々の体験資料を中心に収集し、次世代に平和の尊さが伝わるよう努めたい」と話している。
真新しい書架の最上段には小パネルが載っている。そこには「原爆小文庫」のリニューアルの趣旨が「西東京市図書館」の名でこう綴られている。
「(前略)この文庫は、実際に原爆の被害にあわれた方の体験記を中心としています。名もなき民間人を無差別に対象とした比類なき暴力の象徴である原爆は、いまと地続きの話です。
図書館は平和のためにあり、平和の上に図書館はあります。この奥に広がる無数の平和の書架への導入として、私たちは、ここひばりが丘図書館の入り口に原爆小文庫を設置いたします」
(北嶋孝)
【関連情報】
・原爆小文庫、リニューアルしました(西東京市図書館)
・西東京市図書館資料収集基準(西東京市図書館)
*「原爆小文庫」は「特殊コレクション」として「非核・平和に関する資料」の収集項目に含まれている。
・黒子恒夫著「図書館には本がある-元館長の体験的公立図書館論」(日外アソシエーツ、1995)。
*旧保谷市図書館長だった著者が原爆小文庫誕生前後の経緯について、エピソードを交えて述べている。
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ここの原爆文庫は実はすごいです。
国会図書館にもなく、長崎に行かないと見られないなあと思っていたら、ここで見つかった本がありました。
お褒めの言葉、ありがとうございます。ここの小文庫に限らず、図書資料を探す苦労はありますね。国会図書館、大学図書館になく、九段の昭和館図書室で見つけたときもありました。(北嶋)