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「取材記者は不審者として警察に通報を」 小平市教委が小中学校長に文書配布 損害賠償請求訴訟めぐり

投稿者: カテゴリー: メディア・報道 オン 2023年9月8日

 2021年に自殺した小平市立小学校の男性教諭の両親が「自殺した原因は先輩教諭によるパワハラ」として今年6月、小平市と東京都相手に起こした損害賠償請求訴訟をめぐり、市教育委員会が児童や教職員に取材する記者を不審者として警察に通報するよう求める文書を市立小中学校長に配布していたことが9月5日に開会した小平市議会9月定例会で明らかになった。

 

小平市議会

小平市議会(議会中継の動画映像より)

 

 亡くなった男性教諭の両親は6月12日、小平市と東京都に合計約9900万円の損害賠償を求めて東京地裁立川支部に訴訟を起こした。市の議会答弁などによると、学校側の聴き取り調査の結果、先輩教諭による「不適切な言動」と取れるものはいくつかあったが、遺書などはなく、自殺との因果関係は特定できなかったという。

 文書は8月25日付けで小平市立小・中学校長あてに教育指導担当部長兼指導課長名で配布された。「報告の内容」に続く「今後の対応」として、情報提供の範囲を「市立小中学校の教職員まで」として、「各校の教職員どまりの情報として取り扱い、児童・生徒、保護者、関係者の方々を不安にするような噂話の類が拡散されることがないよう、勤務時間外、学校外であっても、教職員には守秘義務が課せられていることを十分に指導してください」と注意喚起している。

 取材対応は「全て指導課を窓口」として、各校に取材依頼などがあった際には指導課を案内し、学校で個別に対応することがないよう指示。さらに「記者等が、児童や教職員への接触や取材をするような動きがあったことを把握した(学校の内外問わず)際には、指導課に一報を入れるとともに、警察に不審者として通報してください」と記している。

 この文書について市議会で「取材に来ただけで警察に通報しろという指示は取材と報道の自由の否定」と批判した伊藤央議員との質疑で、岡﨑奈緒子教育指導担当部長は「子どもたちが恐怖を感じるようなことがあってはならないという思いでの一文、子どもたちの安全、安心を守るという意味での一文と理解していただきたい」と答えた。

 7日、ひばりタイムスの青木由美子教育長への取材申し込みに対して「通常、担当課で対応することになっている」として岡﨑部長が対応した。部長は「取材対応しないとか、記者を不審者と考えているわけではなく、子どもや保護者への取材は控えていただき、取材対応は指導課が窓口になるという上での一文。議会では『通達』と表現していたが、小中学校長が集まった会議で配布した資料。その場で取り扱ったものなので、一部の言葉だけを切り取って追及されても答えられない。子どもたち、教職員、保護者の安全、安心を第一にという大前提をその場にいた者は理解しているので、(文言を)修正する必要はないと考えている」と話した。

 これに対して澤康臣専修大教授(ジャーナリズム論)は「子どもたちが恐怖を感じないように配慮することと、記者を警察に取り締まらせようとする措置には極端な飛躍がある。事実を封じようとする措置と疑われても仕方がないだろう。『その場にいた人は分かる』という部長の説明もいかにも苦しまぎれに思える。子どもを含め市民から見れば、取材は自分の意見を考えて社会に述べるチャンスでもある。子どもへの取材に慎重な配慮は当然必要だが、教育者が民主主義における報道の役割などを説明せず、ただ記者による自由な取材を避けるのでは、文部科学省の主権者教育推進の方針にも反する対応ではないか」と指摘している。
(片岡義博)

 

【関連情報】
・小平市議会 議会中継(令和5年9月定例会09月05日 初日 行政報告

 

片岡義博
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