自由学園の学生が起業に挑戦 自然素材のスキンケア商品を開発・販売 クラウドファンディングは100万円突破

投稿者: カテゴリー: 暮らし子育て・教育 オン 2023年12月13日

 自由学園の学生らが、自然素材を生かした安心・安全なスキンケア商品の開発を目指し、専門家と組んで起業に挑戦した。社名は「きみとなり」、新ブランドは「Healtic ®(ヒールチック)」。創立100年を超える学園で学生ベンチャー誕生は初めてという。10月26日に始め、11月末に締め切ったクラウドファンディングは最終的に目標の2倍、100万円を突破した。起業の志や今後の活動を知りたいと、東久留米市に広がる学園キャンパスに向かった。

 

応援のメッセージがうれしい!

 

左から粕谷さん、松島さん、原田さん。笑顔で「きみとなり」ポーズ

 

 学校法人自由学園(東久留米市)最高学部の大学生である、松島希実さん、原田朋子さん、粕谷亮さんと自由学園キャリア支援担当の小堺先生を訪ねた。

 秋の早い夕暮れが迫るキャンパスは人影もまばら、時折黙々と走るランナーとすれ違う。門から一番遠い最高学部の建物1階は学生食堂。煌々と明かりがともり、集って何かしている学生の姿が見える。今回起業を目指しているという人たちも、授業の後こんな風に活動しているのかな、と想像しながら中を覗くと、やはり松島さんと原田さんの姿があった。

 先生と名刺を交換すると、松島さんが恥ずかしそうに「私たちはまだ名刺ができていないのです」と言った。法人登記は11月10日に終わった。しかしインタビューした11月8日の段階ではまだ手続き中。いろいろやることがあって忙しいのだ。

 まず、クラウドファンディングの目標達成の感想を聞いた。
「予想以上の反響に驚いた」と原田さんが目を大きくして言う。本当に驚き、うれしくてたまらない感じだ。

 プロジェクト開始当初、起業にかかる経費50万円を目標に掲げた。この目標は公開2日目で達成した。次の目標の100万円も超えた。目標を到達したこともうれしいが、全国に散らばる自由学園の卒業生、関係者からがたくさんの応援メッセージが届いているそうだ。学内でも先生や学生から「頑張ってね」と言われて「とてもうれしい」と顔をほころばせた。

 

クラウドファンディング

目標を超えて終了したクラウドファンディングの画面(「CAMPFIRE」から)

 

 起業のきっかけとなったインターンシップへの参加は2022年から。1年と少しででここまできたそうだ。「(インターンシップを)早く経験した方が良いかな」「面白そうだな」というくらいの軽い気持ちで参加したという。

 自由学園卒業生であり、スキンケア製品の企画、販売をする現役経営者飯渕弘成さんのもとで、まずは商品開発に取り組んだ。身近にいる人のスキンケアの悩みを解決する商品を開発した。同時に組織論やマーケティングなどを学び「とても興味を持った」と語った。起業を思い立つにはどんなバックグラウンドがあったのか、尋ねてみた。

 原田さんは高校生(女子部高等科)の時に、同級生の絵やハンドメイドのアクセサリーなどを校内で販売した話を披露してくれた。友達の絵がとてもすてきで「これは価値がある、世の中に認められる」と考えたそうだ。企画は先生にも理解され実現したと言う。「私の周りにいる才能溢れる人たちの作り出すものを価値あるものとして発信したい」と話した。

 粕谷さんは「元々経済、経営の勉強をしていました」と話し始めた。「マーケティングは人間を主体として考え、思いをつなげるものだと思います。そこに興味を持ちました」
「自由学園は社会に働きかける学校だと思うので、学んだことを形にしていきたい」と真剣な眼差しで語った。

 松島さんは「学んだからこそ、動きたくなった」と語った。「自分たちの思いを形にしていくにはどう動けばよいか」を学ぶうちに、自分が組織論などに興味があることに気づいたそうだ。

 3人の言葉からは「学びを学んだだけでは終わらせない」精神が浮かび上がってきた。「学んだだけで終わらせない」ことを、楽しんでいる気持ちが伝わってきた。

 小堺先生が「起業するにあたって、自由学園を卒業してさまざまな分野の専門家となっている人たちからの協力があった。弁護士や経営者など多くの卒業生の力も学生の活動をサポートしました」と話すと、3人は大きくうなづいていた。学生たちの意欲と行動を柱に、この起業は学園全体の後押しを得て実現できた。自由学園広報によると、在学中の学生が起業するのは学園創立102年で初めての出来事という。

 

「きみとなり」の意味は?

 

 「きみとなり」という社名は、クラウドファンディングのサイト上には「ひととなり」「きみのとなり」という思いを込めた造語だ、と書いてある。写真を写す時に、3人が撮ったポーズは、手話の「君の隣」に当たるものだと教えてくれた。

 インターンシップで学んだ学生たちは、自然素材をできるだけ生かしたハンドソープ、誰にでも安心して使ってもらえる洗浄剤を開発した。使う人の「本来の美しさ」「その人らしさ」を引き出す商品を開発していくこと、商品開発や販売を通して関わる人の「自信」や「実績」を作っていくことを目指している。

「私の周りには本当に色々な才能のある人がいます。その能力をありのまま生かした商品開発をしたい」と松島さんは熱く語った。

 「市販されているスキンケア製品が使えない」という悩みを「自分ごと」として解決するための商品を生み出すことにこだわったという。専門家の力を借りて商品を開発し、パッケージ、売り方なども学んでいった。そうしてできた自社ブランドは「Healtic®」と命名した。こちらも仲間の1人が「ETHICAL」を分解、再構成して生み出した。「エシカルであること」と「癒し」の意味が重ねられている。

ロゴ

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ロゴ

原田さんデザインのロゴ

 

 例えば「大人は脱プラと言いながら、なかなか行動に移していないと思います」という声から「敏感肌考慮型洗浄剤」が生まれたという。天然成分100%の洗濯用洗剤。17リットルの量を自分で小分けして使う。

 

洗剤

見た目のインパクト大!

 

 同じ中身でも企業で商品化するとなると世の中に受け入れやすい形に加工されてしまう可能性が大きい。「私たちはその人らしさを大切にしたいのでこの形で届けたかった」と
話した。「エシカル消費(倫理的な消費)」という言葉を体現しているかのような見た目に心を惹かれた。

 環境に負荷をかけにくく、敏感肌の人にも安心して使ってもらえる「君に寄り添う」商品を生み出していきたい、と意気込みを語った。

 

毎日が発見!

 

 プロジェクトを始めてからの感想を尋ねた。
「考えること、やることがいっぺんにくる感じがしてたいへんです」と原田さんが言う。でも、元気な声で楽しそうだ。「毎日が発見、新しいことを知ったり、やったりすることはワクワクする」と続けた。

 松島さんは「自由学園の学生」と「きみとなり」の二つの立場に戸惑うこともあるが、「自分の成長にもつながると思うし、充実している、楽しすぎる」と笑顔が弾けた。

 少し考えながら粕谷さんが語った。「抽象化された理論をわかりやすく応用することが大事だと実感しています」「社会と関わってこそ、学習は完結すると思います」。一歩一歩踏みしめるような話し方には自信が感じられた。

 11月10日には法人登記が済み、正式に「きみとなり」が発足した。
 クラウドファンディング・プロジェクトは10月26日から始まり、11月30日に終了した。143人から支持され、金額は111万9,130円に達した。新たな商品開発にも意欲満々で取り組んでいくだろう。

 

リヤカー

リヤカーの整列

 

 3人に会う前にキャンパスでリヤカーの写真を撮った。こんなにリヤカーが並んでいる光景が面白かった。「こんな学校は他にない」と思った。

 「リヤカーで何を運ぶの?」と尋ねた。
 「いろんなものです。食べ物とか、材料とか、工具とか」と返ってきた。リヤカーは自由学園の生活に「なくてはならないもの」なのかもしれない。
 「これからは思い出も運ぶのかな」と言った松島さんの言葉で、またみんなが笑った。
(渡邉篤子)

 

【関連情報】
・株式会社きみとなり(HP
・我がこまやかな生活1(学部発のベンチャー企業)(自由学園南沢会
・我がこまやかな生活2(学部発のベンチャー企業)(自由学園南沢会
・自由学園(HP

 

 

渡邉篤子
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