消費税引き上げ再延期も?

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2016年1月28日

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第11回

師岡武男 (評論家)
 
 

 安倍政権の政策を大まかに政治政策と経済政策に分けて観察してみると、どちらにも刺激的で興味深い言葉が並んでいるのだが、それぞれに、つじつまの合わない内容があって「成り行きを注目」せざるをえない。

 安倍首相は、やる気満々だから、どうするのか一層気になる。安倍氏は第一次政権直前に書いた本『美しい国へ』の序文で「わたしは、つねに『闘う政治家』でありたいと願っている」と書いた。今年は新年早々から「挑戦」という言葉を繰り返している。政治家としてきわめて望ましい、まじめな態度である。だが、問題はその目標だ。

 政治政策の目標は「戦後レジームからの脱却」が基本であり、その柱は「占領憲法」の改正で戦前並みの「大国日本」を取り戻すことのようだ。しかし一方で「日米同盟」の絶対化を目指していることもはっきりしてきた。これらの諸目標には、どう考えても矛盾撞着がある。そもそも戦後レジームとは、戦後民主主義のことか、対米従属政治のことか。無理に合成すれば「対米従属大国」だろうが、そんな国が「美しい」だろうか。

 政治政策の、この問題点は、まだ分かりやすい。しかし経済政策のアベノミクスとなると、ずっと分かりにくい。この政策の当初の大目標は、デフレ経済の克服であり、手段としての「3本の矢」は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、だった。それから3年後の現在までの結果はどうだったか。今国会での施政方針演説は、その成功を誇り、いろいろと数字を挙げている。経済成長率、企業収益、雇用など。確かに強い企業の収益は増え、雇用率は改善している。しかし全体としてみると、デフレ経済は相変わらずで、成長と消費、投資の増加、物価上昇の「好循環」は実現していない。世論調査でも「景気がよくなった」という声は少ない。施政方針では、アベノミクスは「大きな果実を生み出した」と謳ったが、事実に反する強弁だ。

 3年経っても成果のなかった政策は、修正するのが当然だろう。そのままでは、参院選に臨めないのではないか。目標に向かっての挑戦と闘いをもっと強めなければならないはずだ。だからこそ、昨年秋に「新3本の矢」を持ち出したに違いない。新しい「的」はGDP600兆円、介護離職ゼロ、希望出生率1.・8だという。しかしいかにも間に合わせの追加だし、そのための政策もはっきりしない。これで参院選までに、「好循環」経済への結果が出せるとは、とても思えない。政策の在り方を根本的に考え直す必要があるだろう。

 そのせいだろうが、選挙前に安倍首相は、来年4月の消費税10%への引き上げを再延期するかもしれない、という観測が流れている。多分、それが賢明な選択だろう。それで進退きわまるのは民主党だ。断固実施すべきだと言うのかどうか。もともと消費税引き上げは民主党政権のやったことであり、12年末の総選挙での惨敗の大きな原因の一つではないか。国民から否定された政策は、率直に反省して出直すべきだったのである。(了)

 

 

師岡 武男
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