難しかった被災建物の判定 派遣職員が語る熊本地震

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙環境・災害 オン 2016年5月21日
宮川甲和さん(左)と中屋公志さん

宮川甲和さん(左)と中屋公志さん。
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 西東京市は熊本地震支援のため4月末と5月中旬の二度にわたって職員計4人を現地に派遣し、街頭募金活動で約118万円の義援金を贈るなど、人員と資金の両面で支援活動に取り組んできた。第一陣の任務を終えて戻ってきた契約課係長の宮川甲和さんと都市計画課の中屋公志さんに現地のようすなどを伺った。

 2人は被災建物の調査と危険度判定のため4月25日から29日までの5日間、熊本市桜木地区と益城町の新興住宅地に派遣された。宿泊先から現場まで、土地勘がなく迷いながら向かったが、公園の周辺には回収しきれない壊れた家財道具やパソコン、テレビなどが広く積み上げられていたという。

 仕事は、建築物等の被害状況の調査と判定。余震などで二次災害を防止するためだった。毎朝6時半にチャーターバスに乗って現場に向かい、1棟あたり30分から40分かけ、建物の外から家の土台や外壁の傷、ひび、屋根の軒裏の釘が抜けていないかなど損傷の状況を調べ、住み続けても大丈夫かどうか検査した。また、糸付きの専門の振り子を使って、建物の傾きも調べた。

 建物の現状調査の結果は、緑色と黄色、赤色の3段階で評価し、各色の紙を建物や屏などに貼る。
・緑は「調査済み」。被災度は小さいので使用可能
・黄は「要注意」。落下物などに気をつけながら、もしくは一定の修理等行えば使用継続可能
・赤は「危険」。構造物に問題があり倒壊の危険性が高く使用不可能

 2日目までの調査では、熊本市内の木造住宅と鉄構造合わせて22棟のうちの2棟が「赤」の危険判定だった。建物自体に損傷が見られなかったが、ブロック屏が倒壊しかけていた。居住者へは「住宅に住むことは今のところ可能ではある」という説明を加えた上で赤判定を伝えた。居住者の表情は少しゆるんだという。残り11棟は「黄色」。比較的良好で住むことができる。9棟は「緑」。外壁・落下物など注意が必要だが住むことができる状態だった。益城町の調査では、熊本市との市境の新興住宅地であったため、外観上ほぼ問題はなかったが、中には2階の屋根瓦が落ちて1階の屋根に穴をあけたところもなどもあったそうだ。
 調査は外観目視のほか、部屋の中で水漏れしていないかなど、居住者の聞き取り調査も行った。

 今回の支援は、熊本県からの要請を受けた東京都が区や市の協力を得て、被災建築物応急危険度判定員を派遣した。現地では建築職51人が熊本市からバスで約2時間の菊池市にある「熊本県立菊池少年自然の家」で一緒に寝泊した。食事は東京都の職員が買い出し班となってコンビニ等で用意した。

 2人とも被災地で調査活動するのは初めての経験だった。中屋さんは「責任を感じる業務でした。住民の方の不安を解消できて、感謝の言葉をかけられるとお役にたてて本当によかった、と思いました。今回の経験は東京に大震災がきたときにも役立つと思う」。宮川さんは「客観的立場で判定しなければならないのは当然ですが、赤を出せば居住者の方は家に住めなくなる。住んでいる人がいる中での調査は心情的には難しかった」と現地での苦しい心境を語った。
(柿本珠枝)

 

【関連リンク】
・被災地への支援職員の派遣(西東京市Web
・熊本地震災害義援金の街頭募金(西東京市Web
・熊本市ホームページ(熊本市
・平成28年熊本地震 災害情報(益城町

 

【筆者略歴】
柿本珠枝(かきもと・たまえ)
 旧保谷市で育ち、現在西東京市田無町在住。1998年(株)エフエム西東京開局から携わり、行政や医療番組、防災、選挙特番など担当。地域に根差した記者としても活動している。

 

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