生徒の回答

大人の悩みに生徒が回答! 西東京市立田無第一中学校の「放課後カフェ別室」

投稿者: カテゴリー: 暮らし子育て・教育 オン 2021年7月2日

 コロナ禍が続くなか、西東京市の中学校に、地域の大人たちがちょっと風変わりな企画を持ち込みました。大人の悩みに、生徒たちが回答するという内容です。ユニークな提案が、学校にどんな展開をもたらしたのか-。「西東京こども放課後カフェ」代表、古林美香さんの報告です。(編集部)(写真は、「こんなにたくさんの回答がありました。本当は全部紹介したい!」)

 

コロナ禍で悩む

 

 2016年より田無第一中学校で、中学生の居場所として、飲料やトランプなどのゲーム、漫画などが楽しめる「一中@放課後カフェ」を地域のボランティア・スタッフで実施してきました。

 この試みは市内7中学校まで広がり、西東京市との協働事業にも策定され実績を積んできましたが、コロナ禍により、2020年度は全ての中学校で足止め状態に…。

 しかし1年生は学校生活をスタートしているし、3年生も不安の中、受験を控えていると思うと居てもたってもいられません。秋ごろからは学習支援のお手伝いに少人数で入らせていただき、学校との関係をつなぎつつ、「放課後カフェに代るなにか」ができないかと頭をひねっていました。

 

食らいつく中学生

 

 年度末も差し迫った今年3月半ば、放課後カフェのスタッフや、西東京市青少年育成会「ひろがり」の仲間と相談し、掲示板を使って「一中放課後カフェ別室・大人悩み相談室」という企画を提案することにしました。よくある悩み相談は「生徒の悩みに大人が答える」のですが、立場を逆転して、「大人の悩みに中学生に答える」ことにしました。

 

回答募集のチラシ

悩み相談回答募集のチラシが掲示された

 

 田無第一中学校副校長・久山洋介先生(当時)は、「これまでカフェを通じて中学生の居場所活動をしてくれていたみなさんの熱意を受け取りました。忙しい時期ですがやってみましょう」と快諾してくださり、なんと先生にも悩みを募ることに!

 こんな悩みが集まりました。

「息子からババアと言われてショックを受けている」
「夫が地下アイドルにはまってしまった」
「筋トレが続かない」
「こどもの夜泣き」…
 田無第一中学校校長・山本一幸先生(当時)からは「中学校名を正確に書いてもらえない」という悩みが出されました。

 

山本校長

自分のお悩みと山本校長先生(当時)

 

 早速学校に廊下に掲示してもらったところ、一瞬にして、生徒が集まってきました。「密になる!」くらい、食らいついてきてくれたのです。熱心に悩みを読んでいる生徒は、どんな愛とユーモアのある回答をしてくれるんでしょうか。

 

笑いとうれしさで胸いっぱい

 

 掲示してから3日後、副校長先生から「回答がたくさん集まってきています! 取りにきてください」と連絡が入りました。急いで向かうと、すでに数十通の回答が投函されていました。

 

副校長先生

久山副校長先生と回答箱。中身を確認!ドキドキの瞬間

 

 さっそく広げてみると、シートには書ききれず、別紙にびっしり書いて貼り付けた回答がありました。「そうきたか!」「ズバッと一言で斬る」など、おもしろくてためになるのもあります。中学生がそれぞれ知恵を絞り時間をかけて書いてくれたたくさんの直筆回答を前にして、笑いとうれしさで胸がいっぱいになりました。

 翌日、集まった回答を相談者と一緒に共有しながら、いくつかの賞を決めました。どれも秀逸だったので悩みました。選んだ回答を校内に掲示してもらったのは、卒業式のギリギリ2日前です。

 

ハっとしたで賞

ハッとしたで賞【中学生による愛のある回答】

ベストアンサーその1

ベストアンサーその1【とても論理的な回答。校長先生のお悩みははたして解消されたのでしょうか?】

5ベストアンサー賞

ベストアンサー賞【難しい悩みにも大人が泣ける回答で解決してくれました】

 

 副校長先生は「生徒たちが思ったより真面目に書いていて驚いた。今回は、放課後カフェの代案ということで、どうなるかと思ったけど、これまで飲料などを提供してきたのとはまったく違う手法を提案されたことに、自分たち学校側もこの状況下に合わせて考え方を変えていかなければならないと改めて思いました」と話していました。

 生徒さんからは「面白かった。大人も悩んでるんだと思った」との感想があり、この企画は成功した!と仲間と喜びました。

 

継続は力

 

 今回、コロナ禍でも、地域の大人として中学校に関わることができたのは、学校側の理解があってこそです。その学校側の理解の源は、放課後カフェ活動を通じてこれまでに培われてきた信頼です。継続は力なり。このありふれた言葉が重く感じる瞬間でした。

 まだこの状況は今年度も続いていくでしょう。今後は、小学校と中学校をつなぐ往復書簡をつかったやりとりや、オンラインを使った活動、さらには感染対策を十分にとった上でリアルで出来ることを、また頭をひねりながら、学校と一緒に作り上げていきたいと思います。

 

【筆者略歴】
 古林美香(こばやし・みか)

古林美香さん

古林美香さん

 「西東京こども放課後カフェ」代表。西東京市内の学童クラブ父母会や小中学校PTA、青少年育成会活動に携わる。2016年インクルーシブな大阪の公立小学校が舞台の映画「みんなの学校」を自主上映。共生社会について考える会「みんなの西東京」を立ち上げる。同年より西東京市内公立中学校内居場所カフェを運営。2018・19年度「西東京子ども放課後カフェ」事業が西東京市NPO等企画提案事業として採択される。アートと人をつなぐ東京藝術大学×東京都美術館「とびらプロジェクト」7期。市内で対話型美術鑑賞のボランティア「アートみーる」としても活動中。最近DJデビューしました。

 

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大人の悩みに生徒が回答! 西東京市立田無第一中学校の「放課後カフェ別室」」への4件のフィードバック

  1. 富沢木實
    1

    とっても、良い、面白い試みですね。流石です(^^♪
    子どもたちの回答も素晴らしい!放課後カフェでの信頼のたまものですかね。

    • 古林美香
      2

      ありがとうございます! 回答はどれもよくて、全部公開したいくらいです! この1年カフェが停止する中ずっとなにか出来ないかを考えていたので、最後実施出来て本当によかったです。

  2. Kaiちゃん
    3

    関係性が対等となり、双方にとって良いコミュケーションが生まれたと思う。だれもが楽しめるとてもいい企画。生徒から先生、保護者への回答の視点がユニークで目から鱗!素晴らしい!他のも是非読んでみたい。こどもだって誰かの役に立ちたいと思っているはずで、今回の企画はいい機会だったと思う。あと古林さんのプロフも可愛いです。

  3. 古林美香
    4

    最初は生徒たちから悩みをつのってそれに大人が答えるのはどうか?という意見もあったのですが、逆転させてみました。校長先生も副校長先生も忙しい時期にこの企画にノリノリで参加してくださったのがありがたかったです。

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