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涙がこぼれる「子ども条例」誕生 紆余曲折の18年を振り返る

By in 子育て・教育 on 2018年9月22日

子ども条例議案(クリックで拡大)

 西東京市に「子ども条例」が成立しました。多くの人たちの願いと長い間の努力が実を結んだのです。子ども食堂「放課後キッチン・ごろごろ」代表の石田裕子さんに、条例誕生への思いを寄せてもらいました。(編集部)

 

 

 ううう、涙こぼれる。「西東京市の子ども条例、制定だぁ」-。2018年の西東京市議会第3回定例会、9月19日の本会議において、議員全員が賛成し、子ども条例が可決されました。

 

子ども条例への長い道のり

 私は、10年前の「西東京市子どもの権利に関する条例策定委員会」の市民公募委員でした。その8年前の2000年、東京都に「子どもの権利条例をつくろう」という活動の田無市の市民グループの代表でもありました。

 18年前の「東京都に子ども権利条例をつくろう」という活動では、大人も子どもも参加して、署名活動を行いました。その当時私は、署名用紙につける説明文を「大人のあなたへ」「子どものあなたへ」と、二通りつくり署名活動をしました。

 我が家の、当時小学生の次男と幼稚園生の長女にも、わかるように話しました。
 小学生の次男は、署名活動にも参加しました。田無駅前で、私が慣れないマイクでしゃべり、次男が目をキラキラさせて、チョロチョロと動き回り、「おばちゃん、子どもにとって良い決まりを作るために、お名前、書いて!」と頼むと、ほとんどの方が「こんなに小さな子に頼まれたらしょうがないね」と、荷物を道路におろし、老眼鏡をわざわざかけて、署名をしてくれました。

 東京都に条例をつくることは残念ながらかなわず、その10年後にまたチャンスがやってきました。西東京市に「子どもの権利条例をつくる」という動きです。

 喜び勇んで公募条件の作文を書き、条例の策定委員になりました。市民まつりで子どもヒアリングをしたり、先進自治体の目黒区へ視察に行ったりしました。中間答申までしたものの、その後いろいろな事情で、子どもの権利条例が凍結されたのは、市民の多くの方々がご存知と思います。

 そして、やっと「子ども条例」可決。
 東京都に条例をつくろうと、活動をはじめてから18年経ちました。子どもらしく、チョロチョロしていた次男は、もうすでに大人になり、チョロチョロしなくなりました。

 

子ども条例案は全会一致で可決れた(2018年9月19日)

子ども子育て審議会の森田明実会長が丸山浩一市長に答申(2018年5月25日)

 

なぜ子どものために必要か

 私がなぜこんなに、子どもの条例にこだわったのか。それは、日本が批准している「子どもの権利条約」が根底にあります。

 初めて、子どもの権利条約を知った時に、自分の子育てを振り返り、どんだけ反省したことか……。子どもの権利条約には、子どもへの接し方、子どもへの愛情、子どもとの付き合い方、ありとあらゆる子育ての基本がありました。子どもの権利条約を知ると、子どもへのまなざしが変わり、肩の力を抜いて、ありのままの子どもを丸ごと愛することができたように思います。

 子どもの権利条約に述べられている、子どもにとって一番大切な四つの権利。
 生きる権利。育つ権利。守られる権利。参加する権利。
 それを知った時に、それまで侵害していた「育つ権利」と「参加する権利」には、目の覚める思いでした。

 「育つ権利」にうたわれている、教育を受け、休んだり、遊んだり、する権利。(ひゃー、ちゃんと休んだり、遊んだりさせてるかしら)
 「参加する権利」にある、自由に意見を言う、集まってグループを作ったり、自由に行動すること。(意見を聞いてなかったなぁ。行動を制限すること、多かったなぁ)
などと、いたく反省したものです。

 ただし、権利条約は、大括りすぎて、実生活での困り事にはリンクしづらいとも感じています。自治体の状況にあったしくみとして、条例が制定されれば、子ども自身も、子どもに関わる大人達も、さらに実行性のあるものになっていくのではなかと思っていました。

 

「大人のため」にも

 子ども条例は、子どものための条例ですが、それはもちろん大人のためでもあります。子どもに関わる大人が苦しんでいる時、その大人を支えることも重要です。子どもの問題の後ろには、必ずと言っていいほど大人の問題があり、丸ごと支援することで真の解決に向かいます。

 今回制定された、西東京市子ども条例には、第2章に「子どもの生活の場での支援」と「支援者への支援」が掲げられています。

 まるで早口言葉のように「支援」と言う言葉がたくさん出て来ますね。でも、この表現しか当てはまらないほど、「支援」が必要なんだと思います。私も、青少年育成会、小学校の施設開放、子ども食堂などの活動の中で、子ども達への生活の場での支援と、支援者への支援の必要性を日々痛感しています。

 

「貧困」が見えてきた

  紆余曲折を経て、制定された西東京市の子ども条例。10年前の子どもの権利条例と違うところは「子どもの貧困の防止」が加わったところです。

 私も、子ども支援の活動の中で、過酷な状況の家庭の子どもを垣間見ています。6人に1人が貧困の家庭に育つ、と言われ、以前は気づきにくかった「子どもの貧困」が世の中に知れ渡るようになり、ようやく支援の必要性が認められるようになったと思います。

 生まれてきた環境の違いで、子どもが不利益を被らないしくみが必要です。
 子育て支援部が中心に、生活保護の担当である生活福祉課や、教育委員会ともしっかり連携し、市民もその輪に加わって、西東京市全体で子どもの育ちを応援したいと思います。
 現在、教育委員会では、31年度からの教育計画を策定中ですから、子ども条例をしっかり位置づけてもらいたいものです。

 

あきらめなかった大人、存在し続けた子ども

 東京都に条例をつくろうとしてから18年。西東京市に条例をつくろうとしてから10年。
ようやく実を結んだ子ども条例の裏側には何があったでしょうか。私は、そこに、あきらめなかった大人達と、存在し続けた子ども達がいたからだと思っています。

 大人同士の意見の食い違いの調整を、前向きな姿勢で考えるさまざまな立場の大人達。条例可決後に、禍根を残さず速やかに多様な施策を実施できるよう、この条例制定に関わったすべての大人が、それぞれに努力されたと思います。

 全員一致で、賛成してくれた議員の皆さんに感謝したいし、あきらめずに取り組み続けた行政の皆さんにも感謝したいし、この条例を待ち望んでいた市民の皆さんとも喜び合いたい気持ちでいっぱいです。そして、何よりこの思いをわかちあいたいのは、西東京市の子ども達です。残念ながら、我が家の子ども達は、条例制定前に大人になってしまいました。

 「この意見、実際に読まれているのか。このアンケートがいつから実施されているか、もし、このアンケートが以前から行われているのなら、はっきり言って意味ないですよ、資源の無駄です。なぜなら、西東京市が変わってないから。実際になおるんですかね? 子どもに対する西東京市の社会が。このアンケートで。変えてみてくださいよ。期待してますから」

 10年前に、こういう厳しい意見をアンケートに記入してくれた「16歳の男子」も、今はもう立派な大人になっていることでしょう。

 条例がなくても、そこに居続けてくれた市内の子ども達のおかげで、大人達は、その時々の子どもからの発信を受け止めて、時に励まされ、時には叱られながら、子どものための条例をつくりたいとの思いを持ち続けて来られたと思います。

 「子どもに対する西東京市の社会を変えてよ」-。これは、今現在の子ども達の声でもあると思います。

 「子ども達は健やかですか。大人の価値観に支配され、子ども時代を奪われていませんか。怒りや悲しみに耳を傾けてくれる人がいますか。『子どもの人権』は遠い国の話ではありません。毎日の子どもと大人の関係の中で問われているものです」

 これは18年前に、署名活動をする際に私が書いた文章の一部です。
 子ども条例が子育て子育ちの核となって、すべての子ども達が豊かな子ども時代を過ごし、幸せな大人になることを心から願っています。
(石田裕子)

 

【関連リンク】
・西東京市子ども条例ができました!(西東京市Web
・西東京市子ども条例の策定について(子ども子育て審議会:平成30年5月25日答申)(西東京市Web
・子どもの権利に関する条例策定委員会(2008ー2009年)(西東京市Web
・児童の権利に関する条約(文部科学省
・子どもの権利条約 日本ユニセフ協会抄訳(日本ユニセフ協会

 

【筆者略歴】
石田裕子(いしだ・ひろこ)
 夫と長男と、猫二匹が現在の同居家族。PTAが大好きで、谷戸小学校では2回、田無二中でも2回のPTA会長を歴任。人生のテーマが「子ども支援」。育成会や遊び場開放で、子どもとふれあいなから、市内2箇所の子ども食堂に関わる。谷戸小学校施設開放運営協議会管理者、青少年育成会メタセコイア 副会長、西東京わいわいネット 事務局長、放課後キッチン・ごろごろ代表など。

 

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One thought on “涙がこぼれる「子ども条例」誕生 紆余曲折の18年を振り返る

  1. 富沢木實
    1

    子供の権利条例で、日本では、4つ目の「参加する権利」が余り意識されていないことが多いと聞きます。西東京市では、ちゃんとこれが入っているので安心しました。目の前の育児放棄や虐待などへの対応は、もちろん喫緊の問題として大切ですが、「参加する権利」をどう具体化させていくのか、見守って行きたいと思います。

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