「長期運営管理契約」無効の訴え棄却 柳泉園への住民訴訟で東京地裁

投稿者: カテゴリー: 市政・選挙環境・災害 オン 2019年9月29日

東京地方裁判所

 西東京市、東久留米市、清瀬市のごみを共同処理する一部事務組合「柳泉園組合」(管理者・並木克巳東久留米市長)に対し、ごみ焼却施設の長期包括運営管理契約に基づく業者への支出命令の中止を求め、すでに支払った約12億円を管理者が賠償するよう組合に求める住民訴訟の判決で、東京地裁(鎌野真敬裁判長)は9月27日、原告住民6人の訴えを却下したうえで、そのほかの住民の請求をいずれも棄却した。原告側は控訴の意向を明らかにした。

 

 ごみ焼却施設クリーンポートの長期運営管理事業は、住重環境エンジニアリングが落札し、その後同社を吸収合併した住友重機械エンバイロメントが契約を結んだ。住民側は、この契約は(1)委託契約として手続きを進め、請負契約を前提とした入札手続きが行われていない(2)落札業者と契約業者が異なり、落札業者との間に仮契約が締結されていないので本契約は成立しない(3)原資となる3市の債務負担行為が設定されていない-などとして、契約の無効を主張した。

 これに対し判決は(1)本件委託契約が、請負契約の性質を含むことを理由とする何らかの違法があったとはうかがわれない(2)落札者の仮契約は「私法上、無効としなければならない重大な瑕疵は認められない」ため、吸収合併存続会社に継承される(3)3市の議員で構成される柳泉園組合議会で債務負担行為に基づく経費は予算で議決されており、義務費の負担金として3市が支払うので「原告らの主張は失当」-など、被告側の主張を認め、原告側の主張をほぼすべて退けた。

 

会見で判決の不当を訴える原告ら。右から川井満さん、森輝雄さん、阿部洋二さん、原告代理人の弁護士小沢一仁さん、布施由女さん、事務局の環境ジャーナリスト青木泰さん(東京・霞が関の司法記者クラブ)

 

 東京地裁内の記者クラブで開かれた会見で、原告代表の阿部洋二さん(清瀬市)は「2年に及ぶ私たちの主張が認められなくて残念。正当な考えが認められるまで活動しないといけない」と述べた。原告の一人で西東京市議の森輝雄さんは「柳泉園側の主張をなぞっているだけの判決でとても残念。新たな判断を求めたい」と述べ、清瀬市議の布施由女(ゆめ)さんも「私たちの主張をまったく理解しない判決。このままではいけない」と話し、いずれも控訴の意向を明らかにした。

 原告の一級建築士、川井満さん(東久留米市)は、柳泉園側が当初、委託契約を前提に議会の議決は要らないと述べていたことに触れながら、「請負契約の実態を裁判所は理解していない。これが委託契約で通るなら何でもできてしまう」と指摘し、「判決は建設の実態を無視している」と批判した。

 住民訴訟は、地方公共団体に対する監査請求の結果に不服の場合に提起できる。原告らは2度にわたって柳泉園組合に監査請求した。判決は特に2度目を取り上げ、「同じ趣旨の請求を繰り返した」とみて「不適法」と判断。また監査結果の通知から1年以内に訴えなければならないのに、出訴期間を過ぎているとして、2度目の監査請求をした原告のうち6人の訴えを却下した。

 柳泉園組合の鹿島宗男助役は法廷を出たあと「まだ原告の皆さんが控訴するかどうか分からないので、コメントは差し控えさせていただきます」と述べた。

 

柳泉園クリーンポート

 

 ごみ焼却施設クリーンポートの長期包括運営管理契約の件では、2016年8月24日の議会で、15年間約144億円の債務負担行為に基づく当該年度経費を追加する一般会計補正予算案が可決された。8月31日に入札公告、翌2017年3月13日、応募した2社のうち、住重環境エンジニアリングが約133億円で落札。3月28日、仮契約の「承諾書」を組合に提出した。

 ところが3日後の31日、同社は住友重機械エンバイロメントに吸収合併され消滅した。4月20日、臨時議会が開かれ、それまで議会の議決は不要としていた長期包括運営管理契約の承認と、事務方トップの助役処分が提案され、ともに議決された。その後間もない4月28日、柳泉園組合と、落札社を吸収合併した住友重機械エンバイロメントとの間で委託契約が締結された。運営管理するごみ焼却施設クリーンポートは2000年11月、住友重機械工業が建設、稼働した。落札、契約社とも住友重機械工業の関連会社だった。

 柳泉園側に対する監査請求は2016年11月、契約締結の取り止めを求めて提出。同年12月28日付けで柳泉園組合の監査委員は請求を棄却した。このため翌2017年1月に東京地裁に契約締結の差し止めなどを求める住民訴訟を起こした。

 その後2018年2月、今度は締結された委託契約に瑕疵があるとして契約の取り消しなどを求めて監査請求。4月12日付けで請求は棄却された。このため2018年5月8日、契約が締結された事態を受けて、あらためて住民訴訟を起こした。

 柳泉園組合は、西東京市、東久留米市、清瀬市の3市の廃棄物を共同で処理する特別地方公共団体。構成市選出の議員が議会を構成し、予算の大半は3市の負担金で占められている。ごみ処理施設のクリーンポートは2000年から稼働。処理能力1日105トンの焼却炉3基で運用している。
(北嶋孝)

 

【関連情報】
・柳泉園組合(HP
・市民発!柳泉園組合長期包括契約問題(HP

 

北嶋孝
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