各省庁白書の図表を横断検索 津田塾大で初のデータベース化
津田塾大学(小平市)のプロジェクトチームは、中央省庁が毎年公表する白書の図表をキーワードで横断的に検索できる「白書・審議会データベース」を作成し公表した。白書を横断的に検索できるデータベースはこれまでなく、テーマごとに各種情報が分かりやすい図表で追えるため、教育や研究だけでなく企業活動などにも活用できそうだ。
データベース化のきっかけは、津田塾大客員教授の村木厚子さん(元厚生労働事務次官)の「自分が講演などで使った白書のデータや図表の存在が一般に知られていない。既に公表されているのに残念」という指摘だった。社会の現状を客観的に把握しようとする際、情報のありかがわからなかったり、情報の正確さや新しさを確認できなかったりする。また情報の検索やデータからの図表作成に手間暇がかかるなど、公的情報の利用に大きな支障があった。
そこで同大「ダイバーシティセンター・フォー・インクルーシブリーダーシップ」(DCfIL)の研究プロジェクトの一つとして、総合政策学部が「データ活用型政策研究と実践的教育プログラム開発」の企画を立ち上げ、2年前から15~20人の学生たちがデータの入力を始めた。
データベースには、各省庁が発行する白書のうち「男女共同参画白書」や「国民生活白書」など22の主要な白書について、2001年から最新統計の図表3万件以上を蓄積している。「図表タイトル」「白書名」「掲載年度」「統計データが含まれる年」の項目で検索。ヒットした図表を並べる順を指定したり、図表作成の元データにアクセスしたりすることもできる。
ただ、図表タイトルには白書の記載通りに記入しなければヒットしない。例えば「若者」は白書によって「青少年」「未成年」などと表記が分かれる。このためプロジェクトチームは検索に役立つ「関連用語リスト」を作成しており、今後「テーマ別検索」の項目を組み入れたい、としている。
データベースの活用で毎年の社会の動向や変化を客観的情報で把握できるほか、1つのテーマについて複数の白書を比較しながら各省庁の取り組みを検討できる。今後、時事的テーマに対応するため、政府が諮問する審議会などの図表を収録していく。
プロジェクトチーム責任者の伊藤由希子教授は「学生や一般向けに社会の課題や政策を理解する入口になればと思う。使いやすさを通して深い学びにつなげるのがこれからの課題。まず授業で使って活用を広げていきたい」と話している。
問い合わせ先のメールアドレスはempowerment@tsuda.ac.jp
(片岡義博)
【関連情報】
・政府のデータから図表を検索できるデータベースを公開しました(津田塾大学・DcfIL)
・白書・審議会データベース(津田塾大学・DcfIL)
【筆者略歴】
片岡義博(かたおか・よしひろ)
1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。2009年から全国52新聞社と共同通信のウェブサイト「47NEWS」で「新刊レビュー」を連載。著書に『文章のそうじ術』(言視舎)など。小平市在住。