「comma,coffee」の新しい日常 快適な時間や空間を作り出す
新型コロナウィルス感染拡大を防止する対策をとりながら、経済活動をしていく、という新しい日常。多くの人が訪れる人気店ではどんな対策を講じたのか、ひばりが丘のカフェ「comma,coffee」の様子を見て、最初に口をついて出たのは「いいね〜」という言葉。感染予防の対策でありながら、それを感じさせない模様替えだ。自粛要請を受けた期間中、形を変えて営業を続けた店長の最相友恵さんに話を聞いた。
ポッカリ空いた空間
comma,coffee(西東京市ひばりが丘 ひばりテラス118内)のホール席は長方形。四隅にテーブルが置かれている。一辺が壁に接するように置かれている。「横並び」「対面の場合の距離」への考えが見てとれる。スポットライトの当たり具合も良く、「ここに座ると向かいが壁で落ち着くな」と自分が座る姿を想像した。
ホールの中心はポッカリと空間ができている。テーブル間の距離は十分だ。そこに据えられた植物のオブジェ。アジサイ、スモークツリー、ウンベラートの鉢植え、の組み合わせ。白と藤と緑が程よく調和している。思い切った大きさで、この空間の主役のような顔をしている。
「テーブルを配置したら真ん中が空いてしまって、苦肉の策でこのようにしました」と店長の最相さんは言う。良く見ると鉢植えと台座は以前から使われていた。身内に提供してもらったガラス瓶。「アジサイは自宅の植え込みのもの。スモークツリーは同じ建物内の花屋『風葉花』の店長がアイデアを出してくれました」と笑いながら話した。
静かだが、生命力を感じる植物が、空間を華やかにし、活き活きとしたものにしている感がある。
座席の空きを待つのは店外にし、カウンター周りの密集や密接の解消にも策が講じられている。
落ち着いて、お茶とお菓子を楽しむには良い空間が誕生した、とも言えるcomma,coffeeの改装を歓迎する声も届いていると言う。
コロナ禍でわかったこと
comma,coffee が臨時休業したのは3月28日から。その後、4月3日より、テイクアウトのみで営業した。
理由を尋ねると「休業することも考えたが、何かできることをやりたい、と考えた。地域の人に支えられ、ここまで来たことに感謝している。外出がままらない時に、手作りのお菓子を提供できたら、ちょっとした楽しみになるのではないかと思った」と答えが返ってきた。
たった一人で厨房にたち、お菓子を作り、販売した。
散歩の途中で立ち寄る人、来店を楽しみに来た人、家族へのプレゼントを注文する人、沢山の来客があった。
その中に目立ったのは、オープン当時通ってくれた常連さん。雑誌や、テレビ番組などで紹介されるに連れ、常連客の足は遠のいていた。
懐かしい顔だった。まだ客の姿がまばらな状態で、カウンター越しに話をする余裕もあった。そんな蜜月の時を思い出し「嬉しかった」と言う。
地域に根ざしたカフェとして大切なのは「人とのつながり」ということを、再び強く思い、原点に戻る気持ちになった。「(テイクアウトの営業を)やって良かった」という言葉は力強かった。
飲食だけでない、店の思い
コロナ禍になる前から考えてはいたが、実現できなかった「オンライン販売」も始めた。テイクアウトで販売できない遠くの人に商品を届けるというもう一つの試みだ。商品に手書きのメッセージを添え、梱包し、配送する作業は簡単ではなかった。
「家にいて何か届くって嬉しいですよね」という最相さんの思いを裏付けるように、全国から注文があり完売した。「利益を求めて、というよりも、店を知って貰うため」という。通常営業と並行して続けるのが難しい、というところが悩みどころだと話した。
最相さんに話を聞いたのは、いよいよ明日から店内での飲食が始まる、という日。朝からそわそわしているという。店のスタッフも出勤し始めた。厨房に活気がある。
「お客様が来てくれることは本当に嬉しいけれど、怖い気持ちもある。葛藤しています」と語る気持ちは、多くの飲食店で働く人に共通する思いだろう。
飲食店で提供されるのは、食べ物だけではない。快適な時間や空間も大きな要素だ。それを作り出す店の思いが「新しい様式」でも伝わってくる。
自粛営業中に最相さんがいろいろ試作したというパフェを、ゆっくり楽しみに来たいと思った。
(渡邉篤子)(写真はいずれも筆者撮影)
【関連情報】
・comma,coffee(コンマ,コーヒー)(HP)
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