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コロナ禍で障害児らの学びに困難 津田塾大の研究会が初の実態調査

投稿者: カテゴリー: 交流・共生 オン 2020年10月26日

「第2回学びの危機カンファレンス」のZoom画像。司会の松崎良美さん(上)と柴田邦臣さん

 津田塾大学(小平市)の「学びの危機(Learning Crisis)」研究会は10月25日、新型コロナウイルス感染症の拡大が障害のある子どもたちの学びに与える影響について全国の特別支援学校に聞いた初の実態調査の中間報告をオンライン会議上で公表した。「新しい生活」に適応しつつも、さまざまな困難を抱えている子どもたちの姿が浮き彫りになった。

 

6割以上がオンラインで学習支援

 

 コロナ禍による長期休校や授業のオンライン化などで混乱の中にある子どもたちの学びの困難について考えようと、津田塾大インクルーシブ教育支援室の有志が4月に研究会を発足。「学びの危機(まなキキ)プロジェクト」を立ち上げ、障害児らの学びに役立つリンク集やオンライン学習の助言集などさまざまな試みを実施してきた。

 

 実態調査の中間報告は、10月24日、25日にオンラインで開催された大学祭「津田塾祭」と「元気村まつり」(小平市民活動支援センターあすぴあ主催)に連携した「第2回学びの危機カンファレンス」の中で発表された。オンライン会議システムZoomによるカンファレンスには約180人が登録。報告は研究会事務局長の松崎良美助教が担当した。

 

 心身に障害のある児童・生徒が通う全国の特別支援学校に、長期休校中や休校明けの学校の様子、教科別の授業・学習の状況、学校や子どもたちをめぐる状況などに関する調査票を送り、これまで123校の教員たちからさまざまな声が寄せられた。

 

 休校中、6割以上が学校のホームページやYouTubeなどのオンラインで学習支援を実施。各校の課題は「インターネット環境の不備」や「教員間の連携の困難」「子どもの生活リズムの崩れ」などおおむね共通しており、オンライン支援を実施しているかどうかは実施する教員の有無にかかっていることが分かった。一方で学校とつながりを保つ手段としてオンラインが果たした役割も確認された。

 

現場のコミュニケーションに支障

 

 7割近くが、新型コロナの流行前と比べると学校の運営に「大きな変化があった」と回答した。学校行事の中止・縮小、集団行動の制限によって学級や学年を超えた交流・活動が失われ、「対話的な学び」もできないため、情操教育やコミュニケーション力を培う場が減ったという。

 

 教育上、特に苦労した科目としては「音楽」「体育」「家庭・技術」。歌うことや身体接触、調理が制限されるためだった。結果的にコロナ対策によってオンラインでは代替できない学びの内容が明らかになった。マスク着用によって教師の表情や言葉が伝わりにくく、子どもの言葉も聞き取りにくいとの指摘もあった。

 

ライブ配信で紹介された「おだまき工房」の作業風景(小平元気村おがわ東内)

 

 子どもたち自身は感染の不安や学校に行く不安を抱え、休校中に便秘や食欲低下、アレルギーといった症状が出たり、感情表現の低下や感情コントロールの困難といった変化を示したりした。内面への影響について「学校生活にも制限があるので積極性や自主性が抑えられているように感じる」「体力面、精神面の双方に耐える力が低下している」との指摘があった。

 

 子どもたちはマスク着用や「3密」回避などの「新しい生活様式」が当たり前になり、集団活動への欲求が低下しつつあるのではないか、状況を受け入れて表面的には統率が取れていても逆にそれだけ我慢しているのではないか、と懸念する声もあがった。学校側は「感染予防」と「学びの保障」との板挟みで苦慮しており、子どもも教員もさまざまな局面でコミュニケーションに困難を感じていることが分かった。

 

努力して学ぶ意味

 

 報告に対して参加者はチャットを通じて「身体面の負担に対する認識が甘かったことに気が付いた」「子供たちの精神面へのサポートの重要性を実体験と報告会からあらためて感じた」といった感想や質問が寄せられ、松崎さんらがコメントした。

 

 研究会代表の柴田邦臣准教授は「今回の調査を通じて私たちは学ぶことがどれくらい重要で、どういう努力が必要かについて考え直し、気づくことができた。私たちにとって学校に行くことや学ぶことは当たり前過ぎて、その意味についてこれまで深く考えてこなかった。だからこそこれから考えていくべき課題は数多くある」と話した。調査の最終報告は来年1月の「第3回学びの危機カンファレンス」で発表する。

 

 報告後、コロナ禍でなかなか実現できない障害生徒の「職場見学」をオンラインで実施するという試みがなされた。コーヒーの焙煎所「ソーシャルグッドロースターズ千代田」(千代田区神田錦町)、裂き織りでかばんなどを制作・販売している「おだまき工房」(小平市)、パソコンを使った仕事などを受注している「札幌チャレンジド」(札幌市)の職場の様子がビデオやライブ配信で紹介された。
(片岡義博)

 

【関連情報】
・第2回学びの危機カンファレンス×津田塾祭×元気村まつり?(「学びの危機」Counter Learning Crisis Project

 

【筆者略歴】
 片岡義博(かたおか・よしひろ)
 1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。2009年から全国52新聞社と共同通信のウェブサイト「47NEWS」で「新刊レビュー」を連載。小平市在住。

 

 

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