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コロナを危機克服のきっかけに 津田塾大「学びの危機」調査の最終報告

投稿者: カテゴリー: 新型コロナウイルス子育て・教育 オン 2021年1月24日

 津田塾大学(小平市)の「学びの危機(Learning Crisis)」研究会は1月23日、新型コロナウイルスの感染拡大が障害のある子どもたちの学びに与える影響について全国の特別支援学校に聞いた実態調査の最終報告会をオンラインで開催した。さまざまな課題に直面しながら学びの危機を克服しようと懸命に努力する現場の姿が浮かび上がった。(写真は、オンライン会議に臨む松崎良美助教(左)と柴田邦臣准教授)

 

オンラインが格差を拡大する

 

 昨年8〜10月、心身に障害のある児童・生徒が通う全国の特別支援学校に、長期休校中や休校明けの学校や家庭、子どもたちの状況について尋ねる調査票を送り、196校から回答が寄せられた。

 焦点の一つがオンライン教育の実施だ。休校中、6割近くがオンラインで学習支援を実施していたが、調査結果からあぶり出されたのは学びをめぐる格差の問題だった。

 

最終報告会のオンライン画面

 

 通信環境の整備状況による格差をはじめ、オンライン教育を実施する教員がいるかどうか、実施への理解が周囲にあるかどうか、家庭に保護者がいて学習を援助できるかどうか――などによって学習環境や成果に大きな差が生じる。こうした学校間、家庭間の格差は障害児教育にとどまらず、教育全体の課題になる可能性があるという。

 昨年10月に発表された中間報告では、子どもたちが休校や感染対策に適応しつつも、さまざまなストレスを抱えている実態が明らかになった。感染や登校への不安を抱いたり、便秘や食欲低下、アレルギーといった体調不良、感情表現の低下などを示したり。最終報告では、感染対策の徹底が逆に子どもたちの恐怖心をあおり、登校への意欲をそいで不登校の傾向を助長している可能性が指摘された。

 

学びの本質を問い直す

 

 オンライン教育をめぐる設備・人員・スキルの不足や、非対面教育の限界といった課題が報告される一方で、 非常事態における取り組みによるさまざまな果実も挙げられた。

 長期休校の中では教職員間が情報を共有しながら家庭との密な連絡を取るなど、関係者が連携して学校を運営していくプロセスが見られた。教師たちはオンライン教育や感染対策に対して自分たちができることから実行し、課題を見出しては少しずつ改善している。コロナ禍が教育や学校運営の抜本的な見直しにつながった面があるという。

 オンライン教育は数々の問題をはらむ一方で、動画提供といったささいな交流の機会でも子どもたちに安心感を与えるといった意味では、子どもと学校とのつながりを保つというという役割も果たしている。登校できない状況が、逆に学校に行ける喜び、学校の大切さを痛感させたという指摘もあった。

 研究会事務局長の松崎良美助教は「今回の事態は私たち全員にとって『学びとは何なのか』『何のために学ぶのか』を問い直す大きな機会とも捉えられる。コロナによって学びの機会を失われたと考えるのではなく、ではどうしたら学べるのかを探っていくことによって、子どもたちの学びをサポートしていきたい」と話した。

 

できることを少しずつ

 

 研究会代表の柴田邦臣准教授は最後に「感染拡大を機に教育がもともと抱えていた問題が表面化し、学校の役割分担や協働のあり方が変容を迫られている。実際に学びの危機を克服しようとしている学校の存在にはものすごく励まされる。できることを少しずつでも懸命にやっていこうとする先生たちの姿は、子どもたちにポジティブな影響をもたらすと思う。未来に向けて危機を克服するためにできることからやっていく。第2次緊急事態宣言をそのきっかけにしたい」と締めくくった。

 「学びの危機」研究会は、感染拡大による子どもたちの学びの困難について考えようと、津田塾大インクルーシブ教育支援室の有志が4月に発足させた。「学びの危機(まなキキ)プロジェクト」を立ち上げ、障害児らの学びに役立つリンク集やオンライン学習のサポート、英語サロンなどさまざまな取り組みを試みている。今回の実態調査結果は詳細な分析を経て報告書にまとめられる。
(片岡義博)

 

【関連情報】
・「学びの危機(まなキキ)」(Counter Learning Crisis Project

 

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