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障害児に向けオンライン教材紹介 津田塾大の研究会が「学びの危機」サイト開設

投稿者: カテゴリー: 子育て・教育 オン 2020年5月15日

津田塾大学

 新型コロナウイルス感染拡大による長期休校によって、学ぶ機会や意欲を失っている障害のある子どもたちを励まし勇気づけようと、津田塾大学(小平市)の研究グループがネット上のオンライン教材を紹介するポータルサイト「学びの危機」を開設した。大学生や大学院生が中心となって作成し、教材の特徴や使い方ガイドのほか楽しみながら学べる工夫やアイデアを満載している。

 サイト開設のきっかけは深刻な危機感からだった。全国でオンライン授業導入の動きが加速しているが、多くの公立学校、特に障害児が通う特別支援学校では通信環境や指導方針が整わないまま、点字や手話の読解力といった最低限必要な学びを得る機会が奪われている。子どもらの間に学びに対する疑問や不信、あきらめが広がっているのではないか―。

 

津田塾大学インクルーシブ教育支援室主催の講演会

 

 子どもたちが直面している「学びの危機」に対して、津田塾大学インクルーシブ教育支援室(IES)の有志が「Learning Crisis研究会」を結成し、「学びたくても、そのきっかけや方法がわからない」という聴覚・視覚障害や発達障害がある子どもと保護者らに向けて、「学びの危機(まなキキ)プロジェクト」(Counter Learning Crisis Project)を立ち上げた。

 障害児に向けたオンライン教材はほとんどなく、まとめサイトも教材の内容や使いやすさを評価したものは見当たらない。そのため同研究会の大学生、大学院生、教員、大学OBら約10人が中心となって、障害児も利用できる無料のオンライン教材をリサーチ。テストや受験対策ではなく、学ぶ意欲を刺激するかどうかを基準に選んだ約160のオンライン教材を紹介するポータルサイトを4月30日に正式公開した。

 

ポータルサイト「学びの危機」の一部

 

 サイトは英語、国語、算数・数学、理科、社会の5教科ごとに、担当者が自己紹介や体験談に併せて、その教科を学ぶ意味や楽しさ、勉強方法を具体的にアドバイスしている。

 アニメやゲーム、海外のサイトも含んだ多彩な教材を内容によって分類し、それぞれに「一部聴覚を使用するゲームもありますが、ほとんどが音なしで遊ぶことができます」「口元を映しており、字幕でどのように発音するとよいか解説があります」など障害児が利用する際の使い勝手や長所・短所についてコメントしている。このほかYouTubeの自動字幕機能やスピード調整、コンピューターウイルス対策といった、オンライン学習をする際に知っておくと便利な知識とテクニックも紹介している。

 IESディレクターの柴田邦臣准教授によると、オンライン教育は子どもにとって耳あたりが良く、第一印象で受け入れやすい内容に偏る懸念があるという。教育の現場では自分にとって都合が悪く、目をそむけたいものにも向き合う学びこそが求められる。「学びの危機」ではオンライン教育の可能性を探るとともに、学校でこそ得られる学びを応急処置的に再現することを目指した。紹介する教材は今後も増やしていくという。

 柴田准教授は「オンライン化などITの活用は避けて通れないが、促成の強いられた遠隔教育は、特に障害のある子どもの学びに大きな混乱と格差を生みかねない。子どもたちの学びの危機は社会の未来の危機に直結し、医療危機や経済危機をも上回る真のクライシスといえるかもしれない。私たちの提案はたたき台で、もっといろいろな可能性や探索をしていけるはずだ。同じ思いの先生や現場の支援者の方々にも広く呼びかけて、知恵と経験と力を分けていただければと思う」と話している。

 「学びの危機」に関する相談や問い合わせ先は、以下のサイトに掲載されている。
(片岡義博)(写真はいずれも津田塾大学インクルーシブ教育支援室提供)

 

【関連情報】
・「学びの危機」Counter Learning Crisis Project(HP
・津田塾大学インクルーシブ教育支援室(facebook

 

【筆者略歴】
 片岡義博(かたおか・よしひろ)
 1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。2009年から全国52新聞社と共同通信のウェブサイト「47NEWS」で「新刊レビュー」を連載。著書に『文章のそうじ術』(言視舎)など。小平市在住。

 

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