ウクライナ避難民とできること 食べて、歌って、クリスマスを祝う それぞれの応援の形

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2022年12月31日

 12月24日、東伏見公園で元気に遊ぶ子どもたちの脇を抜けて、会場のシェアキッチンPARKSIDE LABO (東伏見公園横研究所) に到着。そこでは、ウクライナとルーマニアのクリスマスパーティーが開催されていた。(写真は、日本語で開会の挨拶をする避難民のエリザさん(中央)、イベントを企画したともこさん(左)、右がノリさん)

 2021年初夏にオープンしたPARKSIDE LABOは、東伏見公園脇の築30年の建物をリノベーションしたオフィス兼レンタルスペースだ。玄関入り口は2階まで吹き抜けた高い天井にお洒落な照明が取り付けられている。10分遅れで会場に到着した時には、すでに入りきれないくらいの人が集っていた。

 

料理

所狭しと並べられたルーマニアの料理

 

 イベントにはウクライナ避難民8人を含む約60人が参加。ルーマニアのポテトサラダやオードブルがテーブルいっぱいに並べられ、ウクライナの郷土料理である手作りのボルシチが振舞われた。ウクライナとルーマニアを紹介するスライドや音楽も用意されていた。

 パーティーは西東京市民の別當紀人さん(ノリさん)とルーマニア料理研究家のスクタリウともこさんのコラボ企画で実現した。参加費用と雑貨販売の売上げの10%をウクライナへ寄付する。

 ノリさんは、西東京市でたった一人のウクライナ避難民であるトゥロベーツ・エリザベータ(エリザ)さんの身元保証人だ。ウクライナ旅行中、当時日本語を勉強していたエリザさんと出会った。旅行が大好きで100カ国以上を訪れたノリさんは、留学や海外での就労の経験も豊富だ。広く世界の見聞を深める中、難民問題については長く考えてきた。

 エリザさん受け入れ後に直面した問題は、就労だった。日本語や英語が不自由な避難民らは、言葉の壁からほとんどが仕事に就けない。無職の彼らには仕事やビザの問題が立ちはだかる。入国から1年後にはウクライナに帰国しなければならないケースもあるという。日本での生活費の足しや、母国にいる家族へ送金する資金も必要だ。ノリさんは何とかしてこの問題の解決の糸口になればと「ウクライナ避難民運営食堂Nadiya」をエリザさんと日本人の有志で立ち上げた。

 ノリさんが目指す「現在無職のウクライナ避難民が働けるようなレストランを作りたい」との思いが実り、西東京市役所近くの創業サポート施設「リップル西東京」で毎週木曜日にボルシチを提供できるようになったのが12月初旬だった。Nadiya(ナディア) はウクライナ語で希望という意味。避難民らの希望の光になる様にという願いを込めた。

 パーティーに先駆けて筆者もNadiya食堂開催日に合わせて来店。ボルシチとボルシチの材料ビーツの煮汁で炊いたご飯のお結びを食した。ボルシチを特徴づける深紅色はビーツの色素。鮮やかな深紅色のスープに添えられたサワークリームの白色とのコントラストが食欲をそそる一品。野菜たっぷりの優しい味だった。ロシアの食べ物と思っていたが、ビーツが栽培できるのは暖かい東スラブ地域。ウクライナの郷土食だった。

 

ボルシチ

「飲む輸血」と言われるほど栄養価満点のボルシチ

 

 同じような勘違いが、読み親しんだ絵本「てぶくろ」― ウクライナ民話と知ったのも、今回の戦争勃発の後。会場に設置されたスクリーンでは、ウクライナについてのニュース、歌などの映像も流された。ロシアについてもウクライナについても、本当に無知だと思い知らされる。

 ノリさんは問う。「私たち日本人はウクライナ避難民が日本に来ただけで満足していませんか」。 彼らの日本での生活はまだスタートラインに立ったばかり。日本に来ても人生はまだまだ続く。その後をどう支えていくかの課題に取り組んだノリさんは、「ウクライナ避難民食堂Nadiyaは『受け入れるだけをゴールにしない』をコンセプトを立ち上げました」と語った。

 会場には、アースデイネット連絡協議会の田中敏久さんも応援に駆け付け、ジョン・レノンのHappy Christmas(War is Over)をスクタリウさんと共に歌った。

 ルーマニア発祥の楽器、パンフルートの奏者で、作曲も手掛ける櫻岡史子さんも来訪。パンフルート奏者として世界的に著名なゲオルゲ・ザンフィルの一番弟子ラドゥ・ネキフォル氏に師事し、国内外で精力的な活動を展開している。風を孕むような独特の音色でクリスマスキャロルや自作のメロディ―を奏で、会場に集う参加者を魅了していた。

 

櫻岡史子さん

ルーマニアの楽器パンフルートを紹介する櫻岡史子さん

 

 ウクライナの地図が描かれたトレーナに、大空の青、小麦の黄色であるウクライナカラ―のマフラーとリストバンドをした男性は、毎週日曜日、新宿の街頭に立ちウクライナ支援デモに参加しているという。

 

ウクライナのカラーグッズ

ご自慢のウクライナカラーグッズを身に着けて応援

 

 今回のイベントを取りまとめたスクタリウともこさん。ポテトサラダやルーマニアワインを用意し、食からも応援。ルーマニアの親戚や友人たちから、どのようにウクライナの人々をサポートしているかを聞き、日本でも何かできることはないか? と考えていた。ノリさんから共同でクリスマスパーティーを開かないかとお声がかかり、協力できることがある! とうれしかったと語った。

 「たくさんの皆様にお越しいただき、協力して素敵なパーティーになった。感謝の気持ちでいっぱいです」。ともこさんの言葉通り、様々な形の支援を得て、避難民を応援する活動とレストランの周知、ファンドレイジングを目指したクリスマスパーティーは大盛会だった。

 ウクライナ人と交流して歌って食べることも、ウクライナ応援の一つのスタイルとノリさんは言う。それぞれの応援スタイル。食べて応援、歌って応援。デモに参加して応援。身に着けて応援。ウクライナの雑貨や本を買って応援。民族音楽で応援…。

 

一緒の写真

ベルギー、トルコを経て日本に逃れてきた避難民親子の笑顔も見られた。同郷の友と会えてうれしいと…

 

 ロシアのウクライナ侵攻から10カ月。クリスマスも砲火が止むことがなかった。厳寒の冬、戦禍の中、人々はどのように暮らしているのだろうか。何もできないと無力を嘆くばかりでなく、どう関わっていくかは、わたしたち次第。それぞれが出来ることを探していこう。
(卯野右子)(写真は筆者提供)

 

【関連情報】
・ウクライナ避難民運営食堂 Nadiya ( ゆめこらぼ
・Home | Nadiya (jimdosite.com)(準備中)
・リップル西東京(HP
・スクタリウ ルーマニア料理教室 (ブログ
・アースデイネット連絡協議会(略称:アースデイネット
・櫻岡史子(パンフルート奏者)(HP
・KAZKA – I AM NOT OK [Official Video] ウクライナ歌手が歌う、ウクライナの「今」(YouTube
・ウクライナ民話 絵本「てぶくろ」(Amazon

 

卯野右子
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ウクライナ避難民とできること 食べて、歌って、クリスマスを祝う それぞれの応援の形」への4件のフィードバック

  1. 川地素睿
    1

    ご苦労さまでした。早めに会場から失礼しましたが、ボルシチも口に合いおいしくいただきました。難民支援は、持続しないと解決になりません。大切なことは世界が「平和」に向けて努力することです。死んだり苦しんだりするのは、普通に人間です。

    • 2

      川地さま、会場でお目にかかれて嬉しかったです。次の予定がありながら、短い時間でも足を運んでくださる川地さんのような方々にも支えられていますね。一人では無力でも皆で力を合わせて行動すること、そして継続していくこと、大事ですね。アースデイネットの田中さんが、♬War is Over, if you want it ♪ を、♬War is Over, if we want it ♪と You(あなた)を We(わたしたち)と歌い替えられていたのが胸に響きました。

      • 田中敏久
        3

        卯野さん、分かって頂けて本当に嬉しいです。当日会場であまりきちんとお話できなかったかな?と反省していたのですが、皆さんに伝わっていればこんなに嬉しいことはありません。何せ当日は、二人でやる筈だった音響と映像の仕事を一人で担っていたので終始バタバタで、二人で唄うのにリハもできず、ミキサーのバランスをその場で調整しながら唄っていました・・・(^_^)(因みに当日流したビデオ等の準備も) 最後に唄ったウクライナ国歌もそうですが、<音楽は言葉を超え、場所を離れても繋がれる>と信じています。

    • 4

      田中さま、当日はお一人で映像に音響、そして歌まで!八面六臂のご活躍でしたね。KAZKA さんの ♬ I AM NOT OK ♪ もとても胸を打つものがありリンクを関連情報に掲載させていただきました。ウクライナ国歌の譜面のご用意に合わせてフリガナまで振っていただきありがとうございました。最後にみんなで歌えてよかったです。本当に音楽は人と人を繋げてくれますね。

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