東久留米市でウクライナ応援コンサート 市民参加の実行委員会が企画、準備
ロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まって1年になろうとしているなか、東久留米市でいま、市民によるウクライナ応援コンサートの準備が進んでいる。2月26日(日)に市内のまろにえホール(東久留米市生涯学習センター)で開かれるコンサートには、ウクライナ出身でオペラ歌手、ウクライナの民族楽器・バンドゥーラ奏者として世界的に有名なオクサーナ・ステパニュックさんが出演する。
コンサートを企画、準備しているのは、東久留米ウクライナ応援コンサート実行委員会(細谷祥子委員長=個人参加)の人たち。きっかけは、昨年7月にアメリカで開催されたアマチュア世界相撲大会へウクライナの選手たちの出場を応援するプロジェクトだった。
プロジェクトは日本の相撲文化を世界に広めるための活動をしているウクライナ相撲連盟JAPAN事務所(松江ビオレッタ・三池哲也共同代表)が中心になり、ロシアの軍事侵攻で世界相撲大会への出場が危ぶまれていたウクライナ代表団(役員2人、選手6人)を日本に呼んで生活と練習の場を確保し、大会に出場してもらおうと始まった。
JAPAN事務所による代表団の受け入れがウクライナ政府に認められ、来日が実現した。日本の市民たちによる手厚いサポートで日本での生活や相撲の練習も順調に進み、世界大会へも出場できた。その結果、女子重量級のイワンナ・ベレゾフスカ選手が金メダルを獲得したのをはじめ、日本で合宿した選手6人全員がメダリストになり、チームの獲得メダル数でも日本に次いで2位(9個)という快挙を成し遂げた。
世界相撲大会でのウクライナ代表団の活躍を見届けた松江ビオレッタさん(38)は、激しさを増す一方のウクライナでの戦闘に心を痛め、日本でのウクライナ応援活動を始めたいと強く思うようになった。手を差し伸べたのは、松江さんが住む東久留米市で活動しているうたごえ広場の仲間たちだった。仲間たちは、ウクライナ代表団の世界相撲大会出場にも協力していた。こうして昨年の8月には実行委員会の結成に漕ぎ着けた。
世界的に有名なウクライナ人オペラ歌手が出演
ウクライナ応援コンサートと銘打つ以上、出演者は著名な歌手か演奏家ということになる。松江さんたちの頭にすぐ浮かんだのが、ウクライナ出身でオペラ歌手、ウクライナの民族楽器・バンドゥーラ奏者として世界的に有名なオクサーナ・ステパニュックさんだった。ステパニュックさんは2003年に初来日し、いまは日本に住みながらオペラ歌手・バンドゥーラ奏者として日本と世界で公演活動を続けている。東日本大震災で父親や母親を失くした子供たちのために宮城県仙台市、福島県相馬市などで毎年チャリティーコンサートを開いていることでも知られる。
ウクライナの首都キーウから南へ約80㎞にあるシニャワ村で生まれたステパニュックさんは、8歳でチェルノブイリ原発事故を経験。ロシアによる軍事侵攻では家族や親せきが被害を受けた。「人々に感動を与えるのが私の仕事」というステパニュックさんは、平和への熱意を込めて呼びかける。
「音楽によって人々は生きる希望を持ち他人への愛を育み、自分を幸せにすることができます。音楽は平和な世界を実現する力になり得るのです。私は母国・ウクライナと世界の平和のために、心を込めて歌い演奏します。日本の歌も歌いますので、みなさん2月26日にはぜひ、まろにえホールに来てください」
彼女の美しく透明感のある歌声とバンドゥーラの弾き語りは、聴きに来てくれた人たちにきっと満足してもらえる―との確信の下、ウクライナ応援コンサートの取り組みは動き出した。
出演交渉は、主に彼女と面識のある松江さんが担当。松江さんは「コンサートを通して多くの人たちにウクライナを身近に感じてほしい」一心で、ステパニュックさんに出演を依頼、彼女も快く承諾してくれた。コンサートの開催地は、企画した自分たちの住む東久留米市以外にない、と実行委の全員一致で決めた。ステパニュックさんのコンサートが西武線沿線で開かれるのは、東久留米が初めて。市内でそれなりの規模のコンサートを開くとなると、まろにえホール(500席)しかない。
「ステパニュックさんが世界的に有名でも、実際に会場に足を運んでくれる人がどのくらいいるだろうか」。実行委の全員が抱える不安だった。実行委の活動で少しずついろんな人たちが協力してくれるようになり、実行委員長の細谷祥子さん(68)は「ウクライナへの思いはみんな同じだと実感しています」と手ごたえを感じている。
在日本ウクライナ大使館とウクライナ相撲連盟JAPAN事務所の後援も決まり、カラーのチラシも2万5000枚を印刷。個人や各種団体、喫茶店などへの協力要請も始まった。2月1日付の東久留米市の市報でも紹介される予定。
細谷さんからコンサートへの協力を求められた佐藤成美さん(61)は、喫茶店などにチラシを置いてもらう活動を地道に続けている。「良い音楽を東留米の人たちに聞いてもらいたいし、そのために私もできることがあればという思いで参加しています」。
音楽の力でウクライナに平和を
コンサートに賛同して強力な助っ人も現れた。読売センター東久留米第一・東久留米西口店(荻野進代表)がコンサートのお知らせチラシを独自に作り、新聞に折り込んで講読者に届ける。チケットも扱う。実行委にとってこれ以上の吉報はない。
コンサート当日は、会場入り口にウクライナ支援のための募金箱とステパニュックさんの最新のCDの販売コーナーも用意される。
実行委員会では「平和を愛する人たちには、一人でも多くコンサートに足を運び、ステパニュックさんの歌と演奏を聴いてもらいたい。コンサートがウクライナとウクライナ国民にとって一日も早く平和が戻るための一歩になれば」と願っている。
コンサート当日(2月26日)は、受付開始14時30分、開場15時、開演15時30分。チケットは前売り3000円(当日3500円)、予約による置きチケットOK、全席自由。
第一部・歌と弾き語り、第二部・演奏。主な演目(演奏)は、キエフの鳥の歌(ウクライナ民謡)、セレナーデ(シューベルト)、浜辺の歌(成田為三)、オペラ「ロメオとジュリエット」より―私は夢に行きたい(グノー)他。
収益の一部はウクライナ支援に充てられる。
(鈴木信幸)
*会場は、まろにえホール(東久留米市生涯学習センター)、東久留米市中央町2-6-23
問い合わせは、090-8947-8994(細谷祥子)まで。
チケット購入は、チケットぴあ、またはTEKET
【関連情報】
・ウクライナ応援コンサート(HP)
・ウクライナ相撲の支援プロジェクト(ウクライナ相撲連盟JAPAN事務所)
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