けやき公園

進化するひばりが丘団地の「にわジャム」 3年ぶり開催、過去最大のにぎわいに

投稿者: カテゴリー: 暮らし文化 オン 2022年12月1日

 ひばりが丘団地エリアのコミュニティー組織「まちにわ ひばりが丘」が3年ぶりに隣接する公園を会場に7回目の周年祭「にわジャム2022」を開催した。新型コロナウィルス感染症を拡大させないよう、2020年は拠点施設「ひばりテラス118」の広場で小規模なマルシェを開いた。2021年はほとんどのコンテンツをオンラインで提供した。形を変え続けてきたイベントが、今年はようやく従来に近い形に戻った。公園を埋めた約6000人の人波は、ずっと地中にたまっていた水が湧き出てできた流れのようだった。(写真は、賑わうひばりが丘けやき公園)

 

副題のあるにわジャム

 

(クリックで拡大)

 10月22日正午過ぎ、西東京市西けやき公園や東久留米市東けやき公園に続々とキッチンカーがやってきた。通路や広場にはテーブルクロスをかけた机と椅子が並べられた。テントにライトを吊り下げ、「にわジャム2022」の1日目、「にわバル」は陽が傾き始める午後3時からスタートした。

 今年のにわジャムには「PRAY for the WORLD from HIBARIGAOKA〜ひばりが丘から平和を〜」という副題が付いている。日頃ランチタイムに出店しているキッチンカーの店主には事前に主催者側が趣旨を説明し、できるだけ「世界の味」を提供してもらうよう依頼した。キューバサンド、中国の餃子、バーニャカウダなど、「世界」をテーマとしたフードとドリンクを目当てに三三五五、お客さんがやってきた。

 この副題をつけた理由を「まちにわ ひばりが丘」の事務局長若尾健太郎さんは次のように語った。

 「今回、『PRAY for the WORLD from HIBARIGAOKA』というテーマにしました。紛争・戦争・環境問題などに直面している世界各地に対して、このひばりが丘という小さな地域から何かできないかという思いから、つけました。一人ひとりでできることは限られているとしても、絵本『スイミー』のように、みんなの思いと行動が集まれば、世界の裏側で起こっていることも変えられるかもしれない。変えられなくても、そこに思いを馳せられる、温かい地域でありたいと思いテーマを設定しました」

 絵本『スイミー』は小さな黒い魚のスイミーが、暗い海の底を泳ぎ続け、賢く、逞しく成長する物語。小さな魚が集まって一匹の大きな魚となって泳ぐシーンが印象的だ。若尾さんの頭に、はっきりそのシーンが描かれているようだった。

 

食堂

人をつなぐまちの食堂

 

 しばらくすると「林家久蔵落語会」を見終えたお客さんが公園にやってきた。会場となった「ひばりが丘のアフタースクール common」から椅子を運んでくれた。落語会はキャンセル待ちが出る盛況であった。ひばりテラス118で開かれた「西東京市写真発掘隊」のフォトイベントを訪れた人、これから「にわシネマ」に行く人にとっては、ちょうど小腹の空いた時刻とあって、食堂に立ち寄っていた。商店街でマルシェを主催する人、まちづくり、コミュニティー作りに日頃から関わる人、報道関係者、色々な人が一緒に「食べること」を楽しみ、「人に会うこと」を楽しんでいるようだった。陽が落ちた公園に赤々と火が灯る。

 語りあう人たちの顔からは、特別な夜をもっともっと楽しみたい、そんな思いが感じられた。

 

まちにわマルシェの新たな顔

 

 10月23日は朝から空が晴れわたった。「今日は人出が多いぞ」とスタッフは気を引き締めた。

 11時より「まちにわマルシェ」が始まった。近隣のお店、地元の野菜販売、子どものためのもの作りワークショップ、手芸サークルの作品、公園の通路に沿ってテントが並ぶ。日頃よりまちにわ ひばりが丘と繋がりのある、障害者の就労継続支援をする事業所の出店も3つあった。板橋区の「小茂根福祉園」の施設の利用者さんの縫ったバッグは、その仕事の丁寧さ、生地の手触りの良さ、プリントされた絵の温もり…。シンプルな布のバッグに幾重にも魅力が重なっていた。材料にこだわったクッキーや焼き菓子を販売する施設も活気があった。地域に開かれた施設でありたいという事業所の思いが、お客さんと触れ合うことで少し実現しているようだった。

 

KOMONEST

小茂根福祉園のブランド「KOMONEST」

 

アイデアから運営まで住民が担う

 

 一般社団法人「まちにわ ひばりが丘」の正会員であるエリア内の各マンションの管理組合、団地管理組合の理事が中心となって企画から運営までを担った2つのイベントがあった。

 午前中からスタートした「写真撮影会」はプロのカメラマンに写真を撮ってもらう企画だ。普段着で家族の写真を、ハロウィン用の仮装で特別な1枚を、とびきりの笑顔のポートレートを、それぞれの要望に沿ってテキパキと撮影していく。カメラマンはまちにわ師の木村守克さん。レフ板を見ただけでちょっと緊張気味のお客さんに、優しく声をかけながら何度もシャッターを切る。「今年の年賀状にも使えるね」という喜びの声も聞こえていた。

 

スタッフミーティング

ハロウィンスタンプラリー、スタッフミーティング

 

 午後からはにわジャム恒例のハロウィンスタンプラリーが始まった。ひばりが丘団地エリア内に住む住民が多数スタッフとして参加し、その数は30人を超えた。エリア内に4カ所のチェックポイントを設け、子どもたちがスタンプラリーに参加する。ゴールにはお菓子のご褒美が待っていた。

 

仮装行列

仮装も楽しい! 友だちと参加するのも楽しい!

 

 通り抜けられる公園の両方の入り口から子どもたちがやってくる。家から仮装して歩いてくるだけでもワクワクしたことだろう。「今日は私たちが主役」と顔を輝かせていた。たくさんの仲間を見てさらに盛り上がり、台紙を受け取ると張り切ってスタンプラリーに出発していた。

 最初に受付を済ませた子どもたちがゴールする頃が人出の最盛期となった。駐輪場は自転車で溢れ、スタッフは「こんなことは初めて」と大慌てで対応していた。参加者は300人を大きく超えた。学校の友達、習い事の友達、と参加者はエリアの枠を越えていた。「他のところでも『にわジャム』が話題になっていますよ」という声も聞いた。にわジャムは地域のお祭りの一つになりつつある、と感じられた。

 

るるめちゃん

東久留米市の人気者、るるめちゃん登場

 

 会場で子どもたちと写真に写ったり、握手をしたり、踊ったりと活躍していたのは東久留米市地域資源PRキャラクターである「湧水の妖精るるめちゃん」。呼んできたのはエリア内のマンションの住民だ。市との交渉から当日の段取りまで、全て管理組合の理事や有志で行った。るるめちゃんは西東京市の住民とも気軽に触れ合い、会場の雰囲気を盛り上げた。ひばりが丘団地が東久留米市、西東京市にまたがるエリアならではの微笑ましい光景だった。

 

楽しい時の余韻は長い

 

 午後の光から夕刻の柔らかな日差しに変わる頃、にわジャム2日目は終わりの時を迎えた。公園では片付けが始まっていたが、ひばりテラス118の周りではお祭りの余韻を楽しむかのように、暗くなるまでお客さんが集っていた。

 3年間のブランクを経て、6000人の来場者があった。地域の繋がりと住民の参画によって、にわジャム2022は「まちにわ ひばりが丘」の未来を感じさせる出来事となった。
(渡邉篤子)

 

【関連情報】
・にわジャム2022(まちにわひばりが丘

 

渡邉篤子
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