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「にじみとぼかしは水彩の得意技」 画家の笠井一男さんがPARCOで水彩画ライブ

By in 芸術・文化, 催事・集会 on 2019年11月7日

出来上がったサンミシェル橋の絵とともに立つ笠井一男さん

 水彩紙にブルーの絵の具がにじむと、青空が一面に広がる。塗り残しの余白が、霞む地平となって浮かび上がる。やがて川面が広がり、アーチ型の橋がじんわりと姿を現す-。西東京市の「ひばりが丘PARCO」が主催する「ひばり文化祭」最終日の11月4日、水彩画家、笠井一男さんのデモンストレーションが5階の特設会場で行われた。狭いスペースに立ち見も含めて100人を超える人たちが集まり、笠井さんの筆さばき、色の広がりを食い入るように見つめていた。

 笠井さんは東京藝術大学大学院修了。水の特性を生かして描く新しいスタイルの水彩画で人気が高い。横浜画塾を主宰して10数年。ほぼ毎年個展を開き、NHKカルチャー教室の水彩講座や海外のスケッチツアー講師も務める売れっ子だ。今年のひばり文化祭ポスターに使われたメイン画像は笠井さんの水彩画。笠井さんの作品を集めた「プチ水彩画展」も期間中、同店4階で開かれた。

 

近作13点を集めたプチ水彩画展

 

 午後2時過ぎ。笠井さんは会場の舞台左側に立ち、イーゼルに架けたB2版の水彩紙に鉛筆で軽く下絵を描いた。やがて大きな刷毛はけで紙面にたっぷり水を染みこませる。「初めに水を含ませると、にじみやぼかし、グラデーションができます。水彩画の得意技です」と笠井さん。旅先で撮った写真を手元で見ながら、パリのセーヌ川に架かるサンミシェル橋の風景を描き始めた。右側のスクリーンにデモ画面が大写しになり、離れていても絵筆の使い方が見えるライブになっていた。

 空と橋と川。画面が大づかみに塗り分けられる。「細かい所は気にしない。直し始めて重ね塗りすると彩度が落ち、色が死んでしまいます」「明るい色が先。暗い色は後から乗っけます」。笠井さんはこう言いながら、色付けした画面を拭き取って薄めたり削ったりもする。「明るい部分は色を塗りません。塗り残しが水彩画の重要な技法です」とも話した。

 

ぼんやりした色地が次第に形となって浮かび上がる

 

 絵筆が動くにつれ、川面に光と影が生まれる。広いグレー地が、石造りのアーチ橋に仕上がっていく。街の建物に窓が開き、橋の欄干が浮かび上がる。「最後は暗い所を決めにいきます」と話しながら細い筆が走ると、橋上の車や人影がリアルに現れた。鮮やかなパッションオレンジは信号機やテールランプの赤。「塗り残せなかったところは、最後に白を入れましょう」と一筆、二筆。塗り残しの「白」に始まり、締めくくりは決めの「白」だった。

 開始から約1時間20分。笠井さんが「これで終わりにしていいですか」と語りかけると、見つめていた人たちから大きな拍手が湧き上がった。舞台に近寄って、出来上がった絵を見たりスマートホンをかざして写真に収めたりする人も多かった。

 

真剣な表情で絵を描く

大勢の視線が笠井さんの絵筆の動きに釘付け

 

 笠井さんが舞台を降りると、残った人たちが質問攻め。一段落して話を聞くと、意外な展開が待っていた。「ぼくはパルコの宣伝部に20年余り勤めていて、ひばりが丘店オープンの宣伝も担当しました。女優のともさかりえさんが出演したCM映像を、いまの草刈店長と一緒に作ったりしたんですよ」。近くにいた草刈洋店長も「机を並べて仕事してました」。エーッ、そうだったんだ。

 ひばり文化祭の掉尾を飾るイベントは、1993年の開店から26年後の「里帰り」企画だったのか。サプライズで頭の中が一瞬「白」くなる。最後の見聞が、止めの「一筆」と重なった。
(北嶋孝)

 

【関連情報】
・第3回ひばり文化祭(ひばりが丘Parco
・塾長の日記(アメーバブログ

 

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