縄文の北極星

縄文時代の星空が見られる! 多摩六都科学館プラネタリウムで投影

投稿者: カテゴリー: 文化 オン 2021年11月4日

 縄文時代の人々はどんな星空を見ていたのか―。そんなロマンチックな疑問に答えるプラネタリウムのプログラムが多摩六都科学館(西東京市芝久保町)で投影されている。全編生解説の「縄文の北極星を探して 星降るムラのタイムトラベル」(11月28日まで)。縄文時代は「北の目印」である北極星など、今とは星の見え方が違う様子が映像や解説で示され、思わず投影された星空に見入るはずだ。(画像は、多摩六都科学館プラネタリウムプログラム「縄文の北極星を探して」のイメージ図=西東京市教育委員会提供)

 

 1万3000年前にタイムトラベル

 

 青森市の三内丸山遺跡などが世界遺産登録され、ほぼ同時代のものとされる西東京市の下野谷遺跡も注目されるなど縄文ブームが続くなか企画されたプログラム(約45分)。前半は現代の上映当日の星座解説、そして後半で今回の舞台となる縄文の世界に誘う。街の明かりが徐々に消えて暗さが増すにつれ、夜空に見える星の数が増えていく。そしてプラネタリウムのシミュレーションで、1万3000年前の縄文時代に見えたであろう満天の星空が浮かび上がる。

 今回のテーマは「北極星」。生解説も担当している多摩六都科学館天文グループリーダーの齋藤正晴さんによれば、「北極星は北の方にあって動かないとされていますが、本当は北極星もわずかに動いている。何千年何万年もたつと歳差運動というものにより、地球の回転の軸の指す方向が変わる。それによって天の北極の位置も変わってしまうので、北極星にふさわしい星も違う星になってしまうんです」。

 そもそも、私たちが一般的に北極星と呼ぶのは、「天の北極の近くにあって北の空でほぼ動かない星」のこと。今ならこぐま座のポラリスになるが、時代によってはこと座のベガ、りゅう座のトゥバンが該当し、それが「北の目印」だったかもしれない、と齋藤さんはいう。トゥバンは4等星で、今の北極星の2等星に比べると、それほど明るい星ではないが、「当時は街明かりもないし、トゥバンも見えていただろうから、もしかしたら」とも。

 

 現代では見られないあの星も確認

 

 北極星以外でも、時代によって天の北極の位置が変わるのと同様に、地球全体で見える星の様子も変わることから、「今では南の方に行かないと見られない、あこがれのあの星が、このあたりでも見られたんですね」と齋藤さん。その星が何かは、ぜひプラネタリウムで、ご自分の目で確認していただきたい。

 ただ、縄文時代の人々が実際に星を見ていたかどうか、たとえば縄文土器に星の模様や星座の形があったというような確実な証拠はない。それでも、舟での遠出など、夜移動する際には星しか頼りになるものはなく、齋藤さんは「縄文人もきっと星空を見ていたと想像するのもおもしろい」とロマンをかきたてる。

 

 近隣5市の縄文施設、遺跡も紹介

 

 同プログラムでは、星だけでなく、同館を運営する小平、東村山、清瀬、東久留米、西東京の5市にある縄文時代に関連した展示のある施設や遺跡も紹介。小学校高学年から大人まで楽しめる内容になっている。

 折しも新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言解除と重なったプログラム投影。「新規感染者も減ってきて、お孫さん連れのおじいちゃんおばあちゃんや、ファミリー層も増えてきました」と齋藤さんもうれしそう。

 母親、娘と3世代で訪れた都内在住の女性(34)は、「5歳の子供にはちょっと難しかったけど、プラネタリウムのワクワクする感じは味わえた。街の明かりがだんだん暗くなって、縄文の星空が見えてくるのもよかったし、地球の動きや当時の星空はこうだったんだなと思いました」と話していた。

 同プログラムは、土日祝日と11月17日(水)は1日2回、その他の平日は1日1回投影(月曜と11月24日は休館)。プラネタリウム観覧付き入館券は大人1040円、小人420円から。
(倉野武)

 

【関連情報】
・全編生解説プラネタリウム 縄文の北極星を探して~星降るムラのタイムトラベル~(多摩六都科学館

 

倉野武
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