VR体験

大航海時代の星空を体験 多摩六都科学館がVR特別企画

投稿者: カテゴリー: 文化 オン 2018年4月23日

 天球儀は、地球から見える星や星座を球体(天球)に投影した模型。天球を外側から見られるため古くから天文学の世界で使われてきました。多摩六都科学館(西東京市芝久保町5丁目)は4月15日、大日本印刷(DNP)と協力して、この天球儀の内側から星や星座を見るVR(バーチャルリアリティー)体験会を開きました。プラネタリウム上映やワークショップにも参加した渡邉篤子さんの報告です。(編集部)(写真は、昔の星空をVR体験)

 

展示とVR体験
 写真や映像でしか見たことのない、憬れの人に会いに行くような気分で多摩六都科学館に向かった。エントランスホールは、大勢の人が集まって、ざわざわした雰囲気が感じられる。さらに気持ちが高揚した。天球儀を見て、触れた。1600年に作られた「ホンディウスの天球儀」のレプリカ(複製)とはいえ、実物の天球儀だ。星空を宇宙の外から俯瞰する不思議な感覚。まるで宇宙が1個の惑星のようだ。星空やプラネタリウムで星座を見る感覚とはかけ離れている。

 セピア色で直径42センチ。天使、女神、牧神、植物、動物、帆船などの星座が、大聖堂の天井画のようなタッチで描かれている。私たちは現在、星座は88と覚えている。1928年の国際天文学連合が決めたからだ。しかし当時まで使われながら、このとき採用されなかった星座がいくつもあった。自由に星座を考えられた時代には、猫が好きな人が考えた「ねこ座」や国王の名前の入った「チャールズのかしのき座」などが誕生した。400年前の人々の想像力に思いを馳せる。

 

何が見えてるかな

 

 ゴーグル型のヘッドマウントで見ると、天球儀の中に入り込んで絵や文字を内側から見る感覚になった。裏から透かして見ているので左右は逆転している。これでやっと「星座を見る」感覚になった。双眼鏡で景色を見るように、視界をずらしながら全体を見た。

 コントローラー付きのヘッドマウントを装着すると、今度は足元から360度のパノラマが広がった。天球儀の中に立ち、目の前に広がる星空を見る感覚になった。この映像がプラネタリウムの大きなドームに投影されることを想像して期待が膨らんだ。

 

美術館もVR体験

 

 コントローラーを操作し、美術館の壁に掛かった絵画を手に取ってみる、裏返してみる、など仮想の動きも経験した。VRで「地球儀の上に立ち、天球儀を中から眺めるという体験もできます」という説明には驚き、機会があったら試してみたいと思った。時の経つのも忘れるほど夢中になり、小学校時代、「科学クラブ」に入っていた時の気持ちにタイムスリップした。

 展示スペースの反対側には、現存する世界最古の地球儀のレプリカが置かれていた。1492年にマルティン・ベハイムが作った「ベハイムの地球儀」。海の青の落ち着いた色調に目を奪われた。地球上の赤道、経線に加え、星占いで使用される黄道12星座が描かれている。ところがよく見ると、アメリカ大陸がない! コロンブスの「発見」以前に作成されたことがよく分かる。

 

アメリカ大陸がない!

 

 アフリカ大陸の海岸沿いには王家の紋章が並ぶ。植民地時代を彷彿とさせる痕跡だ。日本はやや大きめに記され、「東方見聞録」の注釈が添えられている。

 地球儀の隣にパソコンが設置されていた。その画面上で地球儀を回転させ、絵や文字を自在に拡大したり日本語を表示したりできる。様々な時代に作られた地球儀を見比べると、世界史が視覚的に捉えられると実感した。

 開館と同時に観覧者が大勢訪れた。展示やVR体験の説明にあたる大日本印刷の担当者が「遠方から新幹線で来館した人もいた。科学ばかりでなく、アートに興味のある人も多かった」と話していた。

 今回展示された天球儀、地球儀はフランス国立図書館所蔵のレプリカ。大日本印刷の3次元デジタル化技術によって、多くの子供や大人が気軽に科学と文化を体感できるようになった。

 天球儀と地球儀を携えて大海へ飛び出して行った大航海時代。当時の人々がどのように世界を捉え、宇宙を捉えていたかを知る貴重な機会となった。

 

ワークショップ
 ワークショップは2回とも満席。親子の参加者も多く、盛況であった。
 用意されたのは、エントランスホールで展示されていた地球儀の模型と現在の地球儀。双方を見比べて違いを発見するところからスタートした。(写真1)

 舟形多円錐図法で描かれた地図を切り離し、プラスチックの球に貼付ける。(写真2)
 切るのも、貼るのも緻密な作業で、始めは見守っていたお父さん、お母さんも手伝いだし、親子で協力して進めていた。(写真3)

 

写真 1

写真2

写真 3

写真 4(すべてクリックで拡大)

 

 一家4人で参加した受講者は「プラネタリウムを見たい、という4年生の息子のリクエストに応えた。息子は小さい時は体を動かすことが好きだったが、他にも興味が出てきた。身近にこういう場所があってよかった」と話した。(写真4)

 講師を務めたDNPミュージアムラボの石橋響子さんは「地球儀の展示やプラネタリウムの上映があり、大勢の参加があった。今日の体験を通し、科学に興味を持ってくれると嬉しい」と笑顔で語った。

 

プラネタリウム上映

(クリックで拡大)

 5月6日まで上映されている「ねこ座はどこへいった〜忘れ去られた星座たち〜」は、展示されているホルディウスの天球儀をプラネタリウムに投影する企画だ。ドームに映し出された映像を見ると、その大きさと広がりに圧倒される。生解説を聞きながら、現在は星座として認められていない星座を探したり、なぜ天球儀が必要とされたかなどの問いかけに答えたりしながらプログラムが進んだ。外側から眺めた天球儀の画像から内側から見る画像に変わる瞬間は、座席に座っていても宙に浮揚する感覚になり、まさに天球儀を「体感」することができた。

 プラネタリウムの前には、入場を待つ長い列が続いていた。この回の観覧券は完売。午前10時30分に来て券を入手したという市内の小学生は「学校ではサイエンスクラブに入っている。もっといろんなことが知りたくて、ここには何度も来ている。今日はお弁当を持って1人で来た」と頼もしい。投影を待つ間も「宇宙飛行士の訓練はきつそう」「プラネタリウムの操作をする人もいいな」と将来の夢と希望を話していた。

 多摩六都科学館広報担当の石山彩さんは「世界的に貴重な資料が3Dという新しい技術で身近な物になった。天球儀を内側から見る、外側から見るという体験を楽しんでもらいたい」と語った。
(渡邉篤子)(写真1~4は筆者提供)(他はひばりタイムス撮影)

 

【関連リンク】
・【4/15限定企画】天球儀のVR体験会、地球儀工作ワークショップ(多摩六都科学館
・全編生解説プラネタリウム「ねこ座はどこへいった?~忘れ去られた星座たち~」(多摩六都科学館、5月6日まで)

 

 

渡邉篤子
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大航海時代の星空を体験 多摩六都科学館がVR特別企画」への1件のフィードバック

  1. 1

    マルティン・ベハイムが地球儀を制作したのは1942年ではなく、1492年です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。(編集部)

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