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教育委員会資料を有力会派に事前説明、他会派には机上配布のみ 西東京市議会予算委が審議空転2日間

By in 市政・議会 on 2019年9月18日

 西東京市議会の予算特別委員会(坂井和彦委員長)が当初予定の9月10日と11日の2日間、予算審議が行われず、日程を追加した3日目の9月12日になって一般会計補正予算案などを可決して終わった。当初の2日間は、教育委員会が作成した資料を有力2会派に先行して事前説明したのに、他会派や無所属議員には机上配布しただけで説明がないとの声が上がり、説明のなかった会派、議員だけでなく、説明を受けた会派も市教委の対応を批判。市教委側の経過説明と謝罪が続いた。

 

何が起きたのか

 

 発端は、机上配布資料に添えた1枚の説明文だった。宛先は「市議会議長」、発信元は「市教育委員会教育長」。印が押され、文書番号も記された9月5日付の公文書だった。役所内で「鏡(かがみ)文」などと呼ばれる文書の末尾に「各市議会議員に配布方、よろしくお願いします」と依頼したあと、「なお、自民党、公明党の方々には事前説明の際にお配りしております」とあった。

 

問題となった鏡文。赤線は筆者

 

 配られた資料は「西東京市教育委員会の権限に属する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価(平成30年度分)報告書」。教育委員会の業務を自ら点検・評価して毎年まとめる刊行物で、19日から開かれる決算特別委員会向けに提出された。ところが「特定会派には事前説明し、そのほかには資料配付のみ。会派や議員に明らかに差をつける措置だ。そのうえ公文書で堂々と明記している」として、説明を受けなかった会派の議員らが議長応接室に市教委幹部を呼んで説明を求めたり、質疑の進め方を協議したりして1日目が終わった。

 11日に開かれた予算委で教育委員会が説明した事実経過によると、「点検・評価報告書」は8月20日の教育委員会会議で決定された。9月2日に自民党と公明党に連絡し、3日に自民、4日に公明の両会派にそれぞれの控室で事前説明した。その他の議員には6日、議会事務局を通じて机上配布した。渡部昭司教育部長は「日程が詰まっていたため、他会派、議員には、9日の文教厚生委員会が終わってから日程調整し、説明予定だった」と述べ、日程調整前に問題化したとの態度を崩さなかった。

 

不適切な事務処理

 

 その後、発言を求めた木村俊二教育長は「教育委員会が作成した『点検・評価報告書』配布の際、添付した文書に不適切な記載があり、議会のみなさまに多大なご迷惑をおかけしました。心よりお詫び申し上げます」と述べ、「不手際の原因は、教育委員会が組織として十分機能できなかったことによると認識し、その責任は教育委員会トップの私にあると重く受け止めています」と陳謝した。

 渡部教育部長は5日付の公文書には(1)議会事務局へ依頼すべき内容が書かれた(2)自民党、公明党の方々に事前説明した際に配布した-の2箇所が「不適切な記載」だったと認めた。「すでに事務処理適正化委員会を設置して管理職研修をはじめた」と再発防止の姿勢も明らかにした。

 しかし経過説明に納得しない議員が多く、質疑が続いた。
 3日に自民、4日に公明の両会派に説明した。そのほかは説明文を付けて報告書を配ったが、後日説明予定だったー。加藤涼子氏(生活者ネット)はこういうやり方に疑念を抑えられない。「特定会派に事前説明した後の5日に公文書を出して、私たちに報告書を配布している。審査に必要な資料の配布や情報提供に時間差があるのはやむを得ないと思ってはいるけれども、特定会派に事前説明したあと、われわれに机上配布したら、われわれの審査は不要と受け取られても仕方ない行為ではないか」と問いかけ、議員への公平公正な情報提供を求めた。

 藤岡智明氏(共産)はもっと手厳しい。「公平公正な情報提供ができているのかが(今回の事態で)見事に露呈した、と受け止めている。議会軽視は明らかだ」と述べた。
 森信一氏(立憲)も「説明に行った会派には鏡文なしで報告書を渡した。鏡文を付けたのは、(職員は)行きません、ということでないか。議会に失礼だし、自公さんにもえらい迷惑だ。執行部の大失態」と述べ、「議会と執行部の間の信頼関係を長い間かかって築いてきたのに、失うのは一瞬」と強い口調で話した。

 

自民、公明も「大迷惑」

 

 この問題の口火を切ったのは、実は自民党の稲垣裕二氏だった。10日の予算特別委員会開会直後に発言を求め、「自民党議員団として教育委員会に確認したいことがある」と述べた上で、「我が党の預かり知らないところで我が党の名前を出して、教育委員会が議会に書類を出しているとの噂を耳にしている。事実関係を確認しないと予算審議に入れない」と委員長の「取り計らい」を求めた。発端は自民議員の事実確認要求だった。

 事実が明らかになるにつれ、発言も踏み込んでくる。同党議員団幹事長の酒井豪一郎氏は「教育長名の文書で我が党を名指しし、『事前説明した』とある。しかし教育委員会が説明したいというので説明を受けた。ところがこの文書は、我が党が説明を求めたかのような疑念を持たせる内容だ。心外で強い憤りを感じている。配慮を欠いた失礼な文書だ」と怒りを隠さない。

 公明党も黙っていない。決算特別委員会委員長に決まっている大林光昭氏は「説明と言っても、一般質問の休憩中に教育委員会職員が5分程度説明しただけ」と明かし、教育委員会の報告書が過去の決算特別委員会に示されなかったことを取り上げたうえで、「丁寧な説明をするとの答弁を頂いたけれども、とてもそうとは思えない。猛省してほしい」と述べた。

 同党議員団幹事長の佐藤公男氏も「はなはだ迷惑を被っている」と教育長に向けて切り出した。「教育委員会は政治的中立を保ってきた」と思っていたのに、今回の文書は「グルになっていると疑われる誤解を与えている。トップが印を押したらアウトです。責任のとり方をご自分で判断して、明確にしてほしい」と迫った。

 

7人が決済していた

 

 質疑を重ねる中で「不適切な事務処理」の内実が見えてきた。
 中村駿(すぐる)氏(共産)の質疑、森輝雄氏(無所属)の資料請求で、説明文書は8月26日に起案され、担当主任、係長、課長、部長、教育長のほか、特命担当部長、教育部主幹も含め、計7人が押印したことが明らかになった。

 だれもおかしいと思わず、印を押したのだろうか。田村広行氏(無所属)は「この文書を見て私も違和感があった」と述べ、「だれもほとんど文面を見ないまま印を押したか、読んでも気づかなかったかのどちらか」と推測したうえで、「どういう経緯で文書が不適切と分かったのか」と質した。渡部教育部長は「企画部長から連絡を受けた」と答えた。教育委員会の外部の指摘で気が付いたとの回答だった。

 森氏(無所属)は「普段の議会対応や日程調整は、まとめて実施している。今回は、自公だけ日程調整した」と異例の対応を指摘。「印を押した7人が、だれもおかしいと気付かなかった。素通りしてしまった。これは教育長一人の問題ではなく、組織の問題、体質の問題でしょう。そこにみんなの不信感の根がある」と述べ、「その体質を変える手立てが打ち出せなければ、ペナルティーしかなくなりますよ」と危機感を強めた。

 

教育委員会と市長部局の温度差

 

 事前説明の有無と配布方法や時期のずれ。教育委員会は頭を低くしてお詫びの言葉を繰り返した。「心からお詫びする」「事務執行のあり方を改めて検討して、議会との信頼関係回復と再発防止に努めたい」「責任は教育委員会のトップである私にあります」…。「不適切な記載」のある文書に目を通しながら、決済の印を押した木村教育長は終始、沈痛な表情だった。

 質問の矢面に立った渡部教育部長、森谷修教育企画課長もお詫びと再発防止を繰り返した。しかし「机上配布だった会派や議員にも、事前説明する予定だった。過密スケジュールの中で日程調整が遅れた」との線は譲らなかった。

 丸山市長も何度か名指しで見解を求められた。「地方自治体は、議会と市長がともに選挙で市民に選ばれる二元代表制。お互いに緊張関係のなかでも信頼感を持ち、均衡と抑制の下で、協力しながら市と市民の発展のために進みたい」。丸山市長は持論を展開しながら、今回は「教育委員会は独立機関なので、今度の事案に対しては適切に対応するように申し入れた」と述べるにとどまった。

 池澤隆史副市長も「事務方トップ」として答弁。「これまで議会と信頼関係を作ってきた。今回の事案を受けて、内部統制を再点検し、信頼関係を取り戻したい」と述べた。

 

事前審査は「危険な言葉」

 

 今回の事態の源をたどると、教育委員会の「事前説明」にたどり着く。納田氏は「コンプライアンス(法令遵守)と議員平等の原則を守ってほしい」と話したあと、「議会公開の原則」(地方自治法第115条)に言及しながら、「事前説明というのは、危うい言葉です」と話した。この「事前説明」こそ、今回の問題の根っこに触れるキーワードなのかもしれない。

 「事前説明」という言葉は、地方自治法にも西東京市議会会議規則にも登場しない。議会関係者がよく参照する「地方議会運営事典」の項目にも取り上げられていない。念のため西東京市議会の各派が話し合ってまとめた議会運営の「調整済確認事項」にも目を通したが、見つけられなかった。

 多くの自治体で、形式や程度、形態の差はあっても、事前説明を実施しているとの記録に事欠かない。会派ごと、議員ごとのほか、全議員を対象にした「議案説明会」を開いている例も報告されている。議員側にとって議案内容の理解が深まり、より広汎な議論と効率的で的確な審査が可能になるのだろう。職員側も議案の骨組みが共有され、議員との意思疎通が滑らかだと、審議の進行が効率的に行えるのかもしれない。双方の必要が、事前説明の現実を積み重ねている。

 危惧の指摘も目立っている。「事前説明が事前審査になった」との事例が報告されたり、逆に「事前審査になるので答えられない」と首長が答弁拒否の根拠にした自治体の報告もあった。事前説明に法的根拠が見当たらないことが、多様なあり方を生み出しているのだろうか。

 

西東京方式が生まれたら…

 

 西東京市では定例会の前になると、会派ごと、無所属だと議員ごとに議案の事前説明が行われている。事前説明と事前審査の違いを自覚し、密室の審査にならない歯止めは、直接の法的根拠がなければ、良識と常識に依存するほかないのだろうか。

 他市の残念な例として挙がるのは、市執行部局の議案がほとんど議論がないまま成立していくシャンシャン議会だった。西東京市は議会の議論が活発だという近隣の職員の話をよく耳にする。今回の事例もその証左と言えるかもしれない。

 会派と議員活動に直接関わるだけに、取り上げ方も議論の仕方も千差万別。知恵を絞り先進事例を重ねて「西東京方式」が生まれたら、大きなニュースとして取り上げたい。
(北嶋孝)

 

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